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涙で心のデトックス!〝涙活〟でストレス解消!

ニッポンを元気に!情熱人列伝

感涙療法士、公認心理士 吉田 英史さん

涙を流して泣いた後、なぜか気持ちがすっきりして落ち着いたという経験はありませんか?涙を流すことの健康効果について研究を重ね、普及にあたっているのが感涙療法士の吉田英史さん。「涙活」と名づけた独自のストレス解消術が、老若男女を問わず大きな注目を集めています。

涙を流して泣く生徒ほど立ち直りが早いことに気づいて「涙の力」を実感

[よしだ・ひでふみ]——1975年、神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学で心理学と教育学を学び、同大学大学院で心理学的見地から健康教育などの社会教育を研究。高齢者福祉施設や学校勤務を経て、涙の健康効果に着目し、2013年から「涙活」をテーマとした活動を開始。感涙療法士を創設し、企業や自治体で講演会を展開。「なみだ先生」のニックネームで涙の健康効果の普及に尽力している。

「失われた30年」という表現をはじめ、「日本に元気がなくなった」という会話が交わされる機会が増えています。特に、戦後の高度経済成長期やバブル経済期を経験した世代にとっては、現在、そしてこれからの日本を考えると不安が尽きないのではないでしょうか。現実的に現在の日本では、少子化問題をはじめ、経済・社会・教育・安全保障など、さまざまな問題が山積しています。活力を失いつつある日本社会の中で、ストレスを感じている人は多いことでしょう。

ストレス社会に打ちつために多くのメソッドが紹介される中、大きな注目を集めているのが「涙の力」。涙を流すことで心身をリフレッシュさせる「るいかつ」が話題を集めています。涙活を提唱する「なみだ先生」こと、よしひでふみさんにお話を伺いました。

「私が提唱している『涙活』とは、意識的に涙を流すことでストレスを解消し、心身を整える健康活動です。私は大学で心理学と教育学を学んだ後、大学院でマネジメント学を専攻しました。教育と仕事、ひいては人間の活力やパフォーマンスが心理状態に大きく左右されることを学んできました。その際に役立つのが〝涙の力〟なんです」

大学院を修了した後は、高校教員となった吉田さん。教師として多くの生徒と触れ合ったことが、涙活を始めるきっかけの1つになったと話します。

「高校で教員をしている時に、不思議に思うことがありました。1人ひとりの生徒の個性はさまざまですが、よく泣く生徒ほど落ち込んだ時からの立ち直りが早く、心身の回復力も強いと感じたんです。嫌なことがあってもしっかり泣いた後ですっきりとした顔を見せる生徒の様子を見ながら、涙にはストレスを解消させる力があるのではないかと思うようになりました」

生徒さんたちの様子から、涙の力に魅了されていった吉田さん。その後、精神科の第一人者として知られるとうほう大学医学部のありひで名誉教授との出会いを機に、本格的に涙の研究に取り組みました。

「私たちの自律神経は、活動的な時に優位になる交感神経と、休息時に優位になる副交感神経があります。それぞれの自律神経がバランスよく保たれることで健康維持が図られますが、現代のストレス社会では、多くの人が交感神経のほうが優位な状態で過ごしています。有田先生によると、涙を流すことは、緊張状態といえる交感神経が優位な状態から、脳がリラックスする副交感神経が優位な状態へと切り替わる役割があるとのことです」

吉田さんは自治体や企業、学校などでの講演を通じて、新しいストレス解消法としての涙活を提唱している

副交感神経を優位にする手段として最も知られているのが「睡眠」です。確かに、質のいい睡眠を取ってぐっすり寝た後は、心身ともにすっきりし、心地よい解放感があります。

しかしながら、不規則な生活を送りがちな現代人にとって、質のいい睡眠を取ることはなかなか難しいもの。「ぐっすり眠れない」「深い眠りに就けない」というストレスが交感神経を活発にさせて、さらなるストレス過多になってしまうこともあるそうです。

「そこで私が提唱するのが涙の力です。涙を流すことは副交感神経を活発化させるので、涙を流した後に気持ちが落ち着いたり、すっきりとした解放感を覚えたりするのはそのためです」

有田名誉教授の見解を聞きながら、涙を流す生徒とストレスから解放される事実が点と点でつながったという吉田さん。その後、涙をテーマにした健康活動の展開を決意しました。2013年のことでした。

「当時はにんかつしゅうかつといった言葉が出はじめた時期だったことから、私の活動も一般の人になじんでもらうために涙活と名づけました。有田先生と取り組んだ涙のストレス解消効果の理論をもとに、まずは小さな会場でセミナーや講演会を開催するようになりました」

吉田さんが開催する涙活セミナーや講演会の特徴は、涙の効用について語ることはもちろん、会場に集まった人たちに涙活を実践してもらうことです。「悲しい出来事がないのに泣けるの?」と、最初は心配する参加者もいるそうですが、吉田さんの絶妙な涙活プロデュースによって、セミナー中に多くの参加者のほおに涙がつたうそうです。

ストレス解消の涙活は「情動による涙」が最適で共感脳を刺激する

吉田さんによると、涙を流す理由には、①反射の涙(目にゴミが入った際などに反射的に出る涙)、②基礎分泌ぶんぴつの涙(目の乾燥を防ぐために分泌される涙)、③情動の涙(喜怒哀楽によって心が動かされ、脳が刺激を受けた時に流れる涙)があるとのこと。中でも、ストレス解消に最も効果的なのが、情動による涙。情動によって脳の「内側ないそくぜんとうぜん」(共感脳)が活発になると、副交感神経が優位な状態となって緊張状態がリセットされるのです。実際に、有田名誉教授がタマネギの刺激によって反射的に涙を流したグループと、映画を見て情動の涙を流したグループの涙に含まれるコルチゾール(ストレスホルモンの1つ)の量を分析したところ、情動の涙を流したグループの数値が減少していたそうです。

「情動の涙は、悲しい出来事よりも、感動によって流す涙が望ましいです。『そんなに簡単には感動できない』と思われるかもしれませんが、個人それぞれに〝泣きのツボ〟があります。私が主宰する涙活セミナーでは、『なみだ作文』や『泣き言セラピー』といった企画を通じて泣きのツボを見つけていただきます。感動的な映画や家族との思い出など、泣きのツボは人それぞれですが、自分の泣きのツボを見つけることは人生の振り返りにも役立つと評判です」

情動による涙は多いほどリラックス効果につながると話す吉田さん。ストレス解消には、目からあふれ出るほど涙を流すことが理想的と話します。

「私たちの体は本来、受けたストレスを抱え込まずに解放するようにできているはずです。しかしながら、大人になるにつれて泣く機会は減っていきます。人前で泣いてはいけない、泣き顔を見せるのは恥ずかしいという思い込みがあり、泣きづらい状態に陥っているのです。私が主宰する涙活セミナーに参加した人の中には、10年、20年以上泣いたことがないと話す人もいるほどです。ストレスを抱えた時、あなたの心は泣きたがっているはずです。体の声をそのまま聞いて涙を流すことこそ、ストレス解消に最も近い早道と考えています」

涙活の舞台は多種多様!自治体や企業とのコラボ企画が大評判

日頃から「泣いてはいけない」と感情を抑え込んでいる人こそ、涙の力を知ってほしいと話す吉田さん。講演会やセミナーのほか、最近では新しい試みを続々と展開して好評を博していると話します。

鎌倉武士たちの栄枯盛衰物語や美しい景観などで構成される「鎌倉涙活ツアー」は、世代を超えて大評判!

「涙活の新しい試みとして企画したのが、ヘルスツーリズムの一環として実施した鎌倉かまくら涙活ツアーです。私の地元・神奈川県鎌倉市はかつて鎌倉幕府が置かれた歴史ある街の1つですが、歴史にちなんだ哀しい物語がたくさんあります。例えば、鎌倉幕府の執権・ほうじょうたかときは、1333年に討幕軍のにっよしさだに攻められ、800人以上の一族と逃れたとうしょうで自害したと『たいへい』に記されています。こうした悲劇的なエピソードを鎌倉のふうこうめいな景色とともに知ることで、五感を刺激します。悲劇的な結末に涙を流しながら、鎌倉の海や街を一望できる高台に立つと、心が穏やかになり、涙がこぼれるほどの美しい風景を堪能することもできます。歴史と自然を融合させることで感情を動かし、心身の安定を図るのがこの涙活ツアーの目的です。地元出身の私ならではの泣きスポットもご用意しています」

そのほかにも、涙活とのコラボレーションを次々と展開する吉田さん。ヒット企画の1つとして、婚活と涙活を合わせた「るいこん」を挙げてくれました。

「結婚を希望する人が理想の相手を探す『婚活』は、涙活と相性がいいんです。私は『涙婚』と名づけた新しい婚活イベントを実施しています。通常の婚活サービスは相手の学歴や年収といった条件面を重視する傾向にありますが、『涙婚』は人間性に絞った結婚活動です。喜怒哀楽の感情に基づいて涙を流すツボが分かれば、学歴や収入を超えた相手の人間性や価値観を知ることができます。もし、泣きのツボが一致したら、交際候補との距離は一気に縮まるはずです。これまで開催した涙婚イベントを通じて30組ほどのカップルが誕生し、うち10組が〝涙をご縁〟にめでたくゴールインされています」

そのほかにも吉田さんは、全国各地で自治体や企業との涙活コラボレーションを展開。一例を挙げると、徳島県では「世界初!プラネタリウム涙活イベント」と題して、直径20㍍のドームに投影された約3万8000個もの星を見上げながら、泣ける名曲を聴くイベントが話題を集めました。広島県では「泣ける!広島県」というコピーで「感動号泣旅」「人情ホロリ旅」など、広島県内を巡る6つの泣ける旅を提案。東京では「涙泉るいせん(涙活×温泉)」と題した天然温泉とのコラボレーションで、温泉でリラックスした後に涙活でストレス解消を提唱するなど、独創性のある涙活イベントを展開しています。直近のイベントでは、11月7日を「いい涙の日」として、大丸松坂屋だいまるまつざかや百貨店が提供するオンラインセルフケアサロンでオンライン涙活サービスを提供。時間と場所を選ばない新しい涙活が注目を集めているのです。

「大人でもご高齢の方でも泣いていいんです。もっと元気になるために、1人でも多くの人に涙を流していただきたいと思います。高齢者施設での涙活セミナーも好評です。全国どこにでも伺いますので、ぜひお声かけください」