プレゼント

膵臓がん克服後、新潟県産パパイヤの栽培に挑戦する熱血社長

患者さんインタビュー
協立不動産株式会社・ファーストクリエイト株式会社代表取締役社長 五十嵐 一芳さん

〝生かされている命〟に感謝しながら、ふるさとや社会の役に立ちたい

44歳のときに膵臓がんと判明。絶望感の中で出合った安保先生の言葉に「これだ!」と思いました

[いからし・かずよし]——1968年、新潟県生まれ。新潟市にある協立不動産株式会社、ファーストクリエイト株式会社代表取締役社長。まちづくり、農業・食品分野、ライフアシスタント(終活)のコンサルティングを行う。2017年から新潟県内で青パパイヤの試験栽培を開始。 新潟県の特産品として6次産業化をめざしている。

新潟県で生まれ育った私は、子どものころから健康そのものでした。小学生のときは野球に打ち込み、中学・高校時代は柔道部、大学時代はアメリカンフットボール部に所属。すべての部でキャプテンや主将を務めた、筋金入りの体育会系人間です。

そんな私が膵臓がんと診断されたのは、いまから約6年前、2012年10月のことでした。

がんを告知されたときの気持ちは、多くの患者さんがいわれるように「目の前が真っ暗」という表現しか見つかりません。自分の人生が終わるかもしれないという事実に、愕然とするしかありませんでした。

担当医の先生からステージ(病期)についての説明はありませんでしたが、膵臓の半分を切除し、胆のうと十二指腸を全摘する手術を受けました。

私は大学を卒業後、地元の建設会社に就職しました。営業職を務めていて接待も多く、不摂生な毎日を送っていたと思います。体力に自信があったので、自分が健康であると過信していたのでしょう。営業部長を務めていた44歳のときには、父親が創業した不動産会社を継ぐために建設会社を退社。同じ業種とはいえ、新しい環境や社長という重責を担う立場になったストレスも、がんの原因になったのかもしれません。

手術から2年後、定期検査を受けたさいに先生から「肝臓に1㌢大の影が複数見られる。転移がんかもしれない」といわれました。MRI(磁気共鳴断層撮影装置)やPET(ポジトロン断層撮影装置)検査を何度も受けましたが、医師の間でも結論は出ませんでした。4ヵ月にわたって何度も検査を受け、たらいまわし状態になっていることに業を煮やした私は、「もう自分で治します!」といって病院を後にしました。

とはいうものの、医療の素人である私にがんを治す手だてはありません。とにかく知識を増やそうと、がんに関する多くの本を読みました。その中で私が出した結論は、「がんは生活習慣病。間違った生活を送っていた自分の体ががんを作る。逆にいえば、それまでの自分の生き方や考え方を変えれば、がんを撃退できる」でした。

そんなときに、以前から施術を受けていた鍼灸師の渡邊真弓先生にアドバイスを求めると、「私の恩師である安保徹先生(当時は新潟大学教授)に会ってみない?」といわれたのです。

免疫学の世界的な権威として知られる安保先生はとても気さくな方で、「体は自分で治すもの。どうするかはあなたが決めなさい」と、笑顔で答えてくれました。

西洋医学の理論に基づく現代のがん治療は、あくまでも対症療法にすぎません。がんの根治をめざすのであれば、病院だけを頼るのではなく、自分自身で体や生き方を変えなくてはいけない――。安保先生に会うまでに抱いていた自分の考えが、先生の言葉によってストンと心の中に落ちたんです。がんを治すために生き方を変えよう――私の新しい人生が始まる瞬間でもありました。

パパイヤの栽培で日本人の健康寿命を延ばし、地方の活性化や若者の就労支援もかなえたい

現在、日本では毎年37万人の人ががんで亡くなっています。毎日約1000人もの人が、治療の甲斐なく亡くなっているのです。私は「がんを体験した自分だからこそできることがある」「生かされた命だからこそ、人や社会の役に立ちたい」という強い想いを持っています。

いまの日本で起こっている出来事の中で、世界のワースト1といえることを挙げるとしたら、私は以下の5つを挙げます。

①農薬の使用量
②食品添加物の使用許可数
③高齢者の寝たきりの期間
④電磁波の量
⑤若年層の自殺者数

日本人の平均寿命は世界一ですが、健康寿命(健康的な生活を送ることができる期間)との差が10年以上もある国はほかにありません。5つのワースト1があるかぎり、私たちはほんとうの健康や幸せを手に入れることはできないのです。

新潟県産パパイヤの成長力は驚異的。わずか3ヵ月で、身長180㌢の五十嵐さんを超えた!

この問題を解決するために私が挑戦しているのが、パパイヤの栽培です。「パパイヤを新潟県の名産にしたい!」と思うようになったのは、岡山県で進められている研究を知ったことがきっかけです。寒冷地である新潟県では本来、パパイヤの木は育ちません。ところが、苗を冷凍保存する特殊な栽培法によって、生命力と成長力が著しく強いパパイヤを育てることができるのです。

学術的な理論はうまく説明できませんが、マイナス60℃の環境でパパイヤを冷凍すると、苗はいったん死んでしまいます。ところがその後、パパイヤ独自の酵素によって、耐寒性を備えた新しいパパイヤの芽が土から出てくるのです。

パパイヤの〝生きる力〟を引き出す新しい栽培法に、私は大きく心を動かされました。もしかすると、生命力の強いパパイヤと、いまの自分を重ねているのかもしれません。

五十嵐さんが試験栽培に成功したパパイヤ

さらに驚いたのは、パパイヤが持つ食品としての優れた機能性です。パパイヤの抗酸化力はとても強く、がん患者さんに常飲者が多いノニジュースの63倍もあります。SOD(抗酸化酵素)の量は18倍、抗酸化成分として知られるポリフェノールの量は12倍にも上ります。さらにパパイヤには、3大栄養素(たんぱく質・脂質・糖質)を分解する酵素が含まれています。酵素の働きによって整腸作用が促され、免疫力の要である腸の強化にもつながるのです。

耐寒性を備えた新しいパパイヤは、成長力が強いのも特徴です。通常のパパイヤの6倍の速さでぐんぐん成長する姿は、生きる力に満ちあふれています。

成長力の強さは、パパイヤを栽培する農家の負担を減らすことにつながります。新潟県出身者はもちろん、県外の若者たち、さらには障害を持っている人たちから「農業はかっこいい。生涯の仕事にしたい」という声が上がり、パパイヤの栽培農家として成功できるよう、尽力していきます。

がん細胞が好む「低体温・低酸素・高血糖」の体質にならない食事や入浴法を毎日実践しています

「体調に問題はありません。まちづくりや食の安全に関する事業のアイデアがどんどん出てくるんです」

7本の木を使ったパパイヤの試験栽培は成功し、今年から本格的な「新潟県産パパイヤ」の栽培が始まります。

私は毎朝、ゲルソン療法の一環としてニンジンを中心にしたフレッシュジュースを飲みますが、試験栽培で収穫したパパイヤを入れるときもあります。朝食はほかに無農薬の玄米、納豆、卵をよくいただきます。抗酸化と整腸を意識しながら、食べすぎないことも心がけています。

抗酸化食品として注目しているのがアズキです。あんこやおしるこなど、甘く煮て食べる印象が強いアズキですが、皮には抗酸化力が強いポリフェノールがたっぷり含まれています。甘い味つけをせずに煮たアズキのうまみはクセになるほどです。

生き方を変えるきっかけをいただいた安保先生は、著書の中で「低体温・低酸素・高血糖の生活ががんを作る」と述べられています。私の場合は低体温を防ぐために、入浴はぬるめの湯に30分間入ります。

低酸素の問題は深呼吸をすることで解消しています。意識して深い呼吸を行ったり、毎週通っているヨガ教室で腹式呼吸を実践したりしています。

そして、何よりも大事にしているのが「気持ち」です。屁理屈と思われるかもしれませんが、病気は「病は気から」、元気は「気持ちが元に戻る」と書きます。病気になるのも元気になるのも気持ちしだい――私は心からそう思っています。

生きる気持ちを高めるには、実現したい目的を持つことです。私の場合は「安心・安全な食を通じて日本人の健康寿命を延ばすこと」。その実現のためにも、新潟県産パパイヤの栽培を絶対に成功させたいと思っています。