超高齢社会を迎え、深刻な問題となりつつある認知症。近年では、認知症の予防に関してさまざまな方法が考案されています。今回は、日本人にとって身近な料理の一つであるみそ汁で認知症を予防する方法をご紹介します。
減塩は生活習慣病の予防に必須で近年の研究では認知症にもかかわっていると判明
超高齢社会を迎えた日本で、急務となっているのが認知症対策です。認知症とは、正常に発達した認知機能になんらかの障害が起こり、記憶力や判断力、思考力などが低下し、日常生活に支障をきたしてしまう症状のことです。認知症患者さんで多いのは、脳の神経細胞に異常なたんぱく質(アミロイドβ)がたまって起こるアルツハイマー型認知症です。ほかにも、脳梗塞などが原因で起こる血管性認知症もあります。
認知症に関する研究が進むにつれて、新しい予防法や対策が出てきています。食生活の改善もその1つです。そこで私は、研究結果を踏まえ、認知症の発症リスクを下げるための、減塩みそ汁レシピを考案しました。
減塩は生活習慣病の予防に欠かせない基本で、認知症予防にも必須です。塩分のとりすぎは高血圧を招き、動脈硬化(血管の老化)を進行させます。その結果、血管性認知症の原因となる脳梗塞や脳出血などの発症リスクを高めます。さらに、動脈硬化を進行させて血管性認知症を招くだけでなく、アルツハイマー型認知症の発症リスクを高めることもわかっています。
バランスのよい食事は、認知症のリスクを下げるためにとても大切です。さまざまな具材を使って不足しがちな栄養素を手軽にとれるみそ汁こそ、認知症予防に最適な料理なのです。生では多すぎて食べられない野菜も、加熱することでかさが減るので、たっぷりととることができます。
減塩みそ汁の基本的な材料は、たんぱく源である魚、肉、卵、大豆製品に、野菜を合わせて150㌘の具、みそ(小さじ1杯)です。たんぱく源と野菜を合わせて150㌘も使うため、汁の量が減り、減塩につながります。
減塩みそ汁の基本はたんぱく質と野菜の量で基本を守ればどんな具材でもよい
たんぱく質は体を作る主な成分で、神経伝達物質の材料にも使われる、認知症予防に欠かせない栄養素です。必須アミノ酸をバランスよく含む良質なたんぱく質は、年齢にかかわらずとらなければいけません。減塩みそ汁のレシピでは、1杯でたんぱく質が8㌘前後とれるようにしてあるので、1回の食事でとりたい量の約半分が補えます。
野菜は、ビタミンやミネラル、抗酸化物質や食物繊維の供給源です。抗酸化物質は、アルツハイマー型認知症の発症や、血管性認知症を招く動脈硬化の促進にかかわる活性酸素を除去するために重要です。1日の野菜摂取量の目標は350㌘です。1杯で100㌘の野菜がとれる減塩みそ汁なら、不足しがちな野菜をしっかりととることができます。汁に溶け出した栄養素を余すことなく摂取できるのも、みそ汁ならではの利点です。
減塩みそ汁で、特に重要なのがだしです。みそ(塩分)の量が少なくてもおいしいと感じる決め手になります。しかし、毎日だしをとるのはめんどうなので、継続することは難しいでしょう。そこで私がおすすめしているのが、濃いだし氷です。
濃いだし氷は、電子レンジを利用して通常のだしの4倍の濃さのだしを取り、1回分ずつ利用できるようにしたものです。冷凍後は、3倍の水で薄めるだけでいつでもおいしいだしを使うことができます。
さらに、たんぱく質の食材と野菜を1食分ずつ冷凍しておけば、電子レンジを使って簡単に調理することもできます。今回は、電子レンジを使ったレシピを紹介しますので、ぜひ試してみてください。
減塩みそ汁のいいところは、たんぱく質の食材50㌘、野菜100㌘、濃いだし氷を使うという基本を守れば、ほかに大きな制限がないところです。認知症の予防に減塩みそ汁を活用してみてください。