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かつてはやった〝飲尿健康法〟はほんとうに体にいいの?

健康常識のウソ・ホント[365調査隊が徹底検証!]

365調査隊

1990年代に話題を集めた飲尿健康法。毎日排泄する尿を飲んで健康になるのなら、持続可能な飲料として社会問題を解決するかもしれません……。そんな尿に関するウソ・ホントについて、調査隊が真相に迫ります。

尿は体内の排泄物で健康促進効果は未確認

いつの世も人々の健康に対する関心は尽きないということなのか、さまざまな民間療法が話題になっては消えていく——そんなサイクルを繰り返しています。

時には、にわかに信じがたい健康法が大真面目に流布され、多くの人がそれを実践することも……。その最たるものが、1990年代に流行した通称「飲尿健康法」ではないでしょうか。

これは自分が排泄した尿を口から飲むという、実に奇妙奇天烈な健康法のこと。尿に含まれるなんらかの成分が腸内環境を整えたり、免疫力を向上させたりするといわれたもので、実際、海難事故で漂流中のヨット乗組員のうち、自分の尿を飲んだ人だけが衰弱死を免れたケースもありました。

とはいえ、さすがに抵抗感が拭えないこの飲尿健康法。ほんとうに効果はあるのでしょうか?

「ないと思います。尿とは体内の代謝産物や老廃物を含む排泄物ですから、少なくとも栄養価や健康促進効果を持つものではありません」

時を経てそう明言するのは、なかざわ腎泌尿器科クリニック院長の中澤佑介先生です。

「民間療法などに興味や信頼を持つ人は多く存在しますが、だからといって科学的な裏づけがあるわけではありません。漂流者が飲尿によって助かった事例は、あくまで極限状態における最終手段の話ですから、日常の中で尿を飲むことは決しておすすめできません」

こうなると、なぜ一時的とはいえ飲尿健康法が支持されたのか疑問です。

中澤先生によると、尿の構成要素の90%以上は水分であり、残りが尿素(たんぱく質の残りかす)や塩分、クレアチニン(筋肉中で使われたたんぱく質の老廃物)、尿酸(細胞内のプリン体が分解されてできる老廃物)といった固形成分なのだそう。たまに尿が黄色くなるのはウロビリンという胆汁色素によるものであり、妙に臭いを伴うことがあるのはアンモニアを含むためです。

「薄い色の尿が出るのは水分補給が十分にされている証拠。逆に濃い色の尿が出る時は、脱水や病気の可能性があるので要注意です。多くの場合は単なる水分不足ですが、不安があるなら一度、医療機関の診療を受けるべきでしょう」

尿は人間にとって非常に身近なものであるため、もしこれに健康効果があるなら……と期待する人が一定数いたのかもしれませんが、雑菌が繁殖しやすいものなのは間違いありません。飲むのではなく、あくまで健康チェックの指針として利用するのがいいのでしょうね。


365調査隊とは
ちまたにあふれる健康常識の真偽を検証するために編集部員とプロアスリートで健康マニアのライター・友清哲氏が「365調査隊」を結成! 各分野の専門家を取材して健康常識の真実に迫ります!