医療法人ふじいやさかラ・ヴィータ統合医療クリニック理事長 森嶌 淳友さん
心臓血管外科医として第一線で活躍する中、西洋医学による治療に限界を感じたという森嶌先生。西洋、東洋を問わずさまざまな治療法を取り入れた統合医療によって、患者さん一人ひとりの心と体にしっかりと向き合っています。
臨床経験を積む中で〝全人的な医療〟の必要性を確信しました
「統合医療は、近代西洋医学にさまざまな代替療法や伝統医学を組み合わせて行う医療です。代替療法や伝統医学には、ハーブやビタミンなどの天然素材を使ったもの、気功やヒーリングなどの心身療法と呼ばれるもの、そして、漢方や鍼灸でなじみ深い伝統的な中国医学やインドの生命科学であるアーユルヴェーダなど、多種多様な治療法があります。私が理事長を務めるラ・ヴィータ統合医療クリニックでは、患者さん一人ひとりに最適な治療法を提案し、体だけでなく心や魂にも働きかける全人的な医療の実現に努めています」
穏やかな声でそう語るのは、大阪市にあるラ・ヴィータ統合医療クリニックの理事長、森嶌淳友先生です。西洋医学の治療で改善しなかった疾患や症状が、統合医療による治療で改善したケースは少なくないといいます。
「私が全人的な医療を目指そうと決意したのは医大生のときでした。『解剖学や病理学といった西洋医学で得た知識を全部合わせても、人間にはならない』と気づいたんです。私たち人間は自然科学で分類や解析ができる物理的な肉体のほかに、科学的な手法では捉えられない心や魂も持っています。西洋医学だけでなく、人間の心や魂に寄り添える治療法も学ばなければ、真の〝治療〟を行うことはできないのではないかという疑念が確信に変わっていったのです」
全人的な医療の修得に向かう第一歩として、できるだけ短期間で西洋医学の技術を身につけたいと考えた森嶌先生。心臓血管外科医として経験を積む中で、大動脈瘤破裂や心筋梗塞などの緊急手術を担当することも多かったと振り返ります。手術後は患者さんの容体を管理するために病院に泊まり込み、家にはほとんど帰れなかったそうです。
「西洋医学の臨床経験によって身につけた技術と判断力は、いまも統合医療で十分に生かされています。ただ、心臓血管外科医として経験を積むうちに、しだいに西洋医学に限界を感じるようになりました。人の生死の瞬間をいくたびも目の当たりにして、手術などの対症療法だけでは根本的な治療にならないという思いが募っていったんです」
実際、ある部分で血管の手術に成功しても、後日ほかの臓器で血管が詰まって命を落とした患者さんもいらっしゃったといいます。患者さんがみずから生活習慣を変えようと意識しない限り、対症療法を何度繰り返しても再発の危険性から逃れることはできないのです。
「理想は一人ひとりの患者さんに時間をかけて生活指導を行うことです。ところが、手術と診療を立て続けに行わざるをえない病院のシステム上、なかなかうまくいきませんでした」
学生時代から全人的な医療の必要性を感じつづけていた森嶌先生は、西洋医学以外のさまざまな治療法を身につけるべきだと痛感し、大学病院を辞めることを決意。臨床現場での診療経験を絶やさないよう医療機関に勤務しながら、3年間にわたってさまざまな代替療法を積極的に吸収していきました。
「私が修得した治療法は、漢方や鍼灸、ハーブ療法、点滴療法、ヒーリング、アロマセラピーなど、多岐にわたっています。西洋医学以外の治療法の勉強を通して、病気は『ただ治さなければならないもの』というだけでなく、患者さんみずからが病因や生活習慣について見つめ直すための『贈り物』でもあると気づかされました。病気から気づきを得た患者さんたちが豊かで幸せな人生を送れるように、医師として支えていきたいと強く願うようになったんです」
2014年5月、森嶌先生は念願の統合医療クリニックを開院。西洋医学と代替療法を組み合わせたオーダーメイドの治療に本格的に取り組むようになりました。さらに、代替療法の研究を続けるうちに「いままで学んできたことがすべてつながった」と感じられる劇的な出合いがあったといいます。
「ドイツで誕生した〝バイオレゾナンス〟という波動医学療法と、その理論に基づいて開発された周波数測定器との出合いによって、治療の方向性がより明確になったんです。バイオレゾナンスは直訳すると、『生体の共鳴』。1976年にドイツのパウル・シュミット博士によって体系化された理論です」
私たち人間の体の中には、常に微弱な電気が流れています。例えば、脳波や心電図は、脳や心臓の筋肉を動かすために出される電気信号の周波数を元にして算出されています。量子力学の考え方に基づくバイオレゾナンス療法では、物質や生体の共鳴反応を測定できる周波数測定器を使って、患者さんの発する電気信号の周波数から不調の原因を探ります。
周波数測定器は患者さんの状態を細胞レベルで測定できるだけでなく、乱れた周波数を整えることで治療も行えるそうです。これまでに1万人以上の患者さんたちの治療にあたり、さまざまな疾患や症状を改善に導くことができたといいます。
毒素の排泄と免疫力の増強が心身の状態を整えるカギなんです
「治療を続けるうちに、心身の不調が起こる原因となっているのは、ほとんどの患者さんに共通する2つの点であると気づきました。1つは体の中にたまった毒素を体外に正しく排泄できていないこと、もう1つは心と体に必要なエネルギーが不足して免疫力が低下していることです」
周波数測定器による検査は、さまざまな治療法に活用できるという森嶌先生。サプリメント療法や点滴療法に取り入れ、患者さんの毒素の排泄と免疫力の増強に有効な治療を行っているそうです。
「免疫力を増強して自然治癒力を高められる素材として、私が特に注目しているのがLPSです。LPSの正式名は『リポポリサッカライド』。自然界に多数存在するグラム陰性菌という細菌の細胞外膜についている糖脂質です。LPSのサプリメントを服用しているアレルギーやがんの患者さんの経過を見ていると、免疫力が高まっているという手ごたえを感じます」
経口・経皮摂取によって体内に入ったLPSは、マクロファージをはじめとする全身の免疫細胞を活性化したり、バランスを整えたりする作用があることが臨床試験や動物実験で確かめられています。LPSを摂取すると、手術後の創傷が早く治る患者さんも多いそうです。
「さらに驚いたのは、発達障害の子どもたちがLPSを摂取したところ、コミュニケーション障害や多動症が改善して会話ができるようになったり、落ち着きを取り戻したりしたことです。現代の医学では発達障害が起こる原因はまだはっきりと分かっていませんが、脳神経の傷害や、それに伴う炎症が深く関わっていると考えられます」
発達障害の治療では、腸と脳とが相互に影響を及ぼし合う「腸脳相関」という医学の考え方を重視しているという森嶌先生。LPSには、腸内環境を整えて脳神経を修復する効果が期待できるといいます。
「LPSには小腸の炎症を抑えてマクロファージを活性化させる働きがあります。マクロファージは全身に存在して互いに連携しているので、脳のマクロファージであるミクログリアも活性化します。すると、脳神経そのものの傷が修復されるんです」
森嶌先生のもとには、発達障害の子どもたちのご両親や学校の先生から「単語ではなく文章で話すことができるようになった」「イスに座っていられるようになった」と、たくさんの喜びの声が届いているそうです。病気の治療を通して、患者さん本人やご家族の人生が〝豊かで幸せなものに変わる瞬間〟に立ち会えるのが至福のひとときだという森嶌先生。「これからもさまざまな治療法を探求し、患者さん一人ひとりに寄り添っていきたい」と情熱を宿したまなざしで語ってくれました。