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血流の改善こそ認知症を防ぐ最強対策! 私も実践する〝耳もみ〟で脳の若さを維持!

認知症
ひろかわクリニック院長 広川 慶裕さん

認知症は完治させるのが難しい病気ですが、認知症の前段階であるMCIの状態であれば、脳の機能を正常に戻せる可能性があります。MCIを改善に導くポイントは、「血流をよくすること」。今回は、脳の血流を改善する生活習慣のほか、取り組みやすい「耳もみ」もご紹介します。

生活習慣病の終着駅である認知症は血流の悪化で発症・進行し前段階での治療が大切

[ひろかわ・よしひろ]——1955年、大阪府生まれ。1984年、京都大学医学部卒業。麻酔科専門医・指導医として実績を積む傍ら、精神病理学に興味を持ち精神科に転科。以降、認知症やうつ病、統合失調症などの治療に専念。働く人のメンタルヘルスにも尽力。2014年、認知症予防を専門とした、ひろかわクリニックを開院。脳とこころの健康相談室(品川駅前MCI相談室)開室。精神保健指定医、日本精神神経学会精神科専門医・指導医、日本医師会認定産業医。

私は、認知症を「生活習慣病の終着駅」だと考えています。医学的に認知症は精神疾患の1つに分類されています。認知症を治療する診療科は、精神科や神経内科、心療内科です。しかし、認知症はほかの精神疾患とまったく異なる病気で、本質的には生活習慣病と考えられます。

糖尿病や肥満、メタボリックシンドロームといった生活習慣病の多くは、動脈硬化(血管の老化)が起こって脳梗塞や心筋梗塞などのリスクが高まります。また、生活習慣病の患者さんは、健康な人よりも認知症の発症リスクも2倍に高まるといわれています。

認知症全体の2割を占める「脳血管性認知症」は、脳内の血管の動脈硬化が原因で起こります。動脈硬化によって血流が悪化すると、脳の神経細胞が栄養や酸素を受け取りにくくなり、老廃物の排出も困難になります。その結果、脳の細胞が衰えて認知症が発症するのです。

認知症の6割を占める「アルツハイマー型認知症」も、脳内の血管で動脈硬化が起こって発症すると考えられます。アルツハイマー病は、アミロイドβという老廃物が脳にたまり、神経細胞が破壊されていく認知症です。健康な脳であれば、神経細胞が自力でアミロイドβを無毒化できますが、血流が悪化して脳細胞が衰えると、無毒化する働きが弱くなります。アミロイドβがしだいに蓄積するようになり、アルツハイマー病が発症してしまうのです。

残念ながら、認知症の多くは症状の改善が見られても、治すことができない病気です。治療で進行を遅らせたり、症状を抑えたりすることはできますが、再び健康な脳を取り戻すことは、現代の医学では不可能です。

認知症は予防が大切です。具体的には、認知症の前段階である「軽度認知障害(MCI)」や、さらに前段階の「前・軽度認知障害」の段階で進行を防ぐことが大切です。

正常と認知症の中間段階(グレーゾーン)にあるMCIは、物忘れの症状がやや見られるものの、日常生活には支障がない状態です。MCIよりも症状が軽い前・軽度認知障害の段階は、病的とはいえないものの、MCIの症状が見られる状態です。MCIや前・軽度認知障害であれば、適切な治療や訓練によって、正常な認知機能を取り戻すことが十分可能です。

私のクリニックでは、MCIや前・軽度認知障害の患者さんに対して、食事療法、脳活トレーニング、運動トレーニング、サプリメント療法、薬物療法、家族療法(ご家族によるサポート)を組み合わせて治療しています。この中で患者さんが取り組みやすいのは、食事療法と運動トレーニングでしょう。

脳を刺激する方法は音読が最も効果的で耳をもむだけでも脳の血流が改善する

認知症を防ぐ「耳もみ」のやり方

食事は和食を中心に、高たんぱく・高必須脂肪酸・糖質制限を意識しながら、バランスのよい食事を心がけてください。必須脂肪酸として、DHAやEPAなどの魚油は、十分な量を長期的に摂取するようにしましょう。

運動トレーニングは、長期的に取り組める内容を実践しましょう。スポーツジムに通うのも悪くはありませんが、エレベーターではなく階段を使ったり、なるべく歩いて移動したりするなど、ふだんの生活の中でできる運動をしてほしいと思います。

脳のトレーニングは、脳を刺激することができればかまいません。いちばんいいのは、新聞や本の音読です。音読は「見る・判断する・声に出す・耳に入って正確さを確認する」という4つの刺激を同時に行えるため、脳の活性化につながります。

認知症予防のために実践してほしい習慣に「耳もみ」があります。両耳を持って、回したり押したりしながら、耳全体をほぐすだけです。耳たぶの柔らかい部分だけでなく、耳の穴の手前にある膨らみ「耳珠」を含めて全体をもみましょう。

耳もみは、脳の血流を改善するため、認知症を防ぐ習慣として効果的です。中医学の点からも、自律神経(意思とは無関係に内臓や血管の働きを支配する神経)のバランスを整えて頭痛を和らげる「神門」などの複数のツボが集中する耳への刺激は、日常的な体調の維持や改善にもつながるでしょう。

私自身も、朝起きたときや仕事の合間、移動時のすきま時間、寝る前に、耳もみを行っています。認知症を防ぐために、耳もみを生活の中に取り入れてみてはいかがでしょうか。

***認トレ教室 開催案内***

広川先生が監修した独自のプログラムを、みんな笑顔で取り組める楽しい認知症予防教室です。『運動トレーニング』『知的トレーニング』を組み合わせて、脳の神経細胞の活性化を図る構成になっています。

【ひろかわクリニック教室】
京都府宇治市宇治妙楽24-1ミツダビル4F
ひろかわクリニック リハビリ室
毎週水・金曜日と第1・3土曜日/10:00~12:00
参加申込:不要
お問合せ:info@j-mci.com

【品川駅前教室】
東京都港区高輪3-25-27アベニュー高輪603(品川駅前MCI相談室内)
第2・4月曜日/13:30~15:00
参加申込:要(認トレ®協会 http://nin-tore.jp/
お問合せ:info@nin-tore.jp