プレゼント

心理的回転の能力が必要な「鏡像デジタル数字」に挑戦

Dr.朝田のブレインエクササイズ!

メモリークリニックお茶の水理事長 朝田 隆

図形を脳内で回転させる時、脳にはとてもいい刺激が与えられています。図形の回転は、60度、90度、180度と角度がつくほど難しくなり、脳の活性にもつながります。今回は回転だけではなく左右を反転させている難易度の高い問題です。

デジタル数字をテーマに鏡像と回転を取り上げた難問に挑みましょう

今回の問題で取り上げるのはデジタル数字です。電卓やエレベーターの表示などで見ることが多いデジタル数字ですが、7つの線だけで0~9までの数字を示すことができる、シンプルながらも画期的な表現方法です。

では出題です。下のイラストをご覧ください。ストリートダンスを踊っている3人の男性が窓に映っています。イラストの左にあるシャツと同じ服を着ている男性は、①~③のうち誰になるでしょうか。

[あさだ・たかし]——筑波大学名誉教授。1982年、東京医科歯科大学医学部卒業。同大学神経科、山梨医科大学精神神経科講師、筑波大学精神神経科学教授などを経て現職。数々の認知症の実態調査に関わった経験をもとに、認知症の前段階からの予防・治療を提案している。著書に『その症状って、本当に認知症?』(法研)など多数。

さて、この連載で何回か取り上げている「メンタルローテーション」について復習しましょう。頭の中で図形を回転させてイメージする能力を指す心理用語で、日本語では「心的回転」と訳されます。回転した図形が元の図形と同じかどうかの判断は、回転する角度が大きくなるほど難しくなります。今回のイラストで表現されている鏡の状態は、まさに心的回転が必要な問題といえるでしょう。

鏡文字を読むにあたって大きなハードルとなるのが、文字が逆に映る「鏡像」です。ひらがなの「ん」と「そ」のように、文字の形が大きく異なる場合は、判別がそれほど難しくありません。ところが、カタカナの「ン」と「ソ」など、形が似ている文字は見分けがつきにくく、深い注意力が求められます。

今回の問題で取り上げているデジタル数字も、鏡像によって見分けがつきにくい文字です。鏡像で見分けにくい数字は「6と9」「2と5」です。デジタル数字の世界では、6を180度回転させると9になります。2と5もとても近い形になりますが、180度回しても同じ形にはなりません。しかし、2と5は鏡像の形で左右を反転させれば同じ形になるのです。

今回の問題の答えは①です。②の人物は9の文字が左右反転し、③の人物は2と5が入れ替わっています。答えを知っても理解できないという人は、このページを鏡に映して実際に見てみましょう。

今回は、鏡だけでなく窓ガラスや電車の車窓など日常生活の中でしばしば起こりうる鏡像をテーマにしました。難問だけに、脳を刺激させる鋭い認知トレーニングになると実感していただけたのではないでしょうか。

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