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指関節症・ヘバーデン結節は腎機能と密接に関係し腫れ・痛みは解毒力低下の重大サイン

整形外科

三起均整院院長 筒井 浩一郎

ヘバーデン結節に悩む人は多く、閉経後の女性のみならず男性や若年層にも増えている

[つつい・こういちろう]——1962年、京都府生まれ。武蔵大学経済学部卒業。大学時代に患った紫斑病が原因で慢性腎炎を発症。治療過程で出会った石塚友康氏に師事し、治療家の道へと進む。東京医療専門学校鍼灸科、姿勢保健均整専門学校卒業。1991年に開院後、のべ20万人の治療を行う。2008年、「ヘバーデン結節解消プログラム」を発表し、国内外から多くの患者が来院。著書に『へバーデン結節の8割は食事でよくなる!』(青春出版社)、『今すぐできる!腎臓が健康になる習慣』(アルソス)がある。

私が院長を務める三起さんき均整院は、東京都杉並すぎなみ区にある治療院です。鍼灸しんきゅう師の国家資格を持つ私は東洋医学の視点をもとに、さまざまな不調に悩む患者さんの治療に携わっています。

鍼灸をはじめ、東洋医学を修めた私のもとには、従来の西洋医学の治療だけでは治癒ちゆが望めず、毎日の生活に難儀をしている患者さんが来られます。その症状は多岐にわたり、私の治療院はさながら〝駆け込み寺〟のような状況です。

患者さんの中で最も多いのがヘバーデン結節けっせつです。西洋医学では変形性指関節症の1つと分類されるヘバーデン結節は、指関節のれや痛み、こわばりが特徴です。私たちは仕事や家事など、多くの生活シーンにおいて手の指を使います。そのため、ヘバーデン結節の患者さんは、痛みやこわばりといったつらい症状はもちろん、暮らしの不便さからも生活の質を著しく落としてしまうのです。

私は今から16年前の2008年に「ヘバーデン結節解消プログラム」という独自の改善法を発表しています。当時、一般の方々にとってヘバーデン結節という病名はあまり知られていなかったものの、その反響は大きく、プログラムの内容に共感した多くの患者さんが国内外から私のもとに来られました。多くの患者さんを改善に導いた当時のプログラムは姿勢の矯正を中心とした内容でしたが、その後、改良を重ねることで改善率が一段と向上しています。今回の記事では、私が独自に考案したヘバーデン結節の改善法の一部をご紹介します。

アドバイスをする前に、ヘバーデン結節に対する私の考えと治療方針を述べたいと思います。西洋医学におけるヘバーデン結節は、変形性指関節症の1つとされています。そのため、治療箇所は指関節というピンポイントに限られ、湿布しっぷやテーピングを用いた保存療法のほか、薬物療法を行うのが一般的です。指関節の痛みやこわばりが激しく、保存療法だけでは改善が望めない患者さんには手術が行われることもあります。

私がヘバーデン結節の患者さんの治療を始めた2008年当時、患者さんの数は300万人と推定されていました。15年以上が経過した現在も、西洋医学においてヘバーデン結節を改善させる治療法はほとんど確立されていません。それどころか、患者数が500万人といわれるほど増えているのです。

西洋医学の考えでは、ヘバーデン結節は中高年女性が発症しやすいとされてきました。閉経を迎えた女性に患者さんが多く見られることから女性ホルモンとの関係が指摘されていますが、最近では男性にも患者さんが増えています。

さらに深刻なのが、患者さんの低年齢化です。私にもとに通院されたヘバーデン結節の患者さんで最も若い方の年齢は18歳です。これらの事実は、従来の西洋医学だけではヘバーデン結節の治癒が望みにくいことを表しているのではないでしょうか。

ヘバーデン結節は生活習慣病の1つで不摂生な生活習慣の結果が手指に現れる

私が考えるヘバーデン結節の改善法は、従来の西洋医学とは対照的です。ピンポイントに指関節の治療を行う西洋医学に対し、私は全身をながら症状を引き起こしている根本原因を究明し、痛みやこわばりの改善を目指します。

のべ20万人に及ぶヘバーデン結節の治療経験から、私は「ヘバーデン結節は指関節自体の病気ではなく、不摂生や全身の不調が続いた結果、指関節に不調が現れた状態」と考えています。私が患者さんたちに「へバーデン結節は関節症ではなく生活習慣病」と伝えているのは、そのような理由からです。

東洋医学の考えでは、「腎」の力が低下すると関節をはじめ、脳・歯・骨に影響が現れる

ヘバーデン結節が生活習慣病である以上、痛みを取り除くには生活習慣を見直し、改めることが欠かせません。そのポイントといえるのが「腎臓じんぞう」です。従来の医学では、ヘバーデン結節が起こる原因を老化や手指の酷使としていますが、私は長年の治療経験から、ヘバーデン結節を引き起こす最大の原因は「腎臓の疲れ」にあると確信しています。

私が専門とする東洋医学では、腎臓は親からの精力を受け継ぐ臓器で、生命エネルギーを維持したり高めたりするうえで欠かせない存在とされています。そのため、東洋医学における「腎」の力が低下して「腎虚じんきょ」という状態になると、全身のエネルギーが低下し、さまざまな不調を引き起こすのです。

そのほか、東洋医学の世界では、「腎機能の低下は関節の異常として現れる」という法則があります。腎臓の酷使によって浄血機能が低下すると、全身に老廃物がたまるようになります。腎機能の低下によって現れる関節の不調は、指関節に限定されません。背中や腰、股関節こかんせつ、ひざといった全身の関節に現れる場合もあります。いずれの部位にしろ、関節痛を訴える患者さんに対して、私はまず腎臓の疲労を疑います。

私が健康と腎機能の関係に強い思い入れを持つのは、専門である東洋医学の理論に基づく考え方だからという理由だけではありません。私自身がかつて深刻な腎臓病を患い、長く苦しんだ経験があるからです。大学生の時に紫斑病しはんびょうを患った私は、急性腎炎にかかりました。紫斑病にかかると多くの人は急性腎炎にもかかります。私の場合は運悪く、慢性腎炎に移行しました。後で分かったことですが、腰が硬かった私は腎臓の血流が悪く、炎症が引かなくなって慢性腎炎へと移行してしまったのです。

入退院を繰り返して慢性腎炎の治療を受けたものの、腎機能の回復はかなわず、当時の私は体力と気力が落ちていくばかりでした。20代の若さにもかかわらず、寝たきりのような状態で毎日を過ごし、自宅から300㍍ほど離れたコンビニエンスストアにも行けないほどでした。

絶望的な状態で過ごしていた私は、ある治療家と出会ったことで慢性腎炎を治癒させることができました。親が銀行員だったことから、大学卒業後は自分も金融業界で働くことを疑っていませんでしたが、自身の体験から治療家の道を志し、現在に至っています。

腎機能の状態が全身に影響を及ぼすことを経験している私は、ヘバーデン結節の患者さんにも腎臓のケアを指導しています。私が「腎ストレス」と呼ぶ、ヘバーデン結節の原因となる食習慣は以下のとおりです。

腎臓のストレス、すなわち腎臓を疲れさせる原因として最初に挙げられるのが、腎臓を酷使する飲食物です。私が治療薬という化学物質を長期間服用して腎機能を落としてしまったように、腎臓を疲れさせる飲食物はヘバーデン結節のみならず、すべての人が気をつけたい食習慣といえます。

特に注意してほしいのが、アルコール、カフェインを含む飲料(コーヒー・紅茶・緑茶)、スイーツなど甘い食べ物、果物、小麦製品、乳製品、加工食品(ハム・ソーセージ、スナック菓子などのジャンクフード)です。

ヘバーデン結節にはコーヒーやスイーツ、腎臓を酷使する加工食品は厳禁

ヘバーデン結節の患者は腎臓を酷使していることが多いため、解毒の際に腎臓の働きに負担をかける飲食物を控えるといい

アルコールは百薬の長といわれ、適量を飲めばむしろ健康にいいと思いがちですが、ヘバーデン結節の患者さんはすでに腎臓が疲れ果てている状態です。アルコールの分解は肝臓で行われますが、一連の代謝の過程で腎臓にも大きな負荷がかかります。ヘバーデン結節の患者さんは、アルコール類を控えるのが賢明といえるでしょう。

コーヒーや紅茶、緑茶が腎臓を疲れさせると聞いて意外に思われるかもしれません。最近の研究では、適量のコーヒーが認知機能の低下予防に役立ったり、緑茶に抗ウイルス作用が確認されたりするなど、一定の健康効果が認められています。しかしながら、これらの飲み物には利尿作用があるカフェインが含まれています。

ヘバーデン結節の患者さんがなによりも取り組むべきなのは、「腎臓を休ませること」です。カフェインの摂取によって利尿作用が促進されると腎臓は働きつづけることになります。また、コーヒーは自律神経のうち交感神経を緊張させる働きがあるため、指関節の痛みが感じやすくなるおそれもあります。紅茶に含まれるシュウ酸も腎機能を低下させる物質の1つです。最近ではカフェインが含まれていないコーヒーや紅茶が入手できます。麦茶やルイボスティーはカフェインが含まれていないのでおすすめできるお茶です。

スイーツなどの甘い食品や果物は「糖化」といわれる現象を引き起こしてヘバーデン結節の悪化を招きます。糖化は糖とたんぱく質が結合する反応で、骨や血管の老化を促進させます。ホットケーキを焼くと表面がこげて茶色になるのが糖化です。糖化した場所にはAGE(終末糖化産物)と呼ばれる悪玉糖化物質が作られ、血管や骨の老化を促進させます。毛細血管のかたまりといえる腎臓は、糖化によって血管がダメージを受けると機能が落ちてしまうのです。

パンやめん類、お好み焼きやタコ焼きといった、いわゆる粉もの食品に欠かせない小麦もヘバーデン結節を悪化させます。小麦に含まれる「グルテン」は、パンや麺類のモチモチとした食感を作るために欠かせない物質ですが、腸内環境の悪化や炎症を招くことが知られるようになってきました。腸内環境が乱れて悪玉菌が増えると、体内で毒素が増えて血管に入り込みやすくなります。その結果、浄血機能を担う腎臓に過度な負担がかかってしまうのです。近年では、「グルテンフリー」と呼ばれる、グルテンを控えた食事法を実践する人が増えています。

小麦製品と同様、腸内環境を悪化させて腎臓の負担を増やすのが乳製品です。「乳製品=健康にいい」「牛乳=カルシウムの補給」という目的で、牛乳やヨーグルト、チーズを積極的に摂取している人も少なくないでしょう。しかしながら、カゼインたんぱく質から構成される乳製品は、私たち人間のたんぱく質を構成するたんぱく質(ラクトアルブミン)とは異なるたんぱく質です。私たちの体は乳製品を異物としてとらえるため、アレルギー反応を起こして腸内環境の悪化を招きやすくなります。その結果、小麦と同様に腸内環境が悪化し、老廃物を排出するために腎臓が休めなくなってしまうのです。乳製品は毎日食べる食材ではなく、あくまでも嗜好しこう品の一つと考えるべきでしょう。

ヘバーデン結節の患者さんの低年齢化に警鐘を鳴らす筒井院長は、体のゆがみを取る体操も指導している

さらに腎臓に負担をかけるのが、私が「超加工食品」と呼ぶ食品の数々です。具体的には、ハム・ソーセージ・ウインナーといった加工肉をはじめ、インスタントラーメンや冷凍食品、菓子パンなど、食品添加物や保存料が大量に使われている食品を指します。食品添加物や保存料を長期的にとりつづけると腎臓は解毒のために酷使され、機能の低下を招きます。

腎臓をいたわり、休ませる飲食物として最も適切なのが「水」です。解毒の必要がない水は、腎臓に流入する血液の流れもよくするため、腎臓に最も優しい飲み物です。季節や気温、運動量によって水の適切な摂取量は変動しますが、1日おおよそ1.2~2㍑の水を意識して飲むといいでしょう。

腎臓をいたわる筒井つつい式のヘバーデン結節改善法の効果はてきめんで、私が指導する食事法を実践した約8割の患者さんに、ヘバーデン結節の改善が見られています。私はこれらの食事法に加えて、独自に考案したストレス解消法と体のゆがみを取る体操を指導することで、ヘバーデン結節の改善率をより高めています。

冒頭で申し上げたように、西洋医学の治療で改善が望めないヘバーデン結節は、東洋医学の視点で改善がかなえられます。そのカギを握っているのが腎臓です。「腎臓を酷使せずに、できるだけ休ませる」という私の考えは、ヘバーデン結節に限らず、全身の健康管理に役立つとお考えください