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脊柱管狭窄症の痛みの原因は神経の圧迫と血流の悪化

整形外科

久我山整形外科ペインクリニック院長 佐々木 政幸

脊柱管狭窄症は50代以降に急増していて上体を反らして痛みが悪化する場合は要注意

[ささき・まさゆき]——1995年、昭和大学医学部卒業後、慶應義塾大学医学部整形外科学教室に入局。済生会宇都宮病院、国立療養所村山病院(現・国立病院機構村山医療センター)、東京都保健医療公社大久保病院などでの勤務を経て、2010年より現職。日本整形外科学会認定整形外科専門医・脊椎脊髄病医・スポーツ医・運動器リハビリテーション医、日本脊椎脊髄病学会認定脊椎脊髄外科指導医。NPO法人『腰痛・膝痛チーム医療研究所』副理事長。

原因を特定できる「特異的腰痛」の代表といえるのが、(よう)()(せき)(ちゅう)(かん)(きょう)(さく)(しょう)(以下、脊柱管狭窄症と略す)と(よう)椎椎(つい)(かん)(ばん)ヘルニア(以下、椎間板ヘルニアと略す)です。脊柱管狭窄症と椎間板ヘルニアは似たような症状ですが、上体を反らすことで悪化する場合は脊柱管狭窄症の可能性が高いと考えられます。

脊柱管狭窄症と椎間板ヘルニアに伴う、神経の圧迫によって発生する足腰の痛みやしびれなどの症状を「()(こつ)(しん)(けい)(つう)」といいます。坐骨神経は人体でいちばん長くて太い(まっ)(しょう)神経で、腰から骨盤、お(しり)、太もも、ひざの裏辺りを通って、足先まで伸びています。

脊柱管狭窄症による坐骨神経痛は、神経が全体的に圧迫されるため、左右どちらかの足腰に出る場合もあれば、左右両方に出る場合もあります。一方、椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛は、ヘルニアの飛び出す方向が左右に偏っている場合が多く、神経が左右どちらか圧迫されている側の足腰にだけ出ることが少なくありません。ただ、ヘルニアの飛び出す方向が正中の場合は、左右両方に出ることもあります。

50代以降に急増している脊柱管狭窄症は、背骨の中を通る脊柱管が狭くなって神経を圧迫するために起こる疾患です。背骨は24個の(つい)(こつ)が首から腰まで積み重なって構成されています。椎骨の中央には穴が開いており、管状になっていることから「脊柱管」と呼ばれています。脊柱管には、脳からつながる神経の束((せき)(ずい)()()神経)、椎骨と椎骨をつなぐ(こう)(じゅう)(じん)(たい)(おう)(しょく)靭帯が通っています。

変形した背骨のゆがみに対して、体は修復・補強を試みます。すると、背骨が変形したり黄色靭帯が肥厚したりして、脊柱管が狭くなってしまうのです。脊柱管が狭くなると、脊柱管の内部を通る神経の圧迫や神経周辺の血流障害による酸素不足が起こり、足腰の痛みやしびれなどの症状が引き起こされます。

椎間板ヘルニアは、背骨の椎骨と椎骨の間でクッションの役割を果たしている椎間板が外にはみ出し、神経を刺激する疾患です。脊柱管狭窄症とは異なり、症状が突然現れることが少なくありません。椎間板はとても繊細な組織で、老化は20代から始まるといわれています。

椎間板に大きな負担がかかると、周辺部分の薄い軟骨が層になった「(せん)()(りん)」と呼ばれる、丈夫で柔軟性のある組織が壊れて、中心部から軟らかい「(ずい)(かく)」が飛び出します。すると、髄核から炎症物質が漏れ出し、腰椎を通る神経に炎症を引き起こして椎間板ヘルニアを発症するのです。

脊柱管狭窄症が悪化すると歩ける距離が短くなって日常生活が制限され活動量も低下

当てはまる項目の合計点数が13点以上の場合は、腰部脊柱管狭窄症のおそれがあります。早めに病医院で医師の診断を受けましょう
出典:『日本腰痛学会雑誌Vol.15』「腰部脊柱管狭窄の診断サポートツール」をもとに作成

脊柱管狭窄症で起こる代表的な症状に「(かん)(けつ)(せい)()(こう)」があります。間欠性跛行は、歩いたり立ったりしていると、足腰に痛みやしびれ、脱力感などが生じる症状です。脊柱管狭窄症が悪化すると間欠性跛行のせいで歩ける距離がしだいに短くなり、日常生活が制限されたり活動量が低下したりして足腰がさらに弱まってしまうという悪循環に陥るおそれがあります。

では、なぜ間欠性跛行が起こるのでしょうか。歩行時には、全身で酸素が必要になります。呼吸によって体内に取り込まれた酸素は、血流に乗って全身に届けられます。ところが、脊柱管狭窄症が起こると、脊柱管内の血管が圧迫されてしまいます。すると、神経周囲の血流が悪くなって酸素が末端に伸びる神経組織にまで届かなくなり、足腰の痛みやしびれが生じるのです。

間欠性跛行の症状を緩和するには、前かがみの姿勢で休むことが有効です。前かがみの姿勢を取ると、脊柱管内の圧力が低下して血流が改善します。さらに、休むことで全身の酸素の消費が減り、神経組織に酸素が十分に行き渡って足腰の痛みやしびれが軽減するのです。

足腰の痛みやしびれといったさまざまな症状を悪化させないためには、日常生活での習慣や動作を見直すことが大切です。ネコ背や中腰などの姿勢は、腰に大きな負担をかけるので避けることをおすすめします。また、喫煙は血流を悪化させる原因になるため、禁煙を心がけましょう。