NASHによる炎症・線維化が改善すると判明
越後白雪茸は、1994年に新潟県魚沼市の山奥で発見された新種のキノコです。一般的なキノコが持つ担子器(傘)を作らず、見た目がトリュフに似ていることから、当初は「白トリュフ」と呼ばれていました。
越後白雪茸の機能性は、聖マリアンナ医科大学でマウスの脾臓を使った実験で初めて明らかにされました。実験の結果、ウイルスや細菌、がん細胞などの異物を体内から排除するリンパ球という免疫細胞が顕著に増加することが認められ、免疫賦活作用が示されたのです。さらに、末期がん患者さんのNK(ナチュラルキラー)細胞を活性化するなどの臨床的な観察も報告され、越後白雪茸の機能性研究が本格的に行われるようになりました。
新潟薬科大学で行われた動物実験では、ラットをそれぞれ対照群(通常のエサ)、肥満群(高脂肪・高カロリーのエサ)、越後白雪茸群(越後白雪茸の乾燥粉末を含む高脂肪・高カロリーのエサ)の3群に分け、生後4週齢から100日にわたって飼育しました。実験結果は次のとおりです。
● 内臓・肝臓脂肪の蓄積抑制作用
肥満群では内臓脂肪量が平均48㌘だったのに対し、越後白雪茸群の内臓脂肪量は平均29㌘と有意に低い値が見られました。また、肥満群の肝臓の中性脂肪量も75㍉㌘だったのに対し、越後白雪茸群の肝臓の中性脂肪量は30㍉㌘と低い値を示しました。
過剰な内臓脂肪がたまるメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群。以下、メタボと略す)は動脈硬化(血管の老化)の危険因子とされ、心筋梗塞や脳梗塞などの危険性を高めます。また、肝臓に脂肪が蓄積された状態を「脂肪肝」といい、放置しておくと肝炎や肝硬変、肝がんに進行するおそれがあります。
● 肝臓の保護作用
脂肪肝になると、活性酸素や炎症などで肝臓が障害されます。肝機能を知る指標にASTとALTがあります。どちらも肝臓の酵素(体内の化学反応を助ける物質)で、肝臓に障害があると血液中で増加します。実験の結果では、肥満群のASTが400、ALTが410に増加していたのに対し、越後白雪茸群はASTが40、ALTが30と、ほぼ正常値になっていました。
世界初!越後白雪茸の機能性研究が進展
さらに、新潟薬科大学では、越後白雪茸に非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の改善作用が見られるかどうかも動物実験で調べました。
NASHは、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)が悪化すると起こります。肥満や2型糖尿病、高血圧、脂質異常症などを合併するほど、発症リスクが高まります。
実験では、生後1週めくらいに膵臓に障害を与えるストレプトゾトシン(STZ)という化学物質を皮下注射し、その後高脂肪のエサを与えてNASHを発症させるマウスモデルを使用して、越後白雪茸のNASHに対する作用を観察しました。
マウスをそれぞれの対照群(STZなしで通常のエサ)、NAFLD群(STZを投与した後、高脂肪のエサを8週間)、NASH群(STZを投与した後、高脂肪のエサを16週間)、越後白雪茸群(STZを投与した後、高脂肪のエサを16週間、12週めからは越後白雪茸を添加)の4群に分け、肝臓の変化を観察しました。
「越後白雪茸によるNASHの進行抑制作用」の図の左端の写真は、普通のエサを与えられた健康なマウスの肝臓です。左から2番めの写真は高脂肪のエサで飼育して8週間めの肝臓で、脂肪滴がたまって炎症も起きているNAFLDからNASHへの進行状態を示しています。左から3番めの写真は16週間高脂肪のエサを与えてNASHが発症した肝臓で、炎症と線維化によって肝細胞が壊れているようすがわかります。
右端の写真は12週間めから高脂肪のエサに越後白雪茸を添加して16週めまで飼育したときの肝臓です。NASH群で見られる肝臓の炎症や線維化が改善し、脂肪滴の蓄積も肝細胞の障害もほとんど見られず、左端の正常な肝臓に近いようすがわかります。
越後白雪茸の肝臓保護作用のしくみに関する研究・解明が、日夜行われています。最近の研究では、肝臓の保護作用があるクコの実(ゴジベリー)と似た成分が越後白雪茸に多く含まれていることがわかりました。越後白雪茸を日常的に摂取することで、NASHによる肝臓の炎症や線維化を改善する効果も期待できそうです。
現在では、有効性が科学的に裏づけられた健康食品が市販されているようです。近年、患者数が急増しているにもかかわらず、いまだに治療法が確立されていないといわれるNASH。越後白雪茸がNASHの予防や改善の一助になればと願っています。