日本先進医療臨床研究会理事長 小林 平大央
急速に悪化する「ターボガン」や「新型コロナワクチン後遺症」の撃退法とは?

近年、ガンが急速に進行してあっという間にステージⅣに至る「ターボガン」と呼ばれる症例が数多く報告されています。また、「新型コロナワクチン後遺症(以下、ワクチン後遺症と略す)」と呼ばれる、長期にわたる倦怠感、ブレインフォグ(頭の中にモヤがかかったようにぼんやりとした状態)、動悸、体の痛みなど、さまざまな症状に悩む方々の声が聞かれるようになりました。
このような状況の中で、日本先進医療臨床研究会の顧問であり、理論医学研究会の会長である新井圭輔先生(あさひ内科クリニック院長)が提唱するある併用療法が注目を集めています。その併用療法とは「スパイクたんぱく(新型コロナウイルスがヒト細胞に侵入するために必要なたんぱく質)」と「ACE2受容体(アンジオテンシン変換酵素2)」との結合を阻害する薬剤(例えば「イベルメクチン(抗寄生虫薬)」)と、必須ミネラルである「亜鉛」の栄養補給用のサプリメントを組み合わせるものです。
これらの素材の併用による治療で、ターボガンやワクチン後遺症などの原因不明の病状や症状が劇的に改善するケースがあるとの報告が聞かれるようになったのです。一体、私たちの体の中でなにが起こっているのでしょうか。
異変の始まりは、私たちの体を守る免疫システムの変調にあります。最新の研究によれば、新型コロナワクチン(mRNAワクチン)の接種後に体内でスパイクたんぱくが大量かつ持続的に産生されるケースが世界中で報告されています。
通常、体内に異物(抗原)が入ると免疫システムはそれを攻撃・排除する「抗体」を作ります。しかし、抗原が長期間存在しつづけると、免疫システムは過剰な炎症反応を抑えるために応答の質を変化させることがあります。
ここで注目されるのが「IgG4抗体」です。IgG4抗体は、アレルギー反応を抑制するなど、免疫応答を穏やかにする「免疫寛容」という働きを担う特殊な抗体です。しかし、IgG4抗体が過剰に産生されると、ガン細胞やウイルスなど、本来排除すべき異常な細胞や外敵に対する攻撃力も弱めてしまう、いわば「免疫低下」の状態に陥ることが分かってきたのです。
次に焦点を当てるべきは、細胞の表面に存在するACE2受容体です。ACE2受容体は新型コロナウイルスが細胞に侵入する際の「足場」となることが知られていますが、本来は、血圧の調整や炎症の抑制、組織の保護など、体の恒常性を維持する極めて重要な司令塔としての役割を担っているのです。
しかし、新型コロナウイルスのスパイクたんぱくはACE2受容体に強く結合する性質を持っており、その働きを阻害してしまいます。スパイクたんぱくがACE2受容体に結合してしまうと、ウイルスが侵入しやすくなるだけではなく、ACE2受容体の本来の機能である体の恒常性の維持が妨げられてしまうのです。
そのため、スパイクたんぱくの持続的な存在は、免疫低下とACE2受容体の機能不全という二重の打撃を体に与える可能性があります。この絶体絶命の状況を救う第1の矢として登場するのが、イベルメクチンなどの抗寄生虫薬です。
イベルメクチンはもともと抗炎症作用などを有する抗寄生虫薬ですが、近年の研究でスパイクたんぱくがACE2受容体へ結合するのを物理的に阻害する作用があることが分かってきました。
しかし、ここで1つの課題が残ります。それは、抗寄生虫薬がスパイクたんぱくとACE2受容体の結合をじゃましても、持続的にスパイクたんぱくが産生されつづける限り、本来あるべきACE2受容体の一定数はどうしてもスパイクたんぱくによって占有されてしまうという可能性です。
そこで、第2の矢として極めて重要な役割を果たすのが、必須ミネラルである亜鉛です。実は、ACE2受容体はその構造と機能を正常に保つために亜鉛を必須とする「亜鉛酵素」なのです。また、酵素はたんぱく質でできていますから、当然良質なたんぱく質も重要です。つまり、ACE2受容体という司令塔を新たに作り出すための「材料」として、亜鉛とたんぱく質が不可欠ということです。

たんぱく質は「オートファジー(自食作用)」という体内のサルベージ(回収・再利用)機構によってある程度再生産が可能なため、外部からの補給がなくても一定期間は体内で賄えますが、亜鉛はそういうわけにはいきません。体内に亜鉛が不足していると、たとえ抗寄生虫薬で既存のACE2受容体を守ったとしても、スパイクたんぱくによって機能不全に陥ったACE2受容体を補充したり、全体の数を増やしたりすることができません。これは、兵士の補充ができない軍隊のようなものです。
逆に、サプリメントなどで亜鉛を十分に補給すれば、体は新しいACE2受容体を効率よく増産する体制を整えることができます。スパイクたんぱくによってふさがれているACE2受容体があったとしても、それを補って余りある数の新品のACE2受容体を細胞表面に確保することが可能になるのです。
つまり、抗寄生虫薬は防御の役割でスパイクたんぱくの結合をブロックし、既存のACE2受容体を守ります。一方、亜鉛は補充・増強の役割で、新しいACE2受容体の産生を促進し、全体の機能的な母数を増やすことで、体内の恒常性の維持や炎症抑制を行っているのです。
この「防御」と「補充・増強」という2つの戦略が組み合わさることで、強力な相乗効果が生まれると考えられます。抗寄生虫薬が敵の攻撃を防いでいる間に、亜鉛が供給されて次々と新しい兵士(ACE2受容体)が戦線に投入されます。すると、スパイクたんぱくによる悪影響を最小限に抑え込み、体本来の恒常性の維持機能を力強く、かつ迅速に回復させることができるのです。さらに、ACE2受容体の機能が回復すれば炎症が抑制され、免疫システム全体のバランスも正常化に向かうでしょう。
現時点では、これらの現象に対する考察は単なる仮説です。しかし、今後のさらなる研究によって仮説がさらに検証され、多くの人々を救う新たな道筋が開かれるのではないかと期待されています。
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