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イグ・ノーベル賞を受賞したアレルギー専門医が治療現場の最前線から提言します

気になる病気の新見解を医師が提言!

木俣肇クリニック院長 木俣 肇

[きまた・はじめ]——1977年、京都大学医学部卒業。米国カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校に留学し、アレルギーの研究に従事。ステロイドホルモンを使わない治療を行い、多くのアトピー性皮膚炎の患者を完治に導いている。日本アレルギー学会に所属(評議員)。2015年9月、イグ・ノーベル賞医学賞を受賞。

皮膚疾患の1つとして知られるアトピー性皮膚炎せいひふえん(以下、アトピーと略す)の治療費が世界で高騰しています。2021年に52億米ドルだったアトピーの世界市場は、2028年には138億米ドルになるという予測があるほどです。その主な理由は、治療薬が高価なうえ、対症療法的に使われている点です。結果的にアトピーは治癒ちゆせず、継続的な治療が必要になります。

アトピーはアレルギーが原因で発症する皮膚疾患ですが、医療の現場ではアレルギーの治癒より皮膚症状の改善を優先していると感じます。これではアレルギーが原因で起こるアトピーは治りません。

アトピーは単純ヘルペスとの合併が多い疾患でもあります。しかしながら、性器ヘルペスと口唇こうしんヘルペス以外の皮膚にも発症することが、ほとんど理解されていません。単純ヘルペスの症状は多様で、水疱すいほうや典型的な皮疹ひしんがはっきりと現れない場合もあります。また、アトピーの症状がなくても、アレルギー性鼻炎や食物アレルギーなどのアレルギーがあれば単純ヘルペスに罹患りかんしやすくなります。これは、アレルギーを悪化させる条件が単純ヘルペスウイルスの受容体を増加させるからです。逆にいえば、アレルギーを治療していれば単純ヘルペスに罹患しにくくなります。海外では、アレルギー疾患に単純ヘルペスが合併する状況が理解されてきています。しかし、日本では情報不足から、この問題に関する理解がほとんどないのが実情です。

私のクリニックには、1~2年以上も皮膚症状が改善しないという患者さんが全国から多数来られます。これまでじんましんやにきび、とびひ、アトピーの悪化などと診断されて治療を受けても改善しないというのです。そのような患者さんであっても、私のクリニックでは抗ヘルペス薬の内服で速やかに改善しています。重要なのは、その患者さんたちは今までどの医療機関でも単純ヘルペスと診断されていないことです。

私のクリニックに、外用剤を40年間にわたって塗布とふしてきたものの、改善が見られないアトピー患者さんが受診されました。その患者さんは、全身の単純ヘルペスと細菌培養で確認したMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)感染症を合併していました。そのような患者さんでも、抗アレルギー薬の持続投与と抗ヘルペス薬、MRSAに感受性のある抗生剤、抗菌性のカバーで速やかに改善が見られました。最近では、入浴によって起こる皮膚の細菌感染や乾燥の悪化が多数報告されているので、その患者さんには入浴を1週間に1度のシャワーのみとし、外用剤の塗布を中止することを伝えました。すると、その患者さんは強いリバウンドも起こらずに順調に改善し、1年後には抗アレルギー薬の内服を睡眠前の1回まで減量できてかゆみが治まるなど、皮膚の状態が著明に改善したのです。

この患者さんは、私のもとに来られる前までは薬の注射や外用剤などの費用がかさみ、高額の医療費に悩んでいましたが、私のもとに来られてからは以前の数分の1の治療費ですむようになり、なんといっても症状が著明に改善したのです。

単純ヘルペスは再発が多いことで知られます。私のクリニックでは、患者さんたちに単純ヘルペスへの理解を伝えているので、再び症状が現れた時はすぐに受診していただき、迅速に治療をしています。単純ヘルペスと気づかずに医療機関を転々とし、治療に何年もかけている患者さんが大勢いることはとても残念です。

単純ヘルペスへの理解が深まることは、患者さんにとって身体的にも経済的にも救われることであり、かつ、医療費の削減にもつながります。国を挙げて対策に乗り出すべきだと思います。