プレゼント

患者さんの自然治癒力を高める「微弱電流」の魅力を広めています

ニッポンを元気に!情熱人列伝

一般社団法人 微弱電流療法研究会代表理事 作尾 大介さん

極真きょくしん会館の空手選手として名をせた経歴を持つ作尾さくお大介だいすけさん。現在は治療家として完全自費診療の治療院を経営しています。コロナ以降、体調不良に悩む人が増えたといわれる中、作尾さんが注目しているのが「微弱電流」の力。研究会を立ち上げた背景と将来について伺いました。

空手の指導をしながら治療家を志し、整復師と鍼灸師の資格を取得

[さくお・だいすけ]——兵庫県神戸市生まれ。姫路獨協大学経済情報学部卒業。治療家の道を志し、関西健康科学専門学校柔道整復師科と神戸東洋医療専門学校鍼灸科を卒業。2013年に兵庫県小野市で、こころ鍼灸整骨院を開業。保険診療に頼らない整骨院運営に成功し、整骨院向けのコンサルティングも展開。2019年、一般社団法人微弱電流療法研究会を設立し、微弱電流を使った治療の普及に努めている

今月の情熱人は、兵庫県小野おの市にある、こころ鍼灸しんきゅう整骨院の院長を務める作尾さくお大介だいすけさん。柔道整復師と鍼灸師の国家資格を持つ作尾さんは「保険診療に頼らない完全自費診療の治療院」を立ち上げて、わずか1年後に黒字化に成功。その経営手腕が治療家の間で注目され、現在は治療院経営のコンサルタントとしても活動しています。

「私は兵庫県神戸市で生まれました。子どもの頃は線が細く、4歳年上の兄とケンカしてよく泣かされていましたね。『一度でいいから兄に勝ちたい!』と思って小学生の時に始めたのが空手です。私は好きになったらトコトン追求する性格です。空手を覚えるにつれて、『どうせやるなら、いちばん有名な道場に入門しよう!』と、17歳の時に極真きょくしん会館中村なかむら道場の門をたたきました」

作尾さんが入門した極真会館は、空手を知らない人でも耳にしたことがある名門の流派。中でも中村道場は稽古けいこの厳しさで知られています。

「中村道場には28歳まで在籍しました。2004年には大阪選手権で優勝し、社会人となった2008年には、地方大会で優勝することもできました」

以後は極真会館の指導員として、10年ほど全国の道場を巡っていた作尾さん。有段者とはいえ、稽古中に素手素足による殴り合いや蹴り合いをすることから、ケガの絶えない日々だったと振り返ります。

「当時はケガの治療をするために、病院や整骨院によく足を運んでいました。治療を受けながらいつも感じていたのが、湿布しっぷや温熱器を使うよりも、治療家の先生方から施術を受けたほうがケガの治りが早いことです。先生方の施術に感心しながら、自分も治療家になりたいと思うようになりました」

大学卒業後、柔道整復師の資格取得を目指して専門学校に入学した作尾さん。アルバイトを3つかけ持ちして入学金を用意し、授業料は奨学金を利用したそうです。

作尾さんの勉強熱はとどまりません。治療家のみならず、医師のもとでも学びたいと思った作尾さんは、兵庫県内の医療機関で働き始め、クリニックの医師から、1人ひとりの患者さんと向き合う姿勢を学んだそうです。

「医療機関には4年ほど所属して、リハビリテーションなどを担当しました。そのほか、整骨院や鍼灸院では触れることが難しい画像診断を学ぶ機会にも恵まれました。骨折や脱臼だっきゅうのみならず、内臓の状態や腫瘍しゅようの有無も写し出す画像診断の経験は、多くの学びとなりました」

その一方で、作尾さんは「画像診断は必ずしも患者さんの痛みを明確に写し出すとは限らない」ことを知ったといいます。

「慢性的な腰痛や関節痛を訴える患者さんのレントゲン写真を撮っても、画像に異常が見られないことが少なくなかったのです。検査で異常が見つからないまま、診察では病名がつけられていました。不思議に思って周囲に聞いてみると、『画像に異常が見つからなくても、病名をつけないと保険診療として治療ができない』という事情のあることが分かったのです」

と話す作尾さん。さらに、柔道整復師という資格で行える治療範囲にも言及します。

「柔道整復師が保険診療を適用して施術できるのはケガの治療だけです。治療院によっては、ケガが原因でない肩こりや腰痛を治療しているケースも見受けられます。治療院の設立を決意したのは、妻が2人目の子どもを妊娠していた時でした。生まれてくる子どもに胸を張って仕事をしたいと思ったのと、保険診療の制約に縛られずに治療ができる、完全自費診療の治療院を設立したいと思いました」

作尾さんが施術に活用している微弱電流治療器「NEUBOX(ニューボックス)」

保険診療ではない整骨院の開業を志し専門知識と手技を積む

完全自費診療を行う整骨院の設立にあたり、治療家としての経験を積みたいと思った作尾さん。勤務していた医療機関と整骨院の休診日には、知人のつてで紹介された患者さんをボランティアで施術し、手技の研鑚けんさんを積んだといいます。

「32歳で開業するまでの10年間は、『もっと施術がうまくなりたい!』という思いを胸に、勤務のかたわらボランティアの施術や往診、勉強会への参加に明け暮れました。折りたたみベッドを担いで患者さんの往診に伺い、具体的な悩みをしっかり受け止めて施術方針を決めていました。『痛い』という感情はとても主観的です。そこで私は『痛みが治まったらなにをしたいですか』と尋ねるようにしました。『階段を上れるようになりたい』『愛犬と散歩に行きたい』『街まで買い物に行きたい』『助けを借りずにトイレに行きたい』と、その答えはさまざまですが、具体的な望みが見えると、治療方針を定めやすくなるんです」

さらに作尾さんは、往診で研鑚を積むうちに、自費診療の必要性を改めて実感するようになったといいます。

「動かなくなった自転車を詳しく調べてみると、チェーンがサビていたり、ハンドルやペダル、タイヤが曲がっていたりと、さまざまな不具合が見つかるものです。私たちの体も同様で、ひざの痛みを訴える患者さんに、ひざ以外の施術をすると、体がらくになることがあります。保険診療の画像診断で変形性ひざ関節症と診断されたら、患者さんが受けられる治療はその範囲に限られてしまいます。病名の制約を受けることなく、患者さんにとって最適といえる広範囲の施術ができるのは自費診療しかないと確信しました」

患部に微弱電流を流す医療機器の活用で治療効果が格段に向上

作尾さんが、こころ鍼灸整骨院を開業したのは、32歳の時だったといいます。開業当日は、施術の修業に協力してくれた多くの患者さんが顔を見せてくれたという作尾さん。完全自費診療を掲げる治療院の中では、壁に貼られた患者さんからの感謝の寄せ書きとともに、小さな医療機器が存在感を放っています。作尾さんが「治療効果を格段に高める」と大きな期待を寄せている、微弱電流を発する医療機器です。

「正式名称を『NEUBOXニューボツクス』というチェコ製の医療機器です。2本の電極を体に当てて体内に微弱電流を発生させることで自然治癒ちゆ力を高める効果が期待できます」

作尾さんいわく、ロシアやドイツ、東欧では、負傷兵の早期回復などの軍事用に研究された技術が医療に応用されるケースがあるとのこと。NEUBOXは、1980年代から研究が続けられているそうです。

作尾さんが代表理事を務める一般社団法人微弱電流療法研究会では、微弱電流の健康増進作用に関心が高い会員による症例報告が重ねられている

「私たち人間の体には微弱な電流が流れています。この電流は代謝や神経伝達といった生体反応には欠かせないものですが、老化や病気によって乱れてしまいます。NEUBOXを使って電流を整えると自然治癒力の向上につながると考えています」

なかなか難しそうな理論ですが、作尾さんいわく、微弱電流は話題となっているミトコンドリアとの関係も指摘されるようになっているのだとか。

「私たち人間が活動する際にはエネルギーが必要です。エネルギーは『エネルギーを作る工場』といわれる細胞内のミトコンドリアで作られます。微弱電流を流すことでミトコンドリアのエネルギー合成作用が高まるという研究もあります。生体反応を高める電流は強ければよいわけではなく、『微弱』が最も効果的であると分かっています」

実際に作尾さんは、NEUBOXを活用した施術を治療に取り入れて、大きな手応えを感じているといいます。

「治療家が施術に必要な手技を覚えるには最低でも数年はかかります。その間、患者さんたちは痛みに悩まされつづけています。手技の習得に年月がかかる一方、医療機器の分野は進歩が目覚ましく、新しい技術が次々と開発されています。つまり、優れた医療機器を導入することで施術のレベルをカバーし、治療効果を高めることができるのです。かつて往診をしていた時にNEUBOXがあればどんなによかったか……と思います」

作尾さんいわく、NEUBOXの魅力は、使い方が簡便で再現性が高いこと。実際に作尾さんが施術しているアスリートたちは、自宅でみずからNEUBOXを使ってセルフケアをすることもあるそうです。

「微弱電流の治療効果に自信を持っている私は、保険診療をしている治療院にNEUBOXの導入を提案し、自由診療へと移行するきっかけにしていただいています。NEUBOXは患者さんのみならず、治療家のあり方も変える可能性を秘めた医療機器だと思います」

2019年に作尾さんは、NEUBOXを用いた微弱電流の治療法を普及させるために、一般社団法人微弱電流療法研究会を設立。現在は60余名の会員が参加し、NEUBOXを使った症例報告を発表しています。

「治療家の使命は、患者さんを心身ともに元気にすることです。優れた医療機器がある以上、使わない手はありません。経験に基づく手技と最新技術の医療機器を組み合わせて、1人でも多くの患者さんの力になりたいと思います」