日本先進医療臨床研究会代表 小林 平大央
死因第2位の「心疾患」と第4位の「脳血管疾患」の原因は血栓症で合計すると第1位の「ガン」と同数
厚生労働省が発表した「2020年人口動態統計(確定数)の概況」によれば、日本人の死因の第1位は「ガン(悪性新生物)」で1981年以降その順位を保っています。続く第2位は「心疾患(高血圧性を除く)」で、こちらも長くその順位を維持しています。そして、2018年以降は、昨今の日本人の長寿化を反映してランクインした「老衰」が3年連続で第3位です。続く第4位は「脳血管疾患」。2017年まで第3位だった「肺炎」は第5位に後退しています。
こうして見るとガンはやはり怖い病気と思ってしまいますが、別の見方をすることもできます。ガンは、発生した部位や臓器にかかわらずすべてをガンと計上するため、死亡数が多くなります。しかし、例えば第2位の心疾患の約9割は心筋梗塞という血栓症です。また、第4位の脳血管疾患のおよそ4分の3は脳梗塞という血栓症です。これら二つの血栓症を合計すると、ガンとほぼ同数となります。血栓症は突然倒れてときに死に至る病気であり、死に至らなくても重い後遺症が残るなど、ある意味でガンよりも怖い病気といえるのです。
血栓症について詳しく調べていくと、大きな原因としてヒトの進化が関わっていることが分かってきました。数多くの研究から、ヒトはほかのあらゆる生き物の中で最も止血機構が発達していることが明らかになってきたのです。
止血機構とは、ケガなどで血管が傷ついたときに血液が流れ出るのを止めるための防御機構です。高等動物であるヒトにとって血液は生命維持に欠かせない非常に重要な存在であるため、防御機構としての止血機構を発達させたのです。
ところが、あまりにも発達したヒトの止血機構が血栓を作りやすい性質を持つという諸刃の剣ともいえる結果を導き出すことになってしまいました。ほかの実験動物などでは血栓を作ろうと努力してもなかなか作ることができません。高等動物であるヒトだけが高度な止血機構を持った結果、血栓症という病気を起こしやすい動物になったというパラドックスが起こっていたのです。
止血機構は血管の外側だけでなく、血管の内側が炎症などで傷つくことでも働きます。血管の内側には「内皮細胞」と呼ばれる細胞の層があって血管を内側から守っています。内皮細胞が正常であるかぎり止血機構は働かず、血栓ができることはありません。
ところが、内皮細胞に傷ができたり剥がれたりして下のコラーゲン繊維が血管の内側に露出すると、止血機構が働きはじめます。内皮細胞が剥がれた状態を「内皮細胞障害」といいますが、むき出しになった血管壁の部分に血小板がどんどん集まってきて血小板の塊を作ります。さらに、血小板よりも凝固能力の高いたんぱく質である「フィブリン(繊維素)」が集まってきてさらに大きな血の塊を作ります。最後には、血の塊が血管の内腔を塞ぐほどの大きさになって血栓症を引き起こしてしまうのです。
川の流れが速くカーブしているところに水や漂流物が激しくぶつかって長い年月をかけて徐々に堤防をくずしていくように、流れの速い血流(高血圧)や漂流物の多い血液(脂質異常症や老廃物の多いドロドロ血液など)が血管のカーブ地点にぶつかると傷がつきやすくなり、血栓ができやすくなります。また、動脈と違って血流の遅い静脈でも血流が停滞しやすく、血液の粘度が高いために血栓ができやすくなります。
損傷した血管は血小板とフィブリンによって修復が行われますが、血管の内側に作られた血の塊がそのままになっていたらどうなるでしょう。血管が血栓によって塞がっているままの状態ですから、血液はうまく流れず、最悪の場合、血栓症になってしまうのです。
そこで、再び血液が流れるようにするため、血栓を溶かす「線溶機構」というしくみが働きはじめます。線溶機構のしくみの主役は「プラスミン」というフィブリンを溶かす酵素です。プラスミンは傷口を塞いでいた血栓を溶かすことで、塞がってしまった血管を正常な状態に戻すのです。このように止血機構と線溶機構がセットになって働くことで、ヒトは出血を最低限に食い止めるとともに血流を回復させることができるのです。
これまでの研究で25歳はお肌だけでなく血管の曲がり角でもあり、25歳を過ぎた頃から血栓ができやすくなることが分かっています。血栓を作らないような生活を心がける必要性はすでに20代半ばから始まっているのです。
また、一度血栓症を起こした方にとって再発は命取りです。一度発症したということは血栓ができやすい体質になっていると考えられます。血液をいつもきれいにしておくことが大切ですし、血管の老化を少しでも止める必要があります。一度発症した後はそれまでの食習慣や運動習慣を見直し、二度と発症しないようにしなければなりません。
血栓症の最も有効な予防措置は、体内の血栓溶解能力を上げるためにフィブリン溶解能力の高い成分を摂取することです。宮崎医科大学名誉教授の美原恒先生が食用ミミズの内臓から発見した「ルンブロキナーゼ」という酵素は、血栓治療薬のウロキナーゼの8.7倍も酵素溶解能力が高いことが実験で明らかになっています。また、これまでの臨床試験で、心筋梗塞や脳梗塞、動脈硬化の原因とされる血液中のフィブリンを溶解する高い効果が確かめられています。
さらに、多数の医師からルンブロキナーゼの摂取によって効果があったとさまざまな病気の治癒・改善例の報告があります。それらの病気は、心臓病・脳卒中・動脈硬化のほか、閉塞性動脈硬化症、高血圧、糖尿病、脂質異常症、バージャー病、腎血管性高血圧、慢性腎臓病、正常眼圧緑内障、ED(勃起不全)、老眼、認知症、歯周病、褥瘡、発達障害、下肢動脈狭窄症、下肢静脈瘤など、非常に多岐にわたっているのです。
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