春に増えやすいめまい・耳鳴りなどの耳の不快症状の改善には即効ツボ刺激が有効
寒暖差の激しい春は自律神経のバランスが乱れやすく、めまいや耳鳴りなど、耳の不快症状を訴える人が少なくありません。自律神経のバランスを整えて、めまいや耳鳴りなどの耳の不快症状を改善するには、ツボ刺激が有効です。
東洋医学では、「気・血・水」と呼ばれる3つの基本要素が常に体内をめぐって、心と体の健康を維持していると考えられています。「気」は生命エネルギーのこと。元気や気力などの「気」です。「血」は血液のこと。全身をめぐって気(酸素や栄養など)を運びます。「水」は血液以外の体液のこと。リンパ液や涙、鼻水、唾液、汗などで、水分の代謝や免疫機能などにかかわっています。
気・血・水の通り道となるのが「経絡」です。経絡は体内に網の目のように張りめぐらされ、体のすみずみにエネルギーを送り込んでいます。経絡が分岐したり合流したりする要所にあるのが「ツボ(経穴)」です。
経絡の流れが滞ったり内臓に異常があったりすると、その不調はツボに反映され、硬くなったり腫れたりして、圧痛(体を指先などで圧迫したときに生じる痛み)が強くなります。このようなツボを刺激することで気・血・水の流れを改善することができ、内臓などの体の働きを整えることができます。
ツボには重要とされるものがいくつかあります。それらは神経や血管の近くに位置することが多く、温痛覚や触圧覚といわれる鍼灸や指圧によるツボ刺激は、感覚神経に直接働きかけて、筋肉のこりをほぐしたり、血流を改善したりする効果が期待できます。また、ツボ刺激は脊髄や脊髄を経由して大脳にも伝わります。大脳は刺激を受けた特定の部位の不具合を調節する指令を出し、体の不調を改善するのです。
人間の体には、即効ツボが360以上も点在しています。その中には、めまいや耳鳴りの改善に大変有効な即効ツボがあります。めまい・耳鳴りの即効ツボとして代表的なのは「聴宮」「聴会」「翳風」の3つです。
即効ツボの探し方は「触る・つまむ・押す」といった動作が基本となります。例えば、触ったときの感触がほかの場所と比べてカサカサしていたり、しこりがあったり、熱かったり、冷たかったり、皮膚の色がほかと違って黒かったりするなどです。また、押したりつまんだりしたとき、皮膚がたるんでいたり、痛みや気持ちよさを感じたりするかどうかも大きな手がかりとなります。
即効ツボ刺激の時間や回数は、無理をせず、不快感を覚えない程度に行うようにしましょう。ツボは体の左右対称にありますが、ツボ刺激に対する反応はそれぞれ異なることもあります。指で押すと強く痛みを感じる場所はやや強めに3回程度、指で押すと気持ちよく感じる場所は弱めに10回程度刺激するのがポイントです。
即効ツボ刺激は、強く押したからといって効果が上がるものではありません。ツボを刺激する部位が腫れたり炎症を起こしたり、じっとしていても痛んだりする場合はさけるようにしましょう。また、飲酒後の即効ツボ刺激は控え、入浴や食事の前後は1時間程度あけるようにしてください。
首の後ろが緊張したりこったりする場合は「耳鳴りの反応点」が耳鳴り軽減に効果的
「耳鳴りの反応点」も耳鳴りの改善に有効です。首の後ろの筋肉が緊張したり、こったりして耳鳴りが強くなる場合は、図にある反応点の部位を指でほぐすように優しくもむと、耳鳴りの軽減が期待できます。
東洋医学では患者さん一人ひとりの体質と病気の症状に対する反応や経過、病気の起こり方を見定めることから治療を始めます。具体的には、陰陽・虚実・寒熱・表裏、気血水、臓腑、経脈の病証などをものさしとして体の状態と症状を総合的にとらえ、漢方薬や鍼灸、あん摩、指圧、養生などを組み合わせて最も有効な治療法を提供するのが特徴です。
このように東洋医療では、西洋医学でも近年理想とされているテーラーメイド医療を2000年以上も前から実践してきました。即効ツボ刺激も同様で、それぞれの患者さんによって効果的なツボは異なります。今回ご紹介した即効ツボ刺激でめまいや耳鳴りなどの耳の不快症状の改善が見られない場合は、耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。また、東洋医学に関することは、東洋医学の専門医や鍼灸師にご相談ください。