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その5:命を粗末にする人

大野秀隆先生の「長寿の哲学」

理学博士 大野 秀隆

[おおの・ひでたか]——1930年、東京都生まれ。1953年、東京薬科大学卒業。東京大学医学部薬学科薬品分析化学教室で研究を重ねる。薬剤師。理学博士。画期的な発想から開発した悪臭対策エキス(OS液)が国内外のメディアで「消臭革命」として報道される。以後も研究を重ね、あらゆる世代を対象とした悪臭問題の解決に取り組んでいる。

「自分の体は自分が一番よく知っている」という人がいます。今日は調子がいい、悪いといった感覚は、その人だけが感じるものです。他人から見た判断のほうが正しいことは、なかなかありません。ですから、自覚症状に関する限り、「自分が一番よく知っている」のは、当たり前の話なのです。

ところが、自覚症状だけで体の状態がすべて分かるかというと、そうではないから困るのです。あらゆる病気が自覚症状だけで早く分かるのであれば、「手遅れ」になることはありません。病気になっても自覚症状が現れない、どの部位も臓器もなんともないと思い込んでいる人の体の中で、すでに病気が燃え広がっていることは多いものです。結局、自分の体は自分ではなかなか分からないのです。

人はいつか死ななければなりません。しかし、どうせいつか死ぬのなら、天寿を全うして楽に死にたいと思います。つまり、老衰という形で大往生できれば申し分のない人生です。ところが、死亡診断書に「老衰」と書いてもらえる人は、10人に1人もいません。たいていの人は病気か事故で亡くなるのです。

自殺・他殺含めて事故で亡くなるのは、死亡者全体の10分の1もありません。亡くなる理由で最も多いのが病気です。病気で亡くなる人のうち、約半数が「三大成人病(悪性新生物・心疾患・脳血管疾患)」が原因です。この3つの病気から逃れることができれば、病気で苦しみながら亡くなる人は半分に減り、老衰で天寿を全うできる人が増えるのです。

生活習慣病が“命取り”になる理由は、いったいいつから病気が忍び込んだのか、いつからそんなことが起こったのか、まったく分からないからです。つまり、病気になっているのに自覚症状がないのです。病気になっているのに「私は健康」「自分は大丈夫」と思い込んでいるから命取りになるのです。

「痛くもかゆくもない」「だるくもつらくもない」「どこもなんともない」。そんな人でも病気が発生していることがあります。悪くなり方が早いのか、スピードが遅くても、ある程度進行すれば症状は必ず出てきます。しかし、そのときはすでに手遅れなのです。

本当は死ぬのが嫌なのに、妙に強がりを言う人がいます。病気なると大騒ぎをするくせに、自覚症状がないときは大見栄を切る人です。そういう人の中に、命を粗末にしている人が多いのです。「うっかり健康診断を受けて病気の告知を受けたくない」という気持ちがあるために、かえって強がりを言って自分の心をごまかしているのでしょう。そのような人は、結果的には命を粗末にすることになります。