小林メディカルクリニック東京理事長・院長 小林 暁子先生
池谷医院院長 池谷 敏郎先生
イシハラクリニック副院長 石原 新菜先生
旬を迎えたリンゴは、昔から「医者いらず」といわれるほど栄養価が高い果物といわれています。リンゴの健康増進効果について、3人の先生方に医師の視点で分析していただきました。
リンゴの常食がヤセ体質につながる
スーパーマーケットの生鮮食品売り場では、旬を迎えた「リンゴ」が鮮やかな色で輝いています。シャキッとした食感とみずみずしさ、甘酸っぱい独特の味わいが大好きという人は多いことでしょう。
リンゴが健康にいいことは、世界中で知られています。イギリスでは、「1日1個のリンゴが医者を遠ざける」ということわざがあり、日本でも「リンゴ=医者いらず」というイメージが定着しています。
リンゴの健康増進効果は誰もが認めるところですが、実際にはどのような効果が期待できるのでしょうか。3人の医師の先生方に解説していただきました。
まずは、小林メディカルクリニック東京理事長・院長の小林暁子先生に、リンゴに関する最新の調査結果を解説していただきます。
「リンゴの健康・美容効果について、興味深い最新データがあります。リンゴの名産地として知られる青森県の青森県りんご対策協議会が、ヨガやピラティスいずれかのインストラクター資格を有する20~50代の女性30人を調査したところ、理想的な腸内環境を保っていることがわかりました。さらに、そのカギがリンゴにあることも分かったのです」(小林先生)
小林先生によると、ヨガやピラティスのインストラクター有資格者の腸内に多いのは、アッカーマンシア菌という腸内細菌とのこと。アッカーマンシア菌は〝ヤセ菌〟と呼ばれる菌で、腸内環境を適切な状態に導くといわれています。2016年に行われた実験では、リンゴ由来のポリフェノールであるプロシアニジン類を摂取させたマウスの腸内で、アッカーマンシア菌が増えたという結果が出ており、リンゴとアッカーマンシア菌の関連性についても近年注目が集まっています。
「腸は健康の要といわれる臓器です。ダイエットや美容はもちろん、免疫力の維持にも腸内環境は関わっています。今回の調査の結果、30人の対象者は、通常の2割も多くアッカーマンシア菌を持っていました。さらに調査を進めたところ、『旬の時期にリンゴを食べる』と答えた対象者が96.7%にものぼったのです」(小林先生)
30人の対象者に、リンゴに期待する健康効果を尋ねたところ、便通の改善、免疫力の向上、アンチエイジング効果という回答が挙がったとのこと。その期待に応えるように、対象者の約9割が日常的に便通のトラブルがないと答えています。
「腸内環境を健全に保つには、食物繊維の摂取が大切ですが、リンゴには水溶性食物繊維と不溶性食物繊維がともに含まれています。水溶性食物繊維は、消化の速さと血糖値の上昇を緩やかにするだけでなく、腸内にすむ善玉菌のエサにもなります。不溶性食物繊維は腸のぜん動運動を活発にして、排便を促してくれるのです」(小林先生)
小林先生が指摘するように、腸内環境の乱れは全身に影響を及ぼします。免疫力の低下のみならず、腸内で増えた悪玉菌が出す毒素が血液に乗って全身をめぐると、肌荒れやむくみを引き起こしてしまいます。
「調査対象者が日常的に運動をしている背景もありますが、適度な運動とともにリンゴを積極的に食べる習慣は、腸内環境を良好に保ちます。美容と健康に対するリンゴの効果が示されたと思います」(小林先生)
動脈硬化を招くメタボ予防にも最適
小林先生に続いてリンゴの健康増進効果を解説していただくのは、池谷医院院長の池谷敏郎先生です。循環器が専門の池谷先生は、リンゴを積極的に食べることで血管の健康維持を図ることを提唱されています。
「中高年世代の健康問題を考えるうえで、メタボリックシンドロームの対策は欠かせません。肥満は血管の老化である動脈硬化の原因になります」(池谷先生)
池谷先生が挙げるメタボリックシンドロームは内臓脂肪症候群といわれ、内臓脂肪型の肥満と高血糖や高血圧、脂質異常を複数併せ持った状態を示します。現代人は運動不足や過食によって、内臓脂肪が蓄積しやすい生活を送っているのです。
「内臓脂肪の蓄積が怖いのは、生活習慣病のリスクを高めてしまうからです。高血圧や高血糖、脂質異常によって動脈硬化が進むと、狭心症や心筋梗塞、脳卒中、認知症、がんの原因にもなるので注意が必要です」(池谷先生)
メタボリックシンドロームを防ぐためとはいえ、生活習慣を全面的に見直すのは、現実的にも難しいものです。そこで池谷先生は、リンゴの活用をすすめています。
「メタボリックシンドロームを防ぐために、朝食や毎食のはじめにリンゴを食べる『リンゴファースト』の食生活を実践してみましょう。リンゴは果物の中でも糖質の吸収の速さを示すGI値が低く、血糖値の上昇が緩やかです。リンゴに含まれる食物繊維やカリウム、プロシアニジン、ビタミンC、βカロテンといった栄養素は血管の健康維持に役立ちます。リンゴは食べ応えがあるので食後の満足感も高く、食べすぎを防いでくれます。メタボリックシンドロームの予防には理想的な食材といえるでしょう」(池谷先生)
腸脳関連の強化にリンゴの常食が最適
リンゴの健康増進効果を証言する3人目の先生が、イシハラクリニック副院長の石原新菜先生です。石原先生は、リンゴを常食するためにジュースの活用をすすめています。
「忙しい朝はリンゴの皮をむくのが大変という方に提案しているのが、リンゴをジューサーなどで絞って作るリンゴジュースです。私はリンゴとニンジンをミックスしたニンジンリンゴジュースをおすすめしています」(石原先生)
池谷先生も述べられたように、リンゴには食物繊維をはじめ、プロシアニジン、ビタミンC、βカロテンといった栄養素が豊富に含まれています。石原先生はカリウムの効果にも言及します。
「カリウムは体内の余分なナトリウムを排出する働きがあるため、むくみの予防に役立ちます。抗酸化作用もあるリンゴは、むくみの予防だけでなく、美肌効果も期待できます。美容意識の高い方にはぜひとっていただきたい食材です」(石原先生)
さらに石原先生は、最新のキーワードを用いてリンゴの力に期待します。
「近年の研究によって、腸内環境が脳にも影響を及ぼしていることが分かりました。脳と腸は自律神経系などを介して双方向に情報を伝え、互いに深く影響し合っています。「脳腸関連」と呼ばれるこの関係は、リンゴを積極的に食べることで強化することができると考えられます。リンゴによって腸を良好な状態に保てば、脳にも働きかけて不安や過度なストレスが和らげられる可能性があります」(石原先生)
著名な3人の先生方が太鼓判を押すリンゴの力。旬を迎えた今こそ、リンゴを毎日の食事に取り入れてみましょう。