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その9:健康情報のウソ・マコト「腹八分は体にいい?」

大野秀隆先生の「長寿の哲学」

理学博士 大野 秀隆

[おおの・ひでたか]——1930年、東京都生まれ。1953年、東京薬科大学卒業。東京大学医学部薬学科薬品分析化学教室で研究を重ねる。薬剤師。理学博士。画期的な発想から開発した悪臭対策エキス(OS液)が国内外のメディアで「消臭革命」として報道される。以後も研究を重ね、あらゆる世代を対象とした悪臭問題の解決に取り組んでいる。

暮らしの楽しみの1つに「食」があります。

もちろん、食欲のおもむくままに暴飲暴食を重ねる人は、ろくな結果を招きません。だからといって、誰にとっても「腹八分」がいいという理屈もありません。腹八分というのは、過食を戒める言葉のアヤにすぎません。

もともと胃袋は、腹十分に食べてもいいようにできています。特に、成長期の子どもや重労働をしている人、スポーツ選手といった、体を酷使する人が腹八分では困ります。大事なことは、満腹感と実際にとっている栄養素のバランスが取れているかどうかです。

昔の日本人の食事は、たんぱく質や脂肪が極端に不足していたため、米を腹いっぱい食べなければ体がもちませんでした。そのため、食べすぎの弊害が生まれました。 栄養面が向上した現では、食べ過ぎるほど食べなくても十分な栄養がとれるようになりました。カロリーを抑えながら満腹感を得る食事も可能です。高齢者や胃腸の調子が悪い人、太り過ぎの人の中には腹八分目を心がけている人も多いと思いますが、栄養不足や偏りが出てしまっては困りものです。過食を戒める意味での腹八分は大いに結構ですが、摂取する栄養素は腹十分を心がけるべきでしょう。空腹感を我慢するのは精神衛生上もよくありません。腹八分目の意味を誤解しないようにしたいものです。