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乳がん対策のカギは早期発見・早期治療!毎月のセルフチェックが大切です

がん

成城松村クリニック院長 松村 圭子

乳がんは女性のがんの罹患率上位を占め発症には女性ホルモンのエストロゲンが関与

[まつむら・けいこ]——1995年、広島大学医学部卒業。同大学附属病院などの勤務を経て、2010年に成城松村クリニックを開院。日本産科婦人科学会専門医。携帯サイト・アプリ『ルナルナ』の顧問医を務める。著書に『これってホルモンのしわざだったのね 女性ホルモンと上手に付き合うコツ』(池田書店)、『10年後もきれいでいるための美人ホルモン講座』(永岡書店)など多数。

10月はピンクリボン月間です。乳がんの早期発見・早期治療の大切さを伝えるピンクリボン運動は、1980年代のアメリカで始まりました。乳がんで亡くなった患者さんのご家族が、「このような悲劇が繰り返されないように」と願いをこめて作ったリボンがきっかけと伝えられています。

2020年12月に国際がん研究機関(IARC)が発表した統計調査によると、乳がんは女性にとって最も発症頻度が高いがんと分かりました。女性が発症する新規がんの24%、がんによる死亡の15%を乳がんが占めていることが明らかになったのです。

日本でも女性のがんにおける乳がんの占める割合は高く、毎年のように罹患(りかん)者数の上位となっています。国立がん研究センターの統計によると、2020年の乳がん罹患者数は女性のがんの中で最も多く、九万人以上(約20%)と報告されているのです。

乳房は、皮膚と脂肪組織、(にゅう)(せん)組織で構成されています。乳がんは乳腺を構成している(しょう)(よう)(にゅう)(かん)の細胞にできる悪性腫瘍(あくせいしゅよう)です。乳がんの多くは乳管から発生します。

治療法としては、外科手術、抗がん剤治療(化学療法)、放射線治療の三つが主となります。外科手術には、①乳房切除手術、②乳房温存手術、③乳房切除手術+再建術の三つがあります。女性にとって乳房にメスを入れることは、精神的に大きな負担となります。どの治療法を選ぶかは、最終的に患者さんの判断となります。また、乳がんの治療は再発リスクに備える点も考慮する必要があります。治療法を検討する際は、専門医と相談しながら、最善の選択を目指してください。

乳がんの発生要因として、閉経後の肥満や飲酒習慣が挙げられます。特に乳がんの発症に関連が深いのが、女性ホルモンの一つであるエストロゲンです。エストロゲンは女性の体を作るための重要な働きをするホルモンで、分泌(ぶんぴつ)されている期間が長ければ長いほど乳がん発症のリスクが高まることで知られています。

また、乳がんの発症には遺伝の影響があるとも考えられています。母親や姉妹など、二親等以内で乳がんの経験者がいる場合は、乳がん発症のリスクが比較的高いとされています。

とはいえ、遺伝性の乳がんを過度に恐れることはありません。遺伝性の乳がんは、乳がんの10%前後と、決して高い数字ではありません。定期的な乳がん検診で早期発見ができれば、十分対処が可能といえます。

乳がんは早期の発見と治療が何より大切で乳房のしこりやくぼみ、分泌物には要注意

出典:国立がん研究センターがん対策情報センター[がん登録・統計]を一部改変

乳がんは、早期発見をすれば比較的治る可能性の高いがんとして知られています。定期的にマンモグラフィー(乳房X線撮影装置)検査やエコー(超音波)検査を受けるようにしてください。乳がん検診は、40代以上の女性に対し、2年に1回の受診が推奨されています。二親等以内に乳がんを発症した人がいる場合は、40歳未満でも検査を受けるといいでしょう。

日常的にはセルフチェックで乳房の状態を確認する習慣をつけましょう。乳がんが疑われる症状としては、乳房のしこり、くぼみ、ただれ、わきの下のしこりのほか、(にゅう)(とう)から出る分泌物などです。症状の中で多いのが、しこりです。しこりが約5㍉~1㌢大になると、触れて分かるようになります。入浴時は乳房の状態を確認しやすいので、セルフチェックに最適です。

乳房のしこりを感じても一人で悩みつづけ、1~2ヵ月以上たってから受診する患者さんは少なくありません。乳がんはもちろん、がん治療は一日でも早く始めることが大切です。女性のシンボルといえる乳房のがんは、よりていねいにケアすることで心身の健やかさを取り戻すことにつながります。

現在の医療技術は日々進化しています。乳がんを怖がりすぎても侮りすぎてもいけません。正しい知識を身に着けて、冷静に対処するようにしましょう。