私は3歳のときに慢性腎炎にかかり、18歳から人工透析を始めて31年がたちました。 私の人生は常に病気とともにあります。自身の病気の体験と想いをベースに、患者として受け身でいるだけでなく、もっと積極的に医療に関わり、貢献することが私の使命だと思っています。一般企業に14年間勤めた後、社会福祉士の国家資格を取得。地域福祉の現場経験を経て、2010年に起業しました。
現在は組織変更し、一般社団法人ペイシェントフッドとして、患者・家族を対象としたウェブサイト『じんラボ』で患者ならではの情報発信やコミュニティの運営、勉強会の開催やピアサポート活動に取り組んでいます。企業や医療従事者には、講演や研修の企画運営を通して「患者の視点に立って考えることの大切さ」をお伝えしています。
いま、患者として強く感じるのは、1人ひとりの患者が医療や治療に積極的に参加する意識が大切だということです。その前提として、病気になったことで人生の希望をあきらめることなく「自分はどういう生活を送りたいのか」「自分は何を大切にして生きていきたいのか」という想いをしっかり持つことが肝心だと思います。
自分が望む生活や生き方を実現するためにはどのような治療や薬、サポートが必要なのかを医療従事者と患者がともに考え、患者が意志をもって決定し、ともに歩んでいく――いい替えれば〝患者協働の医療〟というあり方が、未来の医療を創り上げていくために大切だと考えています。
治療や薬の選択は、何よりも大切なかけがえのない命を守るための〝生き方の選択〟でもあります。患者は医療の専門知識がないので、医療に関することを医療従事者にいわれるがままにしているのではないでしょうか。
ただ、専門知識を多く身につければ、おまかせにならないということではありません。常に「この治療を選択したら自分の希望する生活は送れるのか」という視点を持ち、さまざまな治療、薬を選択する判断材料にすることが、患者が意志をもって決定することの1つだと思います。
もちろん、病気や症状によってすべて自分の望みどおりの選択ができるとは限りません。しかし現在、患者の多くは〝おまかせ医療〟に身をゆだねているのが現実ではないでしょうか。それは過去の私自身の反省から強く感じることでもあります。
「正しい知識や情報を得て考え、行動(選択)する」ことは、未来の自分の心と体、そして人生も変えてくれます。困難な状況にも適応しようと考え、しなやかに行動できる〝生きる力〟を身につけることが、一人ひとりの誰もが自分らしく生きるための第1歩だと考え、さまざまな取り組みを展開しています。