満たされた性によって得られる幸福感は、人生を豊かなものにしてくれます。この連載では、いつまでもゲンキで毎日を過ごせるよう、編集部が見つけた性に関するとっておきの情報をお届けします。
本連載では、これまでにさまざまなテーマで〝性〟に関する情報をお届けしてきました。最終回となる今回は、いくつになっても夫婦円満でスキンシップを続けられる秘訣について、田園調布学園大学名誉教授の荒木乳根子先生にお話を伺いました。
荒木先生は、日本性科学会セクシュアリティ研究会代表や日本老年行動科学会常任理事を務める性研究の第一人者。『中高年のための性生活の知恵』(アチーブメント出版)や『セックスレス時代の中高年「性」白書』(harunosora)など、多数の著書を執筆されています。
「年齢が上がるにつれて、性機能や性欲も変化していきます。閉経後の女性は性交痛が起こりやすくなり、中高年の男性はED(勃起障害)が起こりやすくなります」
とはいえ、加齢によって性交を楽しめなくなるわけではありません。むしろ、男女ともに満たされ、幸福感が得られる性交は、50代以降のほうが実現しやすいと、荒木先生は力説します。
「性欲には男性ホルモンとも呼ばれるアンドロゲンが深く関わっています。男性の場合、アンドロゲンの分泌が盛んな若い頃よりも、中高年層のほうが射精をコントロールできるので、ゆっくり性交を楽しめるといえます。女性の場合、もともとアンドロゲンの分泌量が少なく、性に関して心理的な影響を受けやすいので、『隣の部屋に子どもが寝ている』といった子育てにまつわる心配事から解放される年代になってからのほうが、リラックスして性交に集中できるのです」
ただし、忘れてはならないのが、満たされた性交はパートナーとの良好な関係があったうえで成り立つということです。そのために重要なのが、相手を思いやる気持ちだと、荒木先生は強調します。
「スキンシップを取り戻したいときは、段階を踏んで伝えることが大切です。一足飛びに性的なスキンシップを試みず、まずは笑顔で『おはよう』といい合うことから始めましょう。基本的なことですが、挨拶をきっかけに夫婦間の会話を増やせるといいですね」
荒木先生のおすすめは「アイメッセージ」という気持ちの伝え方。アメリカの心理学者が提唱した、相手も自分も大事にする自己主張の手法です。
「アイメッセージの方法はとても簡単です。『私』を主語に気持ちを伝えるだけ。ご主人が黙々と食事をしていたら『おいしいの? おいしくないの?』『あなたはいつも何もいわないのね』という代わりに『お味はどう?(私は)がんばって作ったから感想を聞かせてほしいな』と声をかけてみてください。責める雰囲気がないので、相手の思いやりを引き出しやすいのです」
相手の行為がうれしいときやありがたいときも「あうんの呼吸」だけではなかなか通じないもの。「~してくれて(私は)ありがたかったよ」とアイメッセージで伝えましょう。
「会話を通じて自然に思いを伝え合えるようになったら、パートナーの体に優しく触れてください。相手がどこに、どのような触れられ方をしたら心地よいかを考えましょう。肩や腰回りをマッサージしたり、ただ背中に手を添えてあげたりするだけでいいのです。大切なのは、相手を思いやること。時間をかけて育まれた愛情と信頼がベースにあれば、いくつになっても性交につながるスキンシップをともに楽しめるのです」
人生にハリと活力を与える性交や性的なスキンシップは、年齢を重ねても大切にしていきたいもの。パートナーをいたわりながら自分の気持ちをしっかり伝え、信頼関係を築きながら心身ともに満たされた毎日を過ごしましょう。