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あぐら・横向き寝・腹ばいは危険!脊柱管狭窄症の悪化を防ぐ医師考案の生活術

整形外科
参宮橋脊椎外科病院院長 大堀 靖夫

腰部脊柱管狭窄症のやっかいな点は症状を緩和する姿勢が病気を悪化させる点にある

[おおほり・やすお]——1992年、防衛医科大学校卒業。2003年、米国シンシナティ小児病院医療センター留学。2006年東京大学医学系研究科外科学専攻大学院修了。医学博士。防衛医科大学校病院、東京大学医学部附属病院、社会保険中央総合病院(現JCHO東京山手メディカルセンター)勤務などを経て、2012年、春陽会中央病院整形外科部長。2014年より現職。日本整形外科学会専門医、日本整形外科学会脊椎脊髄病医、日本脊椎脊髄病学会脊椎脊髄外科技術指導医。

腰部脊柱管狭窄症(以下、脊柱管狭窄症と略す)の医療技術は、日々進化しています。内視鏡を用いた体に負担の少ない手術も広まりつつあり、1週間程度で退院することも可能になってきました。

とはいえ、手術をしないで改善することができれば、それにこしたことはありません。この記事では、脊柱管狭窄症を進行させない、あるいは改善するための日常生活のポイントをお伝えしましょう。

脊柱管狭窄症が起こって脊柱管が狭くなると、その中を通る神経や血管が圧迫されるため、痛みやしびれが生じます。前かがみになると脊柱管の狭窄が緩むため、症状の緩和につながります。

ただし、前かがみの姿勢は背骨への大きな負担になります。圧迫された椎間板がすり減る原因になるだけでなく、骨粗鬆症を併発している人は圧迫骨折を起こすこともあります。圧迫骨折によって背骨が変形すると、さらに脊柱管狭窄症が悪化してしまいます。

脊柱管狭窄症が悪化する負のスパイラルを断ち切るには、まずはふだんの姿勢をよくすることが大切です。背骨が不自然に曲がるあぐらや、横向きで寝て片ひじで頭を支える姿勢、背骨を反らす腹ばいの姿勢は避けるようにしてください。脊柱管狭窄症の人は、座っているとらくな場合が多いので、まずは骨盤を立てて座る姿勢をよくすることがポイントです。

ただ、座りっぱなしというのはよくないので、30分に1回は腰を伸ばしたり、立ち上がって少し歩いたりしましょう。台所で立ち仕事をするときには、片足を一歩前に出すか、台を用意して片足を乗せるようにすると、足腰の痛みやしびれなどの症状を抑えることができます。

脊柱管狭窄症の患者さんが心がけたい日常生活の姿勢

買い物などで移動するさいも、極力背すじを伸ばすよう意識しましょう。ある程度病状が進行している方は、両手に長めの杖を持ったり、手押し車を使ったりするといいでしょう。

筋肉・骨を強化して腰への負担を減らす運動は1日20分の軽い散歩がおすすめ

ふだんから運動を心がけるのも重要です。運動することによって足腰の筋肉や骨を強化し、腰への負担が軽減します。私がおすすめするのは、軽い散歩です。朝と夕方の1日2回程度、それぞれ20分くらいを目安に大股で歩きましょう。長く歩けないという人は、10分ごとに休んでも構いません。

さらに、水中ウォーキングは水の浮力によって足腰への負担が減るため、おすすめの運動です。自転車をこぐ運動は、前かがみの姿勢で行う運動なので、継続しやすいでしょう。室内で使用できるエアロバイクを用いれば、ケガの心配もなく好きなときに行えます。

1人で運動を継続する自信がないという人は、友人を誘っていっしょに取り組むようにすれば長続きするでしょう。次に、自宅で簡単に取り組めるストレッチを2つご紹介します(「自宅でできる簡単ストレッチ」の図参照)。今回ご紹介する運動以外でも、自分が取り組みやすいものであれば、何でも構いません。

自宅でできる簡単ストレッチ

また、食事については、年を取っても再生が期待できる骨によい食事を意識しましょう。具体的には、カルシウムやマグネシウム、ビタミンD、ビタミンB12を積極的にとりながら、バランスのいい食事をとるようにしてください。

脊柱管狭窄症の症状を緩和させるには、血流の改善も有効です。脊柱管が狭くなり、その中を通る血管や神経が圧迫されることで症状が悪化します。腰の部分を温めることで血流の改善を図る温熱療法は、理学療法の1つとして取り入れられています。ただし、入浴は症状が緩和する人と、悪化する人がいるので注意してください。

私は、脊柱管狭窄症の患者さんに病気だからといって、自分の人生を制限しないでほしいと考えています。今回ご紹介したさまざまな改善法の他、手術をはじめとした治療で症状を改善することで、脊柱管狭窄症に負けない豊かな人生を送ってほしいと願っています。