西焼津クリニック院長 林 隆博
30年以上にわたる腸内細菌の研究からアレルギー性疾患や精神科の治療に活用
私は東京大学医学部附属病院や静岡県藤枝市立志太総合病院で小児科医として勤務した後、1990年に静岡県焼津市でクリニックを開院しました。開院から25年間ほどは小児科とアレルギー科・皮膚科を治療領域の中心とし、青少年の不登校の問題やアトピー性皮膚炎を中心としたアレルギー疾患の治療に取り組みました。
25年以上にわたってアトピー性皮膚炎の治療に取り組んだ私のもとには、静岡県内を中心に全国から患者さんが来院されました。患者さんやご家族のためにもアトピー性皮膚炎の撲滅を志した私は、1990年代から「乳酸菌」の存在に注目し、研究を重ねてきました。今でこそ「アレルギー疾患と腸内環境の関係」については多くの医師や研究者が指摘していますが、30年以上前からこのテーマに着目し、医療の現場で実践してきたのは、おそらく私が世界で最初ではないでしょうか。その後、乳酸菌のアトピー性皮膚炎に対する予防効果と治療向上効果を確認した私は、ブレーベ菌を中心とした乳酸菌を用いた保健食品で特許を取得しました。
アレルギーの領域で一定の結果を出した私は、数年前から診療領域の中心を精神科とし、日々、患者さんたちと向き合っています。近年では脳や精神領域と腸内環境の関係が世界中の研究から報告されるようになり、医療の現場でも注目を集めています。例えば、腸内環境の分析結果によって適切な菌が含まれる「糞便」を腸内に移植する治療法が登場するなど、臨床現場における腸内環境の研究は日々、進化しています。
『365カレッジ』の動画で触れているように、私たちの腸内環境は指紋と同様、一人として同じものはないと考えられています。私たちの腸内環境は、食事や精神衛生といった一人ひとりの生活環境が如実に現れ、日々刻々と変化しています。腸内環境はまさに、その人そのものを象徴する場所といえるでしょう。
最近はメディアにおいて「多様性」というキーワードが取り上げられるようになりました。多様性はお互いの存在を尊重し合うことで成立し、意味を持つと考えています。腸内環境も同様です。良好な腸内環境を保つには善玉菌の存在が不可欠ですが、善玉菌だけではほんとうの健康効果は得られません。その人にとって最も有益な腸内細菌群から成る多様な環境こそが、健康効果を高めるのです。
このたび、ユーチューバーとして発表する『365college』の動画では、3本にわたって腸内環境に関する動画を配信します。どの動画も分かりやすく解説していますので、皆様の健康管理にお役立ていただければと思います。