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帯状疱疹は免疫力低下のサインで高齢者や病中病後の人は要注意!後遺症の帯状疱疹後神経痛は冬に多発!

皮膚科
外山皮膚科院長 外山 望

帯状疱疹は免疫力が低下すると発症しワクチンの接種で重症化を抑えられる

帯状疱疹の患者数は10代で増え、いったん減少するものの60代でピークを迎える。50代以上の患者さんが多くを占めている

冬は〝痛み〟の季節です。痛みを伴う疾患の多くは、体が冷えて血流が悪くなると激痛を発します。帯状疱疹の後遺症である神経痛も、冬に激痛を引き起こす疾患の1つです。

帯状疱疹は、体の片側に赤い発疹が帯状に広がり、チクチクとした強い痛みが起こる病気です。悪化すると服がふれるだけでも痛みを覚えるほどですが、通常3週間~1ヵ月程度で皮膚症状は治まります。ところが、後遺症の帯状疱疹後神経痛が残ると、数ヵ月から数年にわたって痛みが続く場合もあるのです。

帯状疱疹の原因は、子どものころに感染した水痘(水ぼうそう)ウイルスです。水ぼうそうが治った後も、ウイルスは体内の神経節(神経の中継所)に潜伏しています。加齢や過労、過剰なストレス、病中病後の時期などさまざまな要因で免疫力が低下すると、ウイルスが活発化して帯状疱疹を発症するのです。

私が所属する宮崎県皮膚科医会は「宮崎スタディ」という疫学調査に取り組んでいます。1997年から始めた調査は現在も進行中で、宮崎県全域で帯状疱疹の患者さんのデータを集めて解析しています。

宮崎スタディの内容によると、宮崎県の人口は2014年までの18年間で5.2%(約62000人)減少しているにもかかわらず、帯状疱疹の患者数は1年間で4243人から5799人と、36.2%も増加していることがわかりました。

発症率も、年間1000人あたり3.61人から5.18人と、43.5%も上昇しています。患者数と発症率は50歳以上から急増し、男女別では40~60代の女性の割合が多いことがわかっています。

帯状疱疹後神経痛には患部を温めることが大切で入浴のほか湯たんぽがおすすめ

[とやま・のぞむ]——1946年、宮崎県日南市生まれ。熊本大学医学部卒業後、同大学同学部附属病院麻酔科、宮崎医科大学医学部附属病院皮膚科、宮崎県立宮崎病院勤務を経て、1983年に外山皮膚科を開院。1997年から帯状疱疹の疫学調査「宮崎スタディ」に取り組み、現在も継続中。

帯状疱疹の治療で重要なことは、神経痛への移行を防ぐことです。帯状疱疹の発症から3ヵ月後には、患者さんの25%が帯状疱疹後神経痛を発症しているという報告があります。

宮崎スタディの調査によると、50歳以上の人は帯状疱疹後神経痛に移行する割合が15~20%と高くなるため注意が必要です。発症初期に痛みがひどかった人にも、神経痛が残りやすいことがわかっています。

帯状疱疹は、早期治療が何よりも大切です。皮膚科などで治療を受けなかった人が、後遺症を抱えやすいことがわかっています。帯状疱疹は、発症する1週間ほど前から、体の片側に痛みが起こります。受診の目安にするといいでしょう。

水ぼうそうが流行する12~1月は水痘ウイルスと接触する機会が増えるため、免疫力が自然に強化されています。一方、夏はウイルスとの接触が少ないことから、帯状疱疹の発症が多くなると考えられます。暑さで体力を奪われることも、免疫力を低下させる一因と考えられます。

帯状疱疹後神経痛は冬の寒さや冷えが大敵となります。体が冷えると血流が悪くなり、症状が悪化しやすくなるからです。痛いからといって、水や氷で患部を冷やすのは逆効果です。

帯状疱疹の発症や後遺症を防ぐには、ウイルスに対抗する免疫力の強化が欠かせません。有効な対策は予防ワクチンの接種です。欧米ではワクチンによって帯状疱疹の発症率が下がり、重症化も抑えられて帯状疱疹後神経痛の患者数が減少したという報告があります。2016年3月から日本でも50歳以上の人を対象に、水痘ワクチンが帯状疱疹予防ワクチンとして認可されていますので、接種をおすすめします。

帯状疱疹後神経痛への移行を防ぐための対策として、患部を温めることをおすすめします。体を温めることによって血流が改善されると、酸素や栄養が全身の細胞に行き渡ります。痛みを生じている物質の排出が促され、傷ついた神経の修復も速まると考えられます。

患部を温めるには、入浴が最適です。入浴の可否は事前に医師と相談する必要があるものの、基本的には問題ありません。入浴のほか、湯たんぽやカイロを使って患部を温めてもいいでしょう。患部に直接当てるよりも、少し離して当てると、強い刺激を与えずにすみます。低温やけどを防ぐため、就寝中は体に湯たんぽやカイロがふれたままにならないようにしてください。