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ガンスクリーニング検査で注目の3つの栄養素検査(前編)

がん治療の進化を目撃せよ!

日本先進医療臨床研究会理事長 小林 平大央

近年注目を集めるガンになる前に見つけるスクリーニング検査の本命は栄養素検査?

小林平大央
[こばやし・ひでお]——東京都八王子市出身。幼少期に膠原病を患い、闘病中に腎臓疾患や肺疾患など、さまざまな病態を併発。7回の長期入院と3度死にかけた闘病体験を持つ。現在は健常者とほぼ変わらない寛解状態を維持し、その長い闘病体験と多くの医師・治療家・研究者との交流から得た予防医療・先進医療・統合医療に関する知識と情報を日本中の医師と患者に提供する会を主宰。一般社団法人日本先進医療臨床研究会理事長(臨床研究事業)、エポックメイキング医療研究会発起人代表(統合医療の普及推進)などの分野で活動中。

日本人の死因第1位であるガンの克服に向けて早期発見・早期治療の重要性は誰もが知るところです。ガンのスクリーニング検査の主役として、人間ドックや健康診断で行われる画像検査、しゅようマーカー検査は大きな役割を果たしてきました。しかし近年、私たちの体の根本を成す「栄養状態」に着目し、ガンのリスクを評価するアプローチが注目を集めています。今回は、特に注目される3つの栄養素検査「①ビタミンD」「②亜鉛」「③ヨウ素」に着目し、ガンとどのような関連があるかを解説します。

①ビタミンD(250HD検査)

【ガンの予防・抑制】
ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、骨を丈夫にする働きで広く知られていますが、その役割はそれだけにとどまりません。近年の研究でビタミンDが免疫機能の調整や細胞の増殖・分化のコントロールに深く関わっていることが明らかになり、ガン予防の観点から非常に大きな注目を集めています。

【細胞増殖の抑制と分化誘導】
ビタミンDにはガン細胞の無秩序な増殖を抑え、正常な細胞へと分化(成熟)するのを促す作用があります。

【アポトーシスの誘導】
アポトーシスとは、古くなったり異常になったりした細胞が自ら死んでいく「細胞死」のことです。ビタミンDはガン細胞においてアポトーシスを誘導し、排除する働きを助けます。

【血管新生の阻害】
ガン組織は自らに栄養素を供給するために新しい血管(新生血管)を作って増殖しますが、ビタミンDにはこの血管新生を阻害する作用が報告されています。

【免疫機能の調整】
ビタミンDは免疫細胞を活性化させ、ガン細胞を攻撃・排除する能力を高めることにも寄与します。実際に血中のビタミンD濃度が低い人は大腸ガン、乳ガン、ぜんりつせんガンなどのかんリスクや死亡リスクが高いというえきがく研究が数多く報告されています。

【検査方法】
体内のビタミンDの状態を最も正確に反映するのが血液検査で測定される「25-ヒドロキシビタミンD(250HD)」の濃度です。この検査によって自身のビタミンDレベルを把握し、不足している場合は食事(キノコ類、魚類など)や適度な日光浴、必要に応じてサプリメントで補うことは、ガンになりにくい体づくりのための重要な一歩といえるでしょう。

②亜鉛(血清亜鉛検査)

【免疫とDNA修復の要】
亜鉛は私たちの体内に微量しか存在しませんが、300種類以上もの酵素の働きを助ける必須ミネラルです。その役割は、免疫機能の維持、細胞分裂、味覚の維持、そしてガン予防において極めて重要な「DNAの合成と修復」にまで及びます。

【免疫機能の正常化】
亜鉛は、ウイルスや細菌、ガン細胞などの異物を攻撃する免疫細胞(T細胞やNK細胞など)が正常に機能するために不可欠です。亜鉛が不足すると、これらの免疫細胞の働きが鈍くなり、発生したガン細胞を見逃し、増殖を許してしまうリスクが高まります。

【DNAの修復】
私たちの細胞では、日々DNAがさまざまな要因(紫外線、化学物質、活性酸素など)によって傷つけられていますが、体内にはそれを修復する酵素が存在します。亜鉛は、このDNA修復酵素が働くうえで必須の成分です。亜鉛が不足すると、DNAの傷が修復されずに蓄積し、遺伝子変異を引き起こし、やがてガン化につながる危険性が増大します。特に、食道ガン、とうけいガン、肺ガンなどとの関連を示唆する研究報告があります。

【検査方法】
体内の亜鉛の状態は、血液検査(血清亜鉛検査)で調べることができます。亜鉛不足は明確な自覚症状が現れにくいため、検査で客観的な数値を知ることは非常に有益です。もし不足が確認された場合は、まず食生活の見直しから始めることが推奨されます。この検査は、ガンに対する抵抗力、すなわち「免疫力」と「自己修復能力」のバロメーターとして活用できます。

『ビタミンDとケトン食 最強のがん治療』古川健司著(光文社)

③ヨウ素(甲状腺機能検査)

【代謝をつかさどるホルモン源】
ヨウ素は、こうじょうせんホルモンの主原料となるミネラルです。甲状腺ホルモンは、全身の新陳代謝を活発にし、体の成長や発達を促進する、生命維持に欠かせないホルモンです。ヨウ素の過不足は甲状腺機能の異常(機能こうしん症や機能低下症)を引き起こし、全身の代謝バランスを乱すことで、ガンが発生しやすい体内環境を生み出す可能性があります。

【甲状腺機能とガンリスク】
甲状腺機能の異常と、乳ガン、前立腺ガン、胃ガンなどのリスクとの関連が一部の研究で指摘されています。代謝の乱れが細胞のエネルギー産生やホルモンバランスに影響を与え、ガンの発生・進行に関与するのではないかと考えられています。

【ヨウ素の直接的な作用】
近年では、ヨウ素自体が持つ抗酸化作用や、にゅうせんなどの特定の組織においてガン細胞のアポトーシスを誘導する直接的な働きも研究されています。特に乳腺組織はヨウ素を取り込む性質があるため、ヨウ素不足が乳ガンのリスク因子の1つではないかという仮説も提唱されています。

【検査方法】
体内のヨウ素の状態を直接的に測ることは一般的ではありませんが、その影響を最も強く受ける「甲状腺機能」を調べることで、間接的にリスクを評価することができます。血液検査で、甲状腺ホルモンである「FT3(遊離トリヨードサイロニン)」「FT4(遊離サイロキシン)」と、甲状腺をコントロールするのうすいたいホルモン「TSH(甲状腺刺激ホルモン)」の3項目を測定するのが一般的です。これらの値のバランスを見ることで、甲状腺の健康状態、ひいてはヨウ素摂取の過不足の可能性を推測し、全身の代謝状態を把握する手がかりとなります。

今回ご紹介したビタミンD、亜鉛、ヨウ素(甲状腺機能)の検査は、ガンそのものを見つける直接的なマーカーではありません。しかし、これらの栄養素の状態を把握することは、「ガンになりにくい体内環境を維持できているか」という、より根源的なリスクを評価するうえで非常に有効な指標となりえます(後編に続く)。