365調査隊
笑う門には福来るということわざがあるように、幸福をもたらす笑い。しかし、"笑い死に"という物騒な言葉も存在し、実は体に悪影響があるのかも……。そんな笑いに関するウソ・ホントについて、調査隊が真相に迫ります。
笑いは有酸素運動で声を出すとより効果的
笑うことで免疫力が高まるというのは、よく知られている話です。たまに腹を抱えて笑うようなことがあると、なんだか気持ちもスッキリしますし、心身を健やかに保つためにはいつでも楽しく笑っていたいものです。
しかし一方で、〝笑い死に〟という言葉があることを踏まえれば、あまり笑いすぎるのも体によくないのでは……と不安になってしまいます。
実のところ、人は笑いすぎで死んでしまう可能性があるのでしょうか? 福島県立医科大学医学部教授の大平哲也先生にお聞きしました。
「笑いすぎて死ぬことは、医学的にありえます。実際に笑いすぎが原因で心停止にいたった事例が海外で報告されています。というのも、笑いは有酸素運動なので、例えばマラソンなど過度の運動が不整脈や心筋梗塞を引き起こすのと同じことが起こりえるんです」
これはびっくり。日本では今のところそうした事例は確認されていないそうですが、心臓の弱い人はうかつに大笑いするのは危険かもしれません。
「笑いすぎて死ぬことがあるものの、笑いには有酸素運動効果とストレス解消効果の両方が期待でき、よく笑う人ほど寿命が長く、要介護になりにくいという報告があるのも事実です。国内の研究でも、日常生活でほとんど笑わない人は、よく笑う人に比べて、3年後に要介護になるリスクが約2倍、5年後に亡くなるリスクが約2倍になるというデータも確認されています。健康寿命を伸ばすために、やはり笑うことは大切でしょう」
気をつけなければならないのは、笑っている間は胸腔内に圧がかかり、血圧が上がることで、「前述の症状以外にも、失神や気胸などの〝副作用〟が海外では報告されています」と大平先生は語ります。つまり、笑いすぎにさえ気をつけていれば、よく笑ったほうが体にいいことに変わりはありません。実際、落語を聴いて笑うことで関節リウマチ患者さんの痛みが軽減する報告もあるほどです。
「重要なのは、なにで笑うかという手段ではなく、どの程度笑ったかということです。そして、できるだけ声を発して笑うように心がけると、適度な有酸素運動効果が期待できるでしょう。ぜひ、最低でも一日に一度は声をあげて笑ってください。〝笑う門には福来る〟といいますが、幸せだから笑うのではなく、笑うから幸せがやってくるというのが正しい順番です」
もともとは笑いと真逆の「怒り」の研究をしていたという大平先生。どちらの感情も、ため込まずに発散するのが健康に長生きする秘訣のようです。