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老化を止める新型ビタミン「5デアザフラビン」とは?

がん治療の進化を目撃せよ!

日本先進医療臨床研究会代表 小林 平大央

老化防止で脚光を浴びたNMNの数十倍のミトコンドリア活性を誇る「新型ビタミン」とは

小林平大央
[こばやし・ひでお]——東京都八王子市出身。幼少期に膠原病を患い、闘病中に腎臓疾患や肺疾患など、さまざまな病態を併発。7回の長期入院と3度死にかけた闘病体験を持つ。現在は健常者とほぼ変わらない寛解状態を維持し、その長い闘病体験と多くの医師・治療家・研究者との交流から得た予防医療・先進医療・統合医療に関する知識と情報を日本中の医師と患者に提供する会を主催して活動中。一般社団法人日本先進医療臨床研究会代表理事(臨床研究事業)、一般社団法人ガン難病ゼロ協会代表理事(統合医療の普及推進)などの分野で活動中。

これまで「老化」は生物の必然で、死と同様に逃れるすべはないと考えられてきました。ところが、最先端医学の世界では、「老化」は生物に必ず訪れる必然ではなく、ガンや心臓病のように「治療できる病気である」という認識に変わりつつあるのです。

例えば、ハーバード大学医学大学院教授のデビッド・A・シンクレア博士は、著書『LIFESPAN(ライフスパン)』の中で「人類は老いない身体を手に入れ、誰もが人生120年時代を若いまま生きられる」と語っています。また、オックスフォード大学で博士号を取得した計算生物学者のアンドリュー・スティール博士は、著書『AGELESS(エイジレス)』の中で「老いは生物の必然ではない」「死ぬまで健康でいられる時代が始まる」と語っています。

なぜ、この数年でこれほど老化に対する考え方が変わったのでしょうか。その根本的な理由は、テクノロジーの進歩にあります。ゲノム解析の技術が飛躍的に高まったことで生物の全遺伝子が解明できるようになり、これまで見えなかったものが見えてきたのです。そして、老化に関わる個別の事象を分解していくと、治療できる病気のようなものだということが分かってきたのです。

これを象徴的に表しているのがWHO(世界保健機関)から発表された「ICD(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)」です。ICDは、WHOが作成する病気の分類のことです。世界中の医療機関がICDをもとにして診断や医療統計調査を行っています。

ICDは、1990年に発表された第10版を2019年に約30年ぶりに変更し、第11版としました。10版と11版の大きな変更の一つが、老化を治療可能な対象としたことなのです。WHOがICDを発表した背景には、2010年にロンドンの王立科学院に集まった世界最先端の科学者たちが導き出した「老化は治療できる疾患のようなものである」という結論があったといわれています。

さて、「老化」とひと口にいっても、実は、その言葉が表す事象には大きく三つのレベルがあります。それは「個体レベルの老化」「細胞レベルの老化」「遺伝子レベルの老化」です。

個体や細胞のレベルで見ていた段階では、老化は生物の逃れられない運命と思われていました。ところが、遺伝子レベルまで見えるようになると、人類はこれまでとは違った情報を手に入れられるようになりました。そのカギを握るのが、寿命を延ばす遺伝子の発見です。

世界で初めて寿命を延ばす遺伝子が発見されたのは線虫からでした。「age1」という遺伝子を欠損させると線虫の寿命が100%延びる事実が再現性をもって確認されたのです。

「寿命を延ばす遺伝子がある」というのは、世紀の大発見でした。そして、これを契機に、寿命を延ばす遺伝子が続々と発見されました。

ところが、機能を損なうことで寿命を延ばす遺伝子では、人に応用することができません。そこで、活性化することで寿命を延ばせる遺伝子はないかと探されるようになりました。そして、見つかったのが「sir2遺伝子」です。sir2遺伝子は、活性化させることで単細胞生物である酵母(こうぼ)の寿命を30%延ばすことが判明したのです。人間でsir2遺伝子に相当するのは「サーチュイン遺伝子」です。

そこで、今度はサーチュイン遺伝子を効果的に活性化させる物質に関する研究が進みました。その結果見つかったのが、赤ワインに含まれる「レスベラトロール」や「NMN(ニコチンアミド・モノヌクレオチド)」というビタミンB3から作られる食品成分です。

NMNはレスベラトロールの数十倍強力で、マウスに投与した実験では、人間でいえば60代のマウスが20代に若返ったという驚くべき効果が発表されました。そして、NMNは一躍注目の成分となり、「若返りの妙薬」として世界中に氾濫(はんらん)するようになりました。現在、米国ではNMNを医薬品として申請する製薬メーカーが現れ、サプリメントとしての販売が禁止される状況になっています。

ただし、NMNはビタミンB3の骨格で、分子構造が不安定です。そのため、本来の性能を発揮できないケースも多いようで、劇的に効く場合もあれば、あまり効かない場合もあるらしいことが分かってきました。

そこで、ビタミンB3よりも安定した骨格であるビタミンB2の骨格を土台にして、NMNのような効果を発揮するビタミンB3の骨格を製作できないかと考えた科学者がいました。

そして、この発想の転換は驚くべきことに大成功を収めます。ビタミンB2から出発して、ビタミンB3の機能を持ち、本家のビタミンB3以上の安定性でその機能を発揮できるスーパービタミンが誕生したのです。

新型ビタミン「5デアザフラビン」を観察研究している、銀座アイグラッドクリニック院長の乾雅人医師

この新成分は、ビタミンB2の骨格をもとにビタミンB3の機能を再現すべく製作された、いわば新型ビタミンで「5デアザフラビン」とも呼ばれています。5デアザフラビンは、なんとNMNよりもサーチュイン遺伝子の活性が数倍高く、ミトコンドリアの活性に至っては数十倍も高いことが実験で判明しました。そして、さまざまな実験を経た後に動物実験が行われ、安全性や効果も非常に高いことが確かめられています。

現在、5デアザフラビンはサプリメントとして臨床の現場でさまざまな疾患に対して治療研究が行われています。そして、5デアザフラビンを観察研究している銀座(ぎんざ)アイグラッドクリニック院長の(いぬい)雅人(まさと)医師によると、臨床現場での診断的治療において高血圧、糖尿病、腎不全(じんふぜん)などに有効であったとの報告や、老化に伴うさまざまな症状、低体温などに対してかなりの効果があったという報告があります。

また、一例報告ですが、橋本(はしもと)(びょう)膠原(こうげん)(びょう)、自己免疫疾患)、アルツハイマー型認知症、パーキンソン病、脳梗塞(のうこうそく)に伴う神経変性疾患、うつ病などにも効果があったという報告もあります。

こうした報告から、日本先進医療臨床研究会では老化に伴う疾患や症状に対して新型ビタミン「5デアザフラビン」を使用した治療や予防の症例研究を行っていく予定です。