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ツボ刺激で緑内障の悪化を防ごう

眼科

帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科准教授 大山 良樹

東洋医学のツボ刺激で緑内障・黄斑変性の対策に欠かせない網膜の血流がアップ

[おおやま・よしき]——大阪産業大学経営学部、明治鍼灸短期大学鍼灸学科卒業。明治鍼灸大学助手・講師を経て、2008年から現職。専門は眼科疾患に対する臨床的鍼灸の研究。日本東洋医学会、日本健康科学学会所属。

私の専門は(しん)(きゅう)です。特に、眼科領域の疾患に対する鍼灸の研究を続けています。この記事では、中高年になると発症しやすくなる(りょく)(ない)(しょう)()(れい)(おう)(はん)(へん)(せい)(以下、黄斑変性と略す)の患者さんにおすすめしたいツボ療法について解説しましょう。

緑内障は「視神経が弱って視野が狭くなり、ものが見えにくくなる病気」で40歳以上の20人に1人が発症するといわれています。一般的に緑内障は、眼圧が高くなって視神経に悪影響を及ぼすことで起こるといわれますが、日本人の緑内障患者の多くは、眼圧が基準値(10~21㍉水銀柱)の正常眼圧緑内障です。そのため、緑内障は眼圧のみならず、遺伝をはじめとするほかの要因によっても起こると考えられています。日本人は緑内障における正常眼圧緑内障の割合が高く、米国の約4倍といわれています。特に、①40歳以上(性差はない)、②喫煙者、③マイナス6.0以上の強度近視の人は、より発症しやすいと考えられています。

私たちがものを見るときは、まず、目の中に入った光が目の奥にある「(もう)(まく)」の上に像を結びます。その後、網膜の細胞が発する電気信号が脳神経を通じて脳へと伝わることで、初めて「ものが見える」と認識できるのです。視神経の機能が低下している緑内障の患者さんは、網膜と視神経のネットワークを正常に保つことが難しくなっています。そのため、緑内障の予防や治療効果の向上には、網膜の血流をよくして視神経とのネットワークをスムーズにすることが必要と考えています。

もう1つ、中高年層に増えている目の病気が黄斑変性です。黄斑変性は、網膜の中心部にある直径1.5~2㍉程度の黄斑部という器官の機能が低下することで発症します。黄斑部の中央には、視力を維持するための生命線といえる「(ちゅう)(しん)()」という器官があります。視界のゆがみが起こる黄斑変性の患者さんは、中心窩の機能を維持することが治療の目的となります。

「合谷」のツボはここ!
手の甲側の人さし指のいちばん下にある(手は大山准教授)
親指の腹を使って、合谷のツボを中心に500円玉大の範囲をゆっくり回すように押す。爪の色が白く変わる程度の強さで押すといい

私が緑内障や黄斑変性の患者さんにおすすめしたいツボは、手の甲側にある「(ごう)(こく)」です。合谷は「()(そう)(けつ)」と呼ばれる重要なツボの1つで、目や歯など、首から上の部位で起こる不調や疾患に対して効果があるとされています。

そこで私は、合谷のツボに(はり)を打つ前と、打ってから5分後、10分後、15分後における網膜の血流量の変化を調べる試験を行いました。その結果、合谷のツボに鍼を打って10分後に、網膜の血流量が最も多くなったのです。鍼を抜くと、測定前の血流量に戻ったことから、合谷のツボ刺激が有効に働いたと判断できました。

合谷のツボを刺激して網膜の血流がよくなると、網膜と脳をつなぐ視神経や、網膜の中心部である黄斑部の細胞に酸素が適切に届くようになります。その結果、緑内障や黄斑変性の悪化を防いだり、進行を遅らせたりする期待ができます。実際に、正常眼圧緑内障の患者さんの合谷に鍼を打ったところ、網膜の血流が改善したことも確かめています。

網膜がある眼底は、眼底カメラによって血管の状況を知ることができます。眼底にある血管の状態は、全身の血管の状態を表しています。合谷のツボ刺激によって網膜の血流が改善することは、すなわち全身の血流がよくなることでもあります。加えて、合谷にはリラックス効果をもたらす副交感神経を優位にする働きもあるので、目の病気のみならず、全身の健康維持にも役立つ“万能ツボ”といえるでしょう。

コロナ()といわれる現在、高齢者の中には新型コロナウイルスの感染を避けるあまり、医療機関への通院の回数を減らしている人が多いそうです。治療がおろそかになることは避けたいものですが、合谷を押すツボ刺激は、自宅で手軽に実践することができます。 

合谷のツボ刺激は、緑内障や黄斑変性のほか、老眼や近視対策としても活用できます。目の健康を守るために、ぜひ試してみてください。