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その2:私たちの体は不思議な存在

大野秀隆先生の「長寿の哲学」

理学博士 大野 秀隆

[おおの・ひでたか]——1930年、東京都生まれ。1953年、東京薬科大学卒業。東京大学医学部薬学科薬品分析化学教室で研究を重ねる。薬剤師。理学博士。画期的な発想から開発した悪臭対策エキス(OS液)が国内外のメディアで「消臭革命」として報道される。以後も研究を重ね、あらゆる世代を対象とした悪臭問題の解決に取り組んでいる。

健康を支える4本柱は「栄養・休養・運動・ストレス解消」です。「栄養」は、私たちの体を作るもので、あらゆる活動のエネルギーを生み出す源といえます。

栄養がアンバランスになると、日々の活動力は減速します。栄養不足や偏りが進むと老化が促され、病気の原因にもなります。現代の食べ物の多くは、生命力がない加工食品です。栄養不足を補うのが、いわゆる健康食品ですが、生活習慣病の予防や治療の基本はあくまでも食事です。食を改めない限り、病気の予防や回復はできません。

食は生命維持の根源です。現代病の多くは、食事の問題に基づく「食源病」といえます。「食源病」は先進国特有の病気です。すなわち、現代の先進国=病気先進国。食源病は20世紀後半に生まれた20世紀病ともいえるでしょう。

私が何よりもありがたいと思っているのは、毎日元気で暮らせることです。健康な体を保つには、生体の恒常性を高め、その状態を維持することです。恒常性を堅持するには「自分の健康は自分で作り、自分で守る」という信念を持つことが大切で、この考えが健康保持の要諦といえます。

私たちは地球上の環境に調和・適合させるため、みずからの体に内部環境(体内環境)を作り出し、一定に保つ仕組みを作りました。これがホメオスタシス(恒常性)です。病気が治るのは恒常性によるもので、医師や薬だけのおかげではありません。この恒常性を保つ力を、自己調整能力や自然治癒力といいます。医師や薬は、私たちが持っている自然治癒力を助けているだけにすぎません。

恒常性についていえば、夏と冬の気温差が25度を超えても、体温の変化は0.5度の範囲内でとどまっています。恒常性は人間の意思に関係なく自動的に保たれます。健康な人の血液や尿などの生化学的検査値はおよそ一定です。どんなに酸っぱいものを食べても血液のpHは変わりません。1分間で呼吸は17回、脈拍は65回というように、環境の変化や労働、食事、睡眠といった心身の働きに関わらず安定しています。しかも、何世代に渡って常に一定なのです。

私たちの体には数十兆個の細胞があり、あるものは骨や皮膚、あるものは血液となって泳いでいます。その1つ1つの存在が体の中で互いに調和し、恒常性の維持に役立っています。細胞を構成しているのは、何百億・何十兆という原子。これだけの原子が心を1つにして働き、私自身は1つの生物として生きています。このような仕組みをいったい誰が考えたのでしょうか。当たり前と思われていることが、私には不思議でなりません。

生物学者の多くは「宇宙人はいない」といい、天文学者は「いる」といいます。 私たち人間は、地球人であるとともに宇宙人でもあります。人間という生命が、そもそも信じられない存在です。その人間を作る元素は宇宙からの贈り物なのでしょう。