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第21回 ゲーム・スマホがやめられない!ADHD脳タイプと「依存」の話

ADHD女子・雨野千晴のうっかりさんでもちゃっかり生きる

雨野 千晴

ゲーム・スマホがやめられない!ADHD脳タイプと「依存」の話

[あめの・ちはる]——北海道生まれ。北海道教育大学札幌校卒業。公立小学校教員として10年間勤務。2017年にADHD(不注意優勢型)と診断。現在はADHD専門ライフコーチ、NPO法人代表理事、福祉事業所スタッフなど"多動な"複業活動を展開中。

やめたいのにやめられない——。そんなことはありますか?

先日、小学5年生の次男と大げんかをしました。原因は……ゲーム!これまでにも「遊ぶ時間を決める」「宿題をやった後」などいろいろな約束を決めては守ることができずの繰り返しだったのですが、この日もこっそりと夜中にゲームをしていたことが発覚。私がプッツンと切れてしまったのです。なんで約束を守れないの!と怒り狂うも「なんでと聞かれても、分かってたらやってないってコラムを自分で書いてたっけな……」と記憶が走馬灯のようによみがえりました(笑)。

彼が悪いのではないことは重々分かっています。なぜなら、自分自身も「スマホがやめられない!」「漫画を読むのが止まらない!」「ついついベッドで夜更かしして漫画を読んでしまう……」みたいなことがしょっちゅうだからです。私も次男もADHD脳タイプ。ドーパミン不足と衝動性の高さから、以下のような依存しやすい脳の特性があります。

●ゲーム・SNS・甘いお菓子など、すぐに満足感が得られる行動に強くかれる

●衝動のコントロールが難しいため、「やめよう」としてもやめにくい

だから、意思が弱いとか、自分に甘いとかいう問題ではないんですよね。そこを論争にするのは不毛なことですし、そんなふうに責めても「自分はダメなんだ……」という自己肯定感の低さにつながってしまうだけ。

一方で、睡眠時間を削ってまでのめり込み、生活習慣が崩れてしまうのは本人にとってもよい状態とはいえません。ゲームを禁止にする? そういう選択肢もあるけれど……。

例えば、ゲームより外遊びをするほうが子どもにとっていいことなのか、あなたはどう思いますか?私は、それもそれで、こちら側の勝手な価値観・思い込みだよなぁと思うのです。だから、ゲームもスマホも健康的な生活習慣の中で、楽しく使えるようにできたらそれがいちばんいいんじゃないかなと思っています。

では! 具体的にどうすればよいか? 本人とも相談して、ADHD脳タイプに合った新たな作戦を練りました。単純なようで効果的!名付けて「見えない・使えない」大作戦。物理的に見えなくする、手を届かなくする工夫をしよう、ということになったんです。

■次男のゲーム:決めた時刻になったら「ゲームをしまっておく用のカバン」に入れる→私が預かり、自分の布団の中に入れる

■私のスマホ:最近はまっていたショート動画が流れてくるSNSアプリをスマホから削除!

最近はスマホを入れて、時刻を決めるとロックされるケースも販売されています。それだけ「スマホをやめたくてもやめられない」という方が多いということですよね。

さて、新たな作戦を発動して2週間。こっそり夜更かしをすることがなくなった次男は寝坊もなくなり、私もスマホを見る時間がずいぶん減りました。今のところお互いに順調です!

余談ですが、こういった工夫を粛々とすすめればよいだけなのに、なぜ大げんかになったのか? それは結局、彼の問題ではなく私自身の問題なんだよなぁと感じています。実際に起こった出来事は単に「彼にとっては守るのが難しいルールを決めていた→ゲームがやめられない」ということ。それを「何度も子どもにウソをつかれた→裏切られた」ととらえているから勝手に悲しくなって、その結果怒ってしまう。怒りの感情の奥には悲しみや恐れがあることって、けっこうあるんですよね。

カーッと頭に血が上った時は、まずは深呼吸をして、「私はなんに対して怒っているんだろう?」「この怒りの奥にはなにがあるんだろう?」って考えてみるのが大事だなぁ、と反省した今回の騒動でした。

イラスト/雨野千晴