日本先進医療臨床研究会代表 小林 平大央
〝夢の治療〟といわれる再生医療が大きく進化!幹細胞培養上清液は玉石混交で見極めが重要
一般的に「再生医療」というと、これまで治療法のなかった遺伝性の難病や移植しか治療法のない臓器疾患などに対して新たな臓器を再生する治療法と考えられていると思います。また、再生医療といえば、ノーベル賞を受賞した山中伸弥先生(京都大学iPS細胞研究所所長・教授)が発見したiPS細胞というどんな細胞にでも分化できる「多能性幹細胞」を使った治療法というイメージがあると思います。しかし、実は再生医療には、iPS細胞などの多能性幹細胞を使った治療以外にも「間葉系幹細胞」といって人体の皮膚や脂肪、骨髄などから採取した幹細胞を培養・増殖して治療に用いる方法があるのです。
iPS細胞を使用した再生医療は加齢黄斑変性などの一部の疾患に対してやっと実験的な治療が始まった段階で、実際の難病治療に使用するにはまだまだ時間がかかりそうです。これに対して、体細胞由来の間葉系幹細胞を使った治療法はすでにさまざまな疾患に対して実用化が進んでいます。例えば、ガンや認知症、膠原病、パーキンソン病、神経疾患、虚血性心疾患、心不全、慢性閉塞性動脈硬化症、1型糖尿病、アンチエイジング(若返り)治療などに対して一部の先進的な医療機関などですでに治療が行われています。現在、体細胞由来の間葉系幹細胞は、本人の皮膚や脂肪、骨髄由来の細胞から幹細胞を取り出して培養・増殖し、本人の体に戻すという方法がとられています。
ところが、現在行われている皮膚や脂肪、骨髄由来の間葉系幹細胞は培養・増殖の効率があまりよくありません。そのため、効率のよりよい細胞が求められていましたが、最近になって歯科で採取される歯肉由来の間葉系幹細胞や、産婦人科で採取される臍帯側部のジェル状の細胞(ウォートンジェリー)由来の間葉系幹細胞が驚くほど治療効率がよいことが分かり、これらを使った治療法の研究が進んでいます。
また、最先端の研究の結果、全身の神経を再生する再生医療や、特にアンチエイジング治療に関しては、幹細胞そのものよりも幹細胞を培養する過程で得られるサイトカインやケモカイン、各種の成長因子などの代謝物が治療効果の主役であるらしいことが分かってきました。現在の幹細胞そのものを使用する治療法よりも幹細胞を培養する際の培養液の上澄み(培養上清液)を使用した治療法へと最先端のアンチエイジング再生医療は移行しつつあります。そのため、実用化可能で、副作用が少なく、難病治療やアンチエイジング治療に対して効果を発揮する現在最良の方法は、幹細胞内で代謝されて細胞外に排出された分泌物を大量に用いる方法と考えられています。この方法は「幹細胞培養上清液再生医療」と呼ばれています。
通常、幹細胞などの体細胞を使用する治療法は「薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)」とあわせて「再生医療法(再生医療等の安全性の確保等に関する法律)」の規制を受けます。しかし、幹細胞そのものではなく培養上清液のみを使用した治療法の場合は幹細胞を使用しなくてすむため、再生医療法の規制は受けません。再生医療法の規制をクリアするための膨大な出費が抑えられ、全国の多くの医療機関で早期に治療を導入・実施できるメリットがあります。
最先端の研究で優れた効果が確認された幹細胞培養上清液再生医療ですが、実はよい面ばかりではありません。市場には幹細胞培養上清液再生医療をうたう化粧品が多く存在しますが、これらの商品を調べたところ、サイトカインや成長因子がほぼ入っていない市販品が多く見つかったのです。
これに対して、日本先進医療臨床研究会と提携する医療機関が行っている歯肉幹細胞由来の培養上清液や臍帯側部のウォートンジェリー由来の幹細胞培養上清液を同様に調べたところ、かなりの量のサイトカインや成長因子が確認されました。歯肉幹細胞由来のサイトカインや成長因子は一般的に脂肪細胞由来のものよりも量が多いことが分かっていますが、それらの数値と比べても臍帯側部のウォートンジェリー由来の幹細胞培養上清液には歯肉由来の倍以上の成分があることが分かりました(表参照)。特にアンチエイジング治療や老化に伴う諸疾患の治療に関しては、臍帯側部のウォートンジェリー由来の幹細胞培養上清液を使用した治療法が現時点では最も効果的ではないかと考えられます。
今後、幹細胞培養上清液再生医療がきちんとした医療として社会に普及していくためには、その条件として含有するサイトカインや成長因子の数値をきちんと検査して公表することが重要だと考えられます。また、再生医療は医療行為の一環ですので、市販の化粧品などではなく、医療機関で治療を受けることをおすすめします。
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