青森県のクロモジに抗腫瘍作用を確認
私は、アロマセラピー(芳香療法)が日本で普及しはじめた1980年代からアロマセラピーを実践しています。アロマセラピーとは、植物が持つ香りとなる有効成分が凝縮された「精油(エッセンシャルオイル)」を用いて心と体のケアを行う療法です。
アロマセラピーに欠かせない精油の多くは、海外で栽培された植物が使用されています。しかし、近年になって日本の植物から抽出された精油が注目されるようになってきました。私は全国各地を訪れて国産の精油を調べ、アロマセラピーの魅力を伝える普及活動に取り組んでいます。では、私がおすすめする精油をご紹介しましょう。
青森県南西部から秋田県北西部にかけて広がっているのが、日本で初めてユネスコ世界遺産(自然遺産)に登録された白神山地です。人類の影響をほとんど受けず原生的なブナ天然林が、世界最大級の規模で分布しています。
実は、白神山地でも精油が取れることをご存じでしょうか。白神山地には「オオバクロモジ」というクスノキ科クロモジ属の落葉低木が自生しています。枝を折るととてもいい香りがするため、古くから枝の部分を削り、楊枝として使われていました。現在は、白神山地で採取したオオバクロモジの枝の部分を水蒸気蒸留法という方法で抽出した精油が知られています。
白神山地で取れるオオバクロモジの精油には、芳香成分である「リナロール」「1,8シネオール」「リモネン」「α–ピネン」などが含まれています。オオバクロモジは、樹木でありながら花を思わせる香りを放ちます。
オオバクロモジの精油の香りをかぐと、不安、緊張、いらだち、不眠といったストレスからくる心身の不調が和らぎます。さらに、落ち込み、疲労感、混乱などの精神的な症状を緩和し、気持ちを安定させることが期待されます。
青森県では白神山地のほか、青森市にある浅虫温泉の周辺でも、オオバクロモジが自生し、枝葉から精油が造られています。また、弘前大学の前多隼人助教が青森県のクロモジの精油の研究をしており、抗腫瘍作用・抗炎症作用についての論文が発表されています。今後の研究で、オオバクロモジの持つ健康効果が明らかになることに注目しています。