365調査隊
いつまでも活動的で自立した生活を送るために必要な筋肉。寝たきりにならないために筋肉を鍛えたいものの、年を取ったら衰える一方なのでは……。筋トレのウソ・ホントについて、調査隊が真偽を追究します。
ペースは遅いものの、筋肉強化は可能!
若かりし頃はスポーツで鍛えていた人も、年を取ると否が応でも体は衰えてしまうもの。たまに運動する機会があると思うように体が動かず、筋力の衰えを痛感することが誰しもあるでしょう。
しかし、こうした衰えを「もう年だからしかたがない」ですませてはいけません。実は、筋肉はいくつになっても鍛えられるものなのです。
「こと体作りにおいていえば、老いは止められないというのは誤解です。確かに、筋肉を作り出すサテライト細胞(幹細胞)は、加齢によって増殖機能が低下するので、筋トレをしても若い頃と同じペースで成果を得ることは難しいかもしれません。しかし、70歳を過ぎたシニアでも、適切なトレーニングを行えばちゃんと筋肉が成長することは実証されているんです」
そう語るのは、久我山整形外科ペインクリニックの佐々木政幸先生です。
筋トレのメカニズムとは、トレーニングによる刺激がサテライト細胞に伝わることで筋肥大(筋肉量の増加)を促し、筋線維を大きく育てるという流れ。そのサテライト細胞の増殖ペースが加齢によって低下するため、トレーニング効果も低下してしまうのはやむをえないことですが、それでも筋肥大はいくつになってもちゃんと起こるのです。
そこで大切なのは、高齢者には高齢者に適した負荷でトレーニングを行うことだと、佐々木先生は語ります。
「一般的に、なんとか10回反復できるくらいの高い負荷で筋トレを続ければ、高齢者でも筋肉は大きく成長させられます。しかし、続けられなければ意味がありません。まずは現状の筋力を維持することを目標にしてみてはいかがでしょうか」
具体的には、特別な器具などを使わない、「スクワット」や「腕立て伏せ」「腹筋運動」などが手頃でしょう。
「ただし、スクワットは負荷をかけすぎるとひざ関節を傷める原因になるので、無理のない回数から始めるようにしてください。また、腹筋にしても、無理に体を動かす必要はなく、床から10㌢ほど上体を起こし、その姿勢を維持するくらいのやり方で続ければ十分に効果はあると思いますよ」
なお、佐々木先生によれば、筋肉増強剤の投与によって、歩行困難だった高齢者が歩けるようになったという報告もあるのだそう。しかし、こうした薬には副作用がつきもので、根づいていないのが実状です。
結局、いつまでも活動的で自立した生活を送るめには、無理のない筋トレを地道に続けるのがいちばんということですね。