メモリークリニックお茶の水理事長 朝田 隆
高齢者の約3割が予備群といわれている認知症は、誰にでも発症する可能性があります。「物忘れが増えた」と不安を感じたら、できるだけ早く対策を取ることが大切です。この連載では、認知症の予防に役立つトレーニングを、認知症研究の第一人者として知られる朝田隆先生にご紹介していただきます。
ペンローズの階段は遠近を統一しながら左右に高低の矛盾があれば自分でも描ける
「不可能図形」を見たことはあるでしょうか。一見すると普通の立体物に見えるものの、現実の世界ではありえない物体を描いた図形です。代表的な不可能図形として知られているものに、ペンローズという数学者が生み出した「ペンローズの階段」があります。今回は、ペンローズの階段を模した一例を、下で紹介しています。
多くの人は、不可能図形を目にした数秒後に「実在しないもの」と認識することができます。ところが、矛盾した絵であることに気づいた後も、最初に抱いた印象が持続しているため、不思議な感覚が残るのです。
不可能図形は、二次元だからこそ生み出せる矛盾を利用した図形です。「どうしてこのような絵が描けるのだろう」と不思議に思われる方も少なくないはず。今回は、実際にペンローズの階段を描く方法をお伝えしましょう。
ペンローズの階段の一例
ポイントは遠近法です。下の図をご覧ください。4つの階段はいずれも手前にある段が広く、奥が狭くなっています。そのため、遠近法によって手前が近く、奥が遠方にあるように認識されます。
ペンローズの階段の描き方
そこで、図のように縦軸と横軸の線を引いてみましょう。①と④の階段は、時計回りの方向に見ると奥に下っていくように見えます。ところが②と③の階段は、時計回りに見ると手前に下っていくように見えているはずです。これは、階段の描き方によって遠近と高低の矛盾を左右で起こしているのです。
それでは、実際にペンローズの階段を描いてみましょう。まずは補助線を描き、4つの階段すべてを手前が近く、かつ時計回りで下るように描ければ、ペンローズの階段のできあがりです。脳を刺激しながら描いてみましょう。