プレゼント

脳に多くの負荷をかける「数えキョロ踏み」に挑戦

Dr.朝田のブレインエクササイズ!

メモリークリニックお茶の水理事長 朝田 隆

「ながら動作」である「デュアルタスク」は、脳に多くの負荷をかけて刺激するおすすめの運動です。今回ご紹介するのは、三つ以上の動作を重ねたもの。朝田先生も簡単にはできなかった超難問です。

二つの動作で脳を混乱させて刺激する「デュアルタスク」を強化した超難問を紹介

[あさだ・たかし]——筑波大学名誉教授。1982年、東京医科歯科大学医学部卒業。同大学神経科、山梨医科大学精神神経科講師、筑波大学精神神経科学教授などを経て現職。数々の認知症の実態調査に関わった経験をもとに、認知症の前段階からの予防・治療を提案している。著書に『その症状って、本当に認知症?』(法研)など多数。

近年、ようやく「デュアルタスク」という言葉が知られるようになってきました。デュアルタスクとは「二つのことを同時に行うこと」、つまり「ながら動作」のことです。

デュアルタスクの例としては、歩きながら尻取(しりと)りをするなど、運動と知的活動を組み合わせたものがあります。また、歩きながら指揮棒を振るなど、二つの動作を組み合わせたものもあります。二つの動作を同時に行う混乱が脳への刺激になります。

さて、今回はいつもとは趣向を変え、実際にデュアルタスクを体験していただこうと思います。今回ご紹介する「数えキョロ踏み」は、デュアルタスクを取り入れたプログラムを開発・提供しているスポーツジム会社「KKルネサンス」の担当者に作っていただいたものです。

「数えキョロ踏み」に挑戦!

まずはレッスン1に挑戦し、脳の混乱を実感してみてください。私自身もやってみましたが、簡単ではありません。それどころか、超難問だと痛感しました。そもそも、ルールを覚えることからして容易ではありません。

ここで、数えキョロ踏みの認知機能に対する効果に対して分析してみましょう。数を数えながら足踏みして顔を横に振るためには、運動面では「声出し」「足踏み」「顔の横振り」という三つの動作をこなさなければなりません。さらに、知的面では「3の倍数のとき」「顔の横振りは下ろしている足と同じ方向」というルールを覚える必要があります。数えキョロ踏みは、デュアルタスクをはるかに通り越した「多重課題(マルチプルタスク)」といえるのです。一回や二回の挑戦ですぐできた人は、抜群の運動神経の持ち主です。

デュアルタスクを行うと、脳の認知機能をつかさどる部分に負荷がかかり、一つの動作だけを行う場合よりも脳がほかに割く余力がなくなって運動能力が低下します。デュアルタスクを繰り返し行うことで脳に負荷がかかれば、脳が鍛えられて成長していくはずです。日常生活でいうならば、左右で違う動きをするような慣れない動きは「脳の混乱」を介して脳を活性化させることにつながります。

私自身ができないので眉唾(まゆつば)ものといわれてしまうかもしれませんが、最近ではデュアルタスクによる認知症の予防に関する論文も出ています。レッスン1に慣れてきた後はレッスン2に挑戦してみましょう。大いに混乱して脳にいい刺激を与えてください。

朝田隆先生が診療されているメモリークリニックお茶の水の連絡先は、
〒113-0034 東京都文京区湯島1-5-34 東京医科歯科大学医科同窓会 お茶の水医学会館4階 ☎03-6801-8718です。