プレゼント

ガンスクリーニング検査で注目の3つの栄養素検査(後編)

がん治療の進化を目撃せよ!

日本先進医療臨床研究会理事長 小林 平大央

ガン対策の新たな潮流として注目を集めるコストと頻度で考える「予防的」スクリーニング

小林平大央
[こばやし・ひでお]——東京都八王子市出身。幼少期に膠原病を患い、闘病中に腎臓疾患や肺疾患など、さまざまな病態を併発。7回の長期入院と3度死にかけた闘病体験を持つ。現在は健常者とほぼ変わらない寛解状態を維持し、その長い闘病体験と多くの医師・治療家・研究者との交流から得た予防医療・先進医療・統合医療に関する知識と情報を日本中の医師と患者に提供する会を主宰。一般社団法人日本先進医療臨床研究会理事長(臨床研究事業)、エポックメイキング医療研究会発起人代表(統合医療の普及推進)などの分野で活動中。

近年、ガンの早期発見技術は目覚ましい進歩を遂げています。血液一滴で複数のガンリスクを判定する「welltectウェルテクト」、尿でガンリスクを調べる「NエヌNOSEノーズ」や「miSignalマイシグナル」、AIが血中細胞を解析する「マイクロCTC検査」など、革新的なスクリーニング検査が次々と登場し、ガンとの闘い方に新たな選択肢をもたらしました。これらの検査は体への負担が少なく、従来の方法では見つけにくかったガンの兆候をとらえる可能性を秘めており、大きな期待が寄せられています。

しかし、これらの先進的ガンスクリーニング検査を誰もが定期的に受けるには、まだ高いハードルが存在します。その1つが「コスト」です。多くは保険適用外の自由診療であり、1回の検査に数万円の費用がかかることも少なくありません。もちろん、それでガンが早期に発見できるのであれば、その価値は計り知れないものがありますが、やはりこの費用は誰もが容易に受け入れられるというものではないようです。

一方で、私たちはここに新たな視点を提案したいと思います。それは、「ガンを『見つける』ための高額な投資」とは別に、またはそれと並行して「ガンを『発生させない』ための低コストで継続的な投資」を行うという考え方です。そして、そのカギを握るのが、前編でもお伝えした「ビタミンD」「亜鉛」「ヨウ素(こうじょうせん機能)」といった基本的な「栄養素検査」なのです。

では、先進的ガンスクリーニング検査と、ここで提案する栄養素検査は、具体的にはなにが違うのでしょうか。その違いは、検査の目的とコストという2つの側面から明確になります。

まず、先進的ガンスクリーニング検査の目的は、体内にガン細胞が存在する可能性、つまり「異常の発見」に主眼が置かれています。そして、それらの検査のコストは比較的高額であるため、多くの人にとって受検頻度は1年に1回、あるいは数年に1回が現実的でしょう。これは、特定の時点での健康状態を切り取る「スナップショット(静止画)」のような検査であると評価されます。

それに対し、栄養素検査が目指すのは、ガンが発生・増殖しやすい体内環境になっていないかを評価することです。これは、ガンという「火事」が起こる前に、「火種」となりうる体の状態を知り、「予防」することに重きを置いたアプローチです。

そして、なにより栄養素検査が特徴的なのは、そのコストが非常に安価であることです。かかりつけのクリニックでの健康診断や人間ドックの血液検査オプションとして数百円から数千円程度で追加できる場合が多く、先進的ガンスクリーニング検査に比べて圧倒的なコストパフォーマンスを誇ります。

このコストの違いがもたらす最大の利点は、「検査頻度」を上げられる点にあります。栄養素検査であれば、経済的な負担をあまり感じることなく、数ヵ月に1回、あるいは状態によっては毎月や隔月に1回といった高頻度でのチェックが可能です。これにより、自身の体の変化を静止画ではなく、連続した「ムービー(動画)」のようにとらえることができます。例えば、季節によるビタミンD濃度の変動や、食生活の変化による亜鉛レベルの低下など、体内の微細な揺らぎを継続的にモニタリングすることで、ガンリスクが高まる方向へ体が傾く前に、早期に軌道修正を図ることが可能になるのです。

さらに、このコストパフォーマンスの高さは、検査を受けた後の具体的な行動、つまり「次の一手」にも大きな違いをもたらします。先進的ガンスクリーニング検査で「ガンリスクが高い」と判定された場合、次に行うべきなのはPET-CT(陽電子放射断層撮影法-コンピューター断層撮影法)やMRI(磁気共鳴画像法)などの画像検査、または内視鏡、しゅようマーカーなどの精密検査です。これはガンを確定診断し、治療方針を決めるための重要なステップですが、同時に精神的・身体的・経済的な負担を伴います。

『三石巌全業績⑵ ガンは予防できる』三石 巌著(現代書林)

ところが、栄養素検査でビタミンD不足や亜鉛不足が判明した場合、私たちが取るべき行動はガンの確定診断につながる画像診断や精密検査を受けることではありません。私たちが取るべき行動は、ガンの発症の予防をするという非常に明確かつ前向きなものとなります。

例えば、ビタミンD不足なら、意識的に日光を浴びたり、キノコや青魚を食事に取り入れたり、必要ならサプリメントを検討するといった対策が考えられます。また、亜鉛不足であれば、カキや赤身肉、レバーなど、亜鉛が豊富な食材の積極的な摂取やサプリメントの検討、甲状腺機能の乱れが疑われるなら、ヨウ素を豊富に含む海藻類の摂取量を見直すかサプリメントを検討するなど、日々の生活の中で実践できることばかりです。

これらの対策は特別な治療ではなく、「生活習慣の改善」によって、ガンの発症リスクの土台となる部分に直接アプローチできることを意味します。そして、ガンだけではなく、さまざまな生活習慣病の予防にもつながる極めて包括的で効率のよい健康投資といえるでしょう。

安価であるからこそ高頻度でチェックでき、その結果に基づいて具体的な生活改善を実行する——このサイクルを回すことで、「ガンをおそれて、その兆候を見つける」という受け身の姿勢から、「ガンになりにくい体を作る」という能動的で主体的な健康管理へとパラダイムシフトを起こすことができるのです。

このように見てくると、先進的ガンスクリーニング検査を否定するものでは決してないことが分かります。それらは特定のタイミングで自身のガンリスクを網羅的に評価するための強力なツールです。

しかし、それと同等に、あるいはそれ以上に重要なのは、日日の体の状態を把握し、健康の土台を築くことです。ビタミンD、亜鉛、ヨウ素(甲状腺機能)などの栄養素検査は、そのための最もコストパフォーマンスに優れた「基礎的スクリーニング」と位置づけることができます。

高額な先進的ガンスクリーニング検査を「特別なイベント」とするならば、安価な栄養素検査は「日常的な健康チェック」です。この両者を賢く使い分けることこそが、現代におけるガン対策の最適解ではないでしょうか。