トラタニ株式会社代表取締役社長 虎谷 生央さん
低反発や高反発など、独自の機能を持った新しい寝具が登場する中、凹凸という立体構造を取り入れた『トラタニ好循環マットレス・枕』の開発で注目を集めているのが、トラタニ株式会社代表の虎谷生央さん。世界唯一といえる立体構造の開発秘話と有用性について取材しました。
ショーツの開発で成功後、慢性的な筋肉痛を患い睡眠障害にも苦しむ

中高年になると、就寝中の無呼吸やいびきに代表される呼吸力の衰えは避けられません。特に、寝具に横たわって寝入ってしまうと、意識して呼吸ができないため、浅い呼吸や無呼吸の状態に気づきにくくなります。その結果、酸素不足によって全身の不調を招く悪循環に陥りやすくなります。「睡眠から健康を取り戻すのは、体圧を取り除く立体構造の寝具で実現できます」と語るのが、トラタニ株式会社代表取締役社長の虎谷生央さん。凹凸という立体構造を取り入れた『トラタニ好循環マットレス・枕(以下、好循環寝具と略す)』の開発秘話を伺いました。
「私は20歳の時から慢性胃炎で、何度も胃潰瘍を経験していました。病院で処方された制酸薬などを服用しても、あまり効果を感じられませんでした。将来は胃がんになるのではないかと、漠然とした不安を抱えていました」
慢性胃炎という持病を抱えながら、実家の被服・縫製業を引き継いだ虎谷さん。仕事に邁進しながらも、バブル崩壊とともに生産工場が日本から韓国、中国、ベトナムへと移り変わり、売り上げに陰りが見えてきたそうです。
「安価に衣服を大量生産するためには、人件費が安い国に生産工場を移さざるを得なかったんです。年々、売り上げが下がっていく状況を見て、2001年に廃業を決断しました」
廃業した時に「独自技術を持たなければ業界では勝てない」と悟った虎谷さん。2年の構想・開発を経て、立体裁断という特許を取得したといいます。
「特許を取得した2003年から、立体構造のショーツを作って細々とインターネットで販売を始めたんです。当時はネット販売している会社はほとんどなかったため、『ずり上がらないショーツ』として評判になりました。作っても作っても飛ぶように売れ、累計で500万枚以上も販売しました」
廃業を乗り越えてショーツの開発で成功した後、2005年に再度、起業をした虎谷さん。軌道に乗ってさらなる事業展開を進める中で、体調に異変が現れたそうです。
「仕事をがんばりすぎたのか、血尿が頻繁に出るようになったんです。治療薬を服用しても、血尿はまったく改善しませんでした。数年間服用したものの、効果がないと思ったので、自己判断で薬を飲むのをやめてしまいました」
血尿の不安を抱えながらも、ショーツを毎日大量に作っていた虎谷さんですが、2018年頃から慢性的な筋肉痛を覚えるようになったそうです。筋肉痛は仕事だけでなく、睡眠にも悪影響を及ぼしたといいます。
「ショーツを作る時には、ハサミやミシンなど細かい手作業が多くあります。そのため、痛みによって繊細な作業がしにくくなり、ストレスを覚えながら仕事をしなければいけませんでした。さらに、筋肉痛は夜中も続き、布団で横になっても首や背中が痛くて眠れなくなってしまったんです」
睡眠障害による寝不足で、仕事の集中力が下がり、ストレスでより眠れなくなるという悪循環に陥っていたと当時を振り返る虎谷さん。この頃から、マットレスや枕を何種類も購入し、自分に合う寝具を探し求めるようになったそうです。
「マットレスと枕は、現在までにそれぞれ10種類以上買いましたが、筋肉痛や睡眠障害を解消してくれる寝具に出合うことはできませんでした。評判のいい素材や高級マットレスを調べては買って試すという〝寝具難民〟だったんです」
体圧分散型の寝具は浅い呼吸や無呼吸を助長していると推測
睡眠障害が続いて免疫力が低下した虎谷さんは、2018年には帯状疱疹を患いました。その翌年からは、心房細動が起こるようになり、体の不具合が顕著になったと振り返ります。
「私が患った心房細動とは、心房と呼ばれる心臓内の部屋が小刻みに震えてけいれんし、正常に機能しなくなる心臓の病気です。心房細動を患ってからは、動悸や息切れ、めまいが起こるようになりました。降圧剤を服用したものの、症状はいっこうによくなりませんでした」
心房細動が悪化すると、脳梗塞や心不全を招きやすくなるため、2020年にカテーテル手術を2回受けた虎谷さん。手術後も続いていた筋肉痛を和らげるために訪れた整体院で、睡眠と呼吸の大切さを教えてもらったといいます。そして、眠れない理由の1つが「寝具の体圧分散によって起こる浅い呼吸、交感神経の刺激・過敏」であることにたどり着いたそうです。
「昭和時代に主流の寝具だった綿布団は、臀部や背中は局所的に体圧が高いものの、肩や腰周辺は綿の特性上、押し返す力が働かないので無圧に近く、呼吸を浅くする力は限定的です。一方、ウレタンなど反発力がある寝具は、体圧が少なめの首や肩や腰近辺でも、ウレタンの押し返す力が働きます。呼吸筋や骨格を拘束するように圧迫するため、呼吸を極端に弱めてしまうのです」
特に、体圧分散型寝具は、その傾向が顕著で「浅い呼吸または無呼吸」による不健康の悪循環を助長していると語る虎谷さん。呼吸力が衰える中高年は寝具の影響を受けやすく、さらに高齢になるとより浅い呼吸や無呼吸になりやすいそうです。
「呼吸は自律神経(意思とは無関係に内臓や血管の働きを支配する神経)をコントロールできる唯一の方法です。交感神経が優位になると浅く速い胸式呼吸になり、副交感神経が優位になると深くゆっくりとした腹式呼吸になります。腹式呼吸は副交感神経が刺激され、心身の緊張が取れてリラックスできます。しかし、不眠や体調不良に悩んでいる人は、浅い胸式呼吸をしている共通点があるといわれています」
除圧に優れた『好循環寝具』は睡眠時にゆっくりかつ深い呼吸ができると反響
胸式呼吸では、呼吸補助筋という首や肩にある筋肉群を使って、肩を上下させながら呼吸します。呼吸補助筋を使うと首や肩に凝りが生じ、交感神経が刺激されて、緊張状態が継続します。その結果、自律神経が乱れて脳が興奮した状態になり、不眠や息苦しさが起こりやすくなります。
「浅い呼吸である胸式呼吸が続くと体をしっかり休めることができず、深刻な睡眠不足に陥ります。浅い呼吸がもたらす影響は大きく、睡眠不足以外に慢性疲労や集中力の低下、体の冷え、免疫力の低下、心の不調などにも及んでしまいます。健康長寿をかなえるには、睡眠中の深い呼吸が大切なんです」
虎谷さんは、体にかかる圧力を取り除く方法として、長年培った縫製の技術である型紙の立体構造が最適と考えました。着想から5年の開発期間を経て完成したのが『好循環寝具』です。
「好循環寝具は、睡眠時に深い呼吸ができるよう鎖骨と胸骨の引き上げを促進する設計で、上部胸郭を広げます。肋骨の動きを妨げないよう、さらに脊柱が自然な曲線になる構造です。呼吸を弱める部位を低く、促進する部位を高くして、自然に呼吸が深まる立体構造になっています。この立体構造は独自性が認められ、特許を取得しました」
みずから好循環寝具を使用してみると、朝まで熟睡できる日が増えたという虎谷さん。薬を一切飲まなくても心房細動が起こらなくなり、血圧も安定するようになったといいます。さらに、常に不快感のあった胃の不調や血尿、筋肉痛にも悩まなくなったことで、「深い呼吸の睡眠こそ最高の健康法」とあらためて思ったそうです。
「ゆっくりした深い呼吸を睡眠中に行うことは、なによりの万能薬だと思っています。私が悩んでいた病気は、睡眠中の深い呼吸のおかげで改善しました」
実際に好循環寝具を使用したお客さんたちからは、「睡眠薬の服用量を減らしても眠れるようになった」「喘息のセキが軽くなって朝まで熟睡できるようになった」「降圧薬を飲まなくても血圧が下がった」「いびきの音が小さくなった」「肩こりが改善した」など、多くの喜びの声が届いているという虎谷さん。枕によって呼吸の状態は大きく変わるため、枕から試すことをおすすめしているそうです。
「凹凸のある立体構造の好循環寝具は、使いはじめてから数日間は寝つきにくいかもしれません。でも、数日たつと凹凸に体がフィットして体圧が取り除かれるので、自然と深い呼吸になって熟睡できるようになります。これまでどんな寝具を試しても健康効果を感じられないという寝具難民の方々に、ぜひ試していただきたいと思います」
『トラタニ好循環マットレス・枕』にご興味がある方は下のリンクより、お問い合わせ先は☎076-285-1664(平日9:00〜17:00) です。