365調査隊
東洋医学を代表する治療法である鍼灸。伝統医学である一方で、非科学的という印象が拭えません。果たして科学的根拠はあるのでしょうか……。鍼灸に関するウソ・ホントについて、調査隊が真相に迫ります。
鍼灸は世界各国で研究が進む有効な治療法
東洋医学では昔から人体のツボを刺激する手法が取られてきました。特定の部位を刺激することで内臓の調子がよくなったり、車酔いしにくくなったりと、ツボにはさまざまな効果があるとうわさされています。
しかし、ほんとうにそうした効果が見込めるのか、半信半疑の人もいるのではないでしょうか。ツボの科学的根拠について、花田学園日本鍼灸理療専門学校附属鍼灸院東洋医学研究所主任研究員の菊池友和先生に聞いてみました。
「鍼灸の科学的根拠は日本や関西の医学会でも通用するレベルになってきていると思います。というのも、鍼だけに限ってみても、年間に400本近い論文が発表されているからです。ちなみに、こうして研究が進められるようになったきっかけは、1972年に当時のリチャード・ニクソン米国大統領が訪中した際、中国の医療現場で鍼による麻酔が行われていたことに衝撃を受けたのが発端だといわれています」
菊池先生によれば、そんな東洋医学の実態を『ニューヨーク・タイムズ』が大々的に報じたことから、西洋でも鍼灸の研究が一気に加速したのだそう。
興味深いのは、この後に「鍼灸の治療を受けているのは西洋医学の知識のない人たちである」という仮説を立てて検証調査が行われたのですが、結果はむしろ、医療リテラシーの高い人々が西洋医学の補完医療として鍼灸を受療しているケースが多かったことです。
そして、今では肩こりや腰痛をはじめとするさまざまな慢性痛に対して、「世界各国で数多くの臨床試験が行われ、鍼灸の有効性が示されています」と菊池先生は明言します。では、なぜツボを刺激すると健康効果が得られるのでしょうか?
「そのメカニズムについても研究が進められていて、鍼やお灸の刺激が末梢神経に伝わり、脊髄を経由して脳に到達し、私たちの体に備わっている鎮痛機能に働きかけている、ということが現状では判明しています」
また、鍼灸が同様のメカニズムで免疫細胞の働きを活性化させることで、いわゆる「未病」が悪化して「病気」に発展するのを防いでくれる効果も認められていると菊池先生は話します。つまり、鍼灸治療は健康長寿に大いに貢献するということです。
「鍼に対して、痛みなどのリスクを恐れる人もいるかもしれません。しかし、一般的な日本の鍼は注射針の5分の1から10分の1ほどの細さで、痛みがほとんどありません」
鍼灸に興味があるという人は、安心して試していただければと思います。