プレゼント

ガンもアレルギーも自己免疫疾患も慢性病もビタミンD不足が原因だった?

がん治療の進化を目撃せよ!

日本先進医療臨床研究会代表 小林 平大央

紫外線はほんとうに悪者か? サーファーに花粉症がいないカギを握るのはビタミンD

[こばやし・ひでお]——東京都八王子市出身。幼少期に膠原病を患い、闘病中に腎臓疾患や肺疾患など、さまざまな病態を併発。7回の長期入院と3度死にかけた闘病体験を持つ。現在は健常者とほぼ変わらない寛解状態を維持し、その長い闘病体験と多くの医師・治療家・研究者との交流から得た予防医療・先進医療・統合医療に関する知識と情報を日本中の医師と患者に提供する会を主催して活動中。一般社団法人日本先進医療臨床研究会代表理事(臨床研究事業)、一般社団法人ガン難病ゼロ協会代表理事(統合医療の普及推進)などの分野で活動中。

ビタミンDというと、カルシウムの吸収を促進して骨を作る重要な働きをするビタミンというイメージが強いと思います。しかし、昨今の世界中の研究で、ビタミンDは一般的なビタミンの枠を超えてさまざまな病気を予防・()()する生体内ホルモンの一種ではないかとさえいわれはじめているのです。

日本機能性医学研究所所長で医師の(さい)(とう)(りょう)(ぞう)先生の著書に『サーファーに花粉症はいない』(小学館)という本があります。「日光浴によって紫外線(UVB)をたくさん浴びている人はビタミンDの生産量が多く健康的であること」「花粉症などのアレルギー疾患になりにくいこと」を伝えたいという思いからつけられたタイトルでしょう。

実は、花粉症だけでなくガンの発症や進行、予防にもビタミンDの血液中濃度が大きく関係しているというデータが世界中で報告されているのです。医師で医学博士の(ふる)(かわ)(けん)()先生の著書『ビタミンDとケトン食 最強のがん治療』(光文社)の巻頭には、次のような記載があります。

「がんの治療には、ビタミンDの血中濃度を正常範囲の30 ng/ml以上にすることが重要です。また、がんをはじめ、糖尿病、認知症、インフルエンザ、アレルギー、骨粗しょう症、脳卒中、(しん)(きん)(こう)(そく)、高血圧、うつ病など、すべての現代病の予防のためにも、ビタミンDの血中濃度は30 ng/ml以上を維持することが求められます」

血液検査でビタミンD(25(OH)D)の血中濃度が20ナノ㌘/㍉㍑未満は欠乏症で、くる病など疾患の危険性があります。また、30ナノ㌘/㍉㍑未満はビタミンD不足というのが世界的に共通した認識です。しかし現在、ハーバード大学で行われた先進的な医学研究などでは、40ナノ㌘/㍉㍑以上がガン予防などの健康指標として重要ではないかとの議論が行われています。

なお、ビタミンは「体に必要な栄養素であり、かつ体内で生産できないために体外からの摂取を必要とするもの」と定義されています。そのため、厳密にいえば、ビタミンDはビタミンとはいえないかもしれません。

なぜなら、ビタミンDは赤道付近の国々や熱帯、亜熱帯の国では太陽光に含まれる紫外線を浴びるだけで体に必要な量が生産できてしまうからです。これは人類がもともとアフリカで誕生したことが理由だと思われます。ところが、日本を含む温帯地域では、秋以降の六ヵ月間は紫外線が不足するため、体内で必要な量のビタミンDを生産することが難しくなります。

一般的に「ビタミンD」と呼ばれている物質は、実は組成が非常によく似た違う物質の総称です。ビタミンDにはD2からD7までの6つの種類があります。なお、D1は発見された後に単一物質ではなく不純物であることが判明したために取り消されました。

6種類の中で人にとって必要なビタミンDはD2(エルゴカルシフェロール)とD3(コレカルシフェロール)の2つです。ビタミンD2は主にキノコなどの食材を通して人体に摂取されます。ビタミンD3は太陽光に含まれる紫外線によって皮膚の(かく)()細胞(ケラチノサイト)によって人体内で合成されます。

現在、ビタミンD2やD3はサプリメントとして摂取できますが、体内でより効果が高いのはビタミンD3であることが分かっています。サプリメントでビタミンDを摂取するのであれば、カプセルタイプのD3を購入することをおすすめします。

古川健司先生の著書『ビタミンDとケトン食 最強のがん治療』(左。光文社)と、斎藤糧三先生の著書『サーファーに花粉症はいない』(右。小学館)

ビタミンD2もD3もそのままの形では体内で働くことができません。ビタミンDは通常、体内に入るとまず肝臓で酵素によって25(OH)Dという形に変換されます。その後、25(OH)Dは血液中を巡り、主に(じん)(ぞう)で1,25(OH)2Dという活性型に変換されて初めて人体のさまざまな組織で働くことができるのです。

なお、ビタミンDの大部分は25(OH)Dに代謝されて血液中で長時間循環するため、栄養素としての生体内におけるビタミンDの過不足の指標はこの25(OH)Dで測ります。一方、1,25(OH)2Dはカルシウム代謝異常の指標として測定され、一般的に(こつ)()(しょう)(しょう)の治療などで利用されます。

いまや、ビタミンDはさまざまな病気に対して予防的に働くホルモンのような物質であることが分かってきています。具体的には、活性型ビタミンDである1,25(OH)2Dが人体のほぼすべての組織で遺伝子の発現をオン・オフするスイッチの役割を果たしていることが判明したのです。1,25(OH)2Dによって調整を受ける遺伝子は1000種類以上もあると考えられ、体内のカルシウムや免疫系を調整してガンの発生率を抑える働きはその代表格といえます。

実際、多くの(えき)(がく)研究で日光を浴びる時間が長いほど、一部のガンの発生が明らかに低いことが分かっています。日光浴とガン抑制の関連性を調べる研究が世界中で行われており、ビタミンDが強力な抗ガン作用を持つことはすでに疑いの余地がないほどになっているのです。

日光浴といえば、20世紀初頭に抗生物質が登場するまで“不治の病”といわれた結核の唯一の治療法でしたが、結核治療と日光浴、つまりビタミンDとの関係が百年以上の時を経て解明されつつあります。体内でさまざまな細菌や真菌、ウイルスなどを退治する“天然の抗生物質”とも呼ぶべき2つのたんぱく質である「カテリシジン」と「ディフェンシンβ(ベータ)2」の活性に1,25(OH)2Dが関わっていることが判明したのです。日光を浴びて皮膚のケラチノサイトで生産された1,25(OH)2Dは、体内で天然の抗生物質であるカテリシジンとディフェンシンβ2を活性化し、体内の結核菌を退治していたのです。