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ガン予防に著効のミネラル「セレニウム」とは?

がん治療の進化を目撃せよ!

日本先進医療臨床研究会理事 小林 平大央

ガンの死亡率を80~90%も下げることが可能といわれる微量栄養素があった

小林平大央
[こばやし・ひでお]——東京都八王子市出身。幼少期に膠原病を患い、闘病中に腎臓疾患や肺疾患など、さまざまな病態を併発。7回の長期入院と3度死にかけた闘病体験を持つ。現在は健常者とほぼ変わらない寛解状態を維持し、その長い闘病体験と多くの医師・治療家・研究者との交流から得た予防医療・先進医療・統合医療に関する知識と情報を日本中の医師と患者に提供する会を主催。一般社団法人日本先進医療臨床研究会理事(臨床研究事業)、一般社団法人不老細胞サイエンス協会理事(統合医療の普及推進)などの分野で活動中。

人間の健康維持や疾病(しっぺい)予防に対して重要な微量栄養素の一つに「セレン」または「セレニウム」と呼ばれるミネラルがあります。日本では「セレン」とドイツ語読みで呼ばれることが多いですが、世界的には英語読みの「セレニウム」が一般的です。

セレニウムは、栄養素の中でも最も抗酸化力の強い物質の一つです。肝臓で合成される強力な酸化還元酵素である「グルタチオンペルオキシダーゼ」の主要な構成成分として必要不可欠な栄養素であることも知られています。

セレニウムという微量ミネラルとガンや難病についての研究で、世界的な権威であったカリフォルニア州立サンディエゴ大学名誉教授のゲルハード・シュラウザー博士は今から45年も前の1978年にセレニウムについて次のように述べています。

「セレニウムはガン予防に対する巨大なステップであり、敵陣を突破する主要な武器である。もしセレニウムがガン予防手段として正しく使われたならば、私はすべてのガンによる死亡率を80~90%下げることが可能であると考えている。(中略)すべての女性が十分なセレニウムの摂取を始めたら2~3年の間に乳ガンによる死亡率は極端に低下するだろう」

当時、セレニウムがガンや多くの病気に対して効果があるということは一部の科学者や先進的な医師・医学者が知っている程度でした。ところが、その後の多くの研究から、セレニウムがガンをはじめ、心臓病や肝臓病、そのほかの疾患の予防や治療に欠かせない重要な役割を持っていることが明らかになったのです。近年の研究では、セレニウムは人間の老化を遅らせる働きがあり、免疫機能を高めたり性的機能を増強したりするほか、神経痛や関節炎、糖尿病、白内障、リウマチ性関節炎、筋ジストロフィー(筋無力症)などの治療にも効果を発揮することが分かってきています。

欧米では、セレニウムをはじめ、同様に非常に多くの疾病予防や治療効果がある微量ミネラルの亜鉛や、ビタミンC、ビタミンDなどの多くの微量栄養素をガン治療と予防に取り入れています。実際にこうした補助的栄養療法がガン治療に多大な効果を発揮し、欧米のガン治療は一斉に統合医療的な方向へとかじを切り、ついに1990年頃を境に欧米のガン死亡率は減少へと転じることとなるのです。

その栄養療法で非常に強力な治療効果を現した素材の一つがセレニウムであり、同じく微量ミネラルの亜鉛やクロム、ゲルマニウムなのです。優れた治療効果を発揮するセレニウムなどの微量ミネラルですが、残念ながら、いまだに多くの日本人はその有用性に気がついていません。

微量ミネラルは、実はビタミンよりも重要といえます。なぜなら、ビタミンは化合物なので化学的に合成できますが、ミネラルは合成できないからです。

また、微量ミネラルを含む土壌や海水には地域差があって、微量ミネラルの重要性について深い知識を持っていないと欠乏症に陥る可能性があるのです。微量ミネラルの欠乏症は世界中に例があり、例えば1979年に中国の風土病でセレニウム欠乏症であることが判明した克山病(こくざんびょう)(致死性の心筋障害)や、ヨウ素欠乏症である甲状腺(こうじょうせん)障害などが有名です。

こうした重大な欠乏疾患があるにもかかわらず、ミネラルはビタミンに比べてその重要性があまり認識されていません。おそらく、欠乏症といえば壊血病(かいけつびょう)脚気(かっけ)などのビタミン欠乏症が有名なため、ミネラル欠乏で起こる症状の多くもビタミン欠乏と思われているのではないでしょうか。事実、医師でさえも多くの方は、原因不明の症状に対してはミネラル欠乏を疑うよりも先にビタミン欠乏やたんぱく質欠乏を疑い、そうした診断と処方をする例が多いのです。

『セレニウムとガン―微量栄養素セレニウムの驚くべき生理作用』増山吉成著(めるくまーる)

もう一つの理由は、ミネラルはほかの栄養素と比べて耐容摂取の範囲が狭く、薬理作用を発揮しやすい反面、重篤(じゅうとく)な過剰症や多量摂取による毒性なども起こしやすく、毒性や過剰症が出にくいビタミンよりも有用に感じられないこともあるようです。確かに、ミネラルには多量摂取による過剰症や毒性などがあるため、やみくもにたくさんとればいいというわけではなく、非常に厳密な摂取の目安量というものがあります。

厚生労働省の資料によれば、セレニウムの摂取基準は、18歳以上の男性での1日推奨量は30㍃㌘、女性は25㍃㌘です。健康被害が出ない限度(耐容上限量)は、18~74歳以上の男性で450㍃㌘、女性で350㍃㌘とされています。

これに対して、アメリカの基準では男女ともに14歳以上の推奨量は55㍃㌘で、妊娠中の女性は60㍃㌘、授乳中の女性は70㍃㌘とされています。これは、胎児や育児の生育にセレニウムが非常に重要な役割を果たすためです。また、耐容上限量は、男女ともに14歳以上で400㍃㌘までとされています。

人間の健康維持や疾病予防の多くにセレニウムが関わることは事実です。できれば、健康維持と疾病予防のために毎日適量のセレニウムを摂取することをおすすめします。そして、この適量( )という部分が実は非常に重要です。それは、研究者や立場によって適量が変わるからです。

末期ガン治療の医師や研究者の立場からは、厚生労働省の摂取推奨量ではまったく足りず、最低でも1日200~400㍃㌘程度は必要とされています。場合によっては、一時的に国の耐容上限量をも超える量の摂取が望ましいケースもあるといいます。

ところが、予防的な立場や一般的な栄養療法の立場からは、耐容上限量以下の200㍃㌘程度でも十分に多い量とされるのです。摂取量の問題は、栄養と健康や病気治療・予防に関する個人差が注目されている現在、飲用する本人と科学的な情報を提供すべき担当医師とで決定する問題といえるでしょう。

とはいえ、最大公約数的に効果が出る量と病状・病態・疾患との関係を科学的に明らかにすることは非常に有用です。日本先進医療臨床研究会では、ガン治療や難病治療に対する補助栄養療法の取り組みとして、セレニウムを高濃度に摂取する治療と症例集積研究を開始するとともに、ガンの発症・再発予防や新型コロナウイルス感染症などに対する予防措置としても、セレニウムの高濃度摂取を推奨していく予定です。