365調査隊
健康意識が高い人に多い習慣の1つに「就寝前の水分補給」があります。実は、その習慣が加齢とともに起こりやすい病気を招いているかも……。そんな就寝前の水分補給について、調査隊が真相に迫ります。
就寝前の水分補給には医学的根拠がない⁉
人は寝ている間にコップ一杯分の汗をかいているとよく耳にします。だからこそ、就寝前と起床後の水分補給は重要で、とりわけ脳梗塞の予防に効果的だというのも知られた話。まだまだ残暑の厳しいこの時期、これはぜひ心に留めておいていただきたいところですが——。
「確かに、眠る前の水分補給は就寝中の脳梗塞や熱中症の予防に有用であると説明されることが多いですが、実は医学的根拠はないんです。むしろ、夜間頻尿で3回以上起きる人は寿命が短くなるとの報告がありますから、注意が必要です」
そう語るのは、なかざわ腎泌尿器科クリニックの中澤佑介先生です。
夜間頻尿とは、文字どおり、夜中に何度も排尿のために起きてしまう症状のこと。ただでさえ、年を取るとトイレが近くなりがちなのに、まさかこんなリスクがあったとは……。
「夜間頻尿の原因は、主に夜間多尿(就寝中の尿量が多い状態)、膀胱容量の低下、睡眠障害の三つがあります。専門的には、夜中に一回以上起きれば夜間頻尿に相当しますが、私のクリニックでは二回以上起きてしまうケースを問題視して診療しています」
中澤先生によれば、人は寝ている間も体内で一定量の尿が生成されているため、睡眠前の水分摂取はおのずと夜間頻尿の一因になるのだそう。
とはいえ、もちろん人が生きていくうえで水分補給は欠かせません。問題は、そのタイミングと質です。
「夜間頻尿を予防するためには、まず水分補給のタイミングを日中に均等して分散させるよう意識してみてください。例えば、食事の際や運動の前後に意識して水分を取ることで、適切なバランスを保てるようになります。その上で、睡眠前の過剰な水分摂取を避けることが大切です。また、カフェインやアルコールもなるべく控えて、水分補給の質を下げないようにしましょう。そして、眠る前には排尿して膀胱を空っぽにしておき、さらに軽いストレッチをしたり、弾性ストッキングを着用したりするなどして、足がむくまないようケアできればより理想的ですね」
中には、睡眠時無呼吸症候群に伴う睡眠障害から夜間頻尿につながるケースもあるそうです。それが寿命を縮めるリスクに通じるとなれば、たかが夜間頻尿と侮ってはいけません。
なお、メンタル面の不具合から過剰にのどの渇きを感じ、水を飲みすぎてしまう心因性多飲症という病気もありますので、不安に感じる人は早めに専門医に相談してください。