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自分の可能性を 信じて夢を予定に 変えていこう!

杉浦貴之の「治す力は自分の中にある!」
『メッセンジャー』編集長兼シンガーソングランナー 杉浦 貴之さん

[すぎうら・たかゆき]——1971年、愛知県生まれ。28歳のときに腎臓がんを発症し、両親には余命半年、2年後の生存率0%と告げられ手術を受ける。以後、『メッセンジャー』編集長兼シンガーソングランナーとして精力的に活動中!

1999年、私は進行性の腎臓がんにかかり、両親には「余命半年、2年後に生きている可能性は0%」と告知されました。病床の私は、「もう1度、ホノルルマラソンに出たい! 願わくは、ゴールに婚約者が待っていて翌日にハワイで結婚式を挙げたい!」という壮大かつ無謀な夢を描いていました。

6年後の2005年、ホノルルマラソン完走という夢の半分が叶いました。2008年には、病床で描いた夢のとおり、ホノルルマラソン完走の翌日にホノルルの教会で、たくさんの仲間に祝福されながら結婚式を挙げることができたのです。

「病気を治すことを人生の目的とするのではなく、夢を持ち、向かっていくことで人間の可能性がより引き出される」ことを確信した私は、もっとたくさんの人に元気になってもらいたいと思うようになりました。2010年には、がん患者さん、家族、サポーターたちが参加する「がんサバイバーホノルルマラソンツアー」を立ち上げました。

2010年の新年早々、私はブログやSNS、メールマガジンでこの企画に対する想いを語り、まだ1年も先のホノルルマラソンの参加者を募っていきました。周りの人たちから「気が早い」といわれましたが、チラシやブログでホノルルマラソンツアーのことを伝え、がん患者さんたちにとっての〝希望の光〟になることを願いました。

19年前に受けた手術直後は、激しい痛みからトイレに行くのもつらかったのですが、その1歩1歩のゴールが便器ではなく、ホノルルのゴールだと連想できたとき、1歩1歩がほんとうに力強いものになりました。1日も早く、多くのがん患者さんに、私のようなすてきな連想をしてもらいたかったのです。

その後、この企画は新聞に取り上げられたり、私自身がNHKの『ラジオビタミン』というラジオ番組に出演させていただいたりして、多くの人に知られることになりました。そして私も、ホノルルマラソンツアーの企画について、トーク&ライブで伝えていきました。

2010年8月31日、石川県内の高校でトーク&ライブをしました。トーク&ライブが終わると、会場にいたTさんという一人の女性が校長室にいた私を訪ねてきました。Tさんは私にこう伝えました。

「私は4年5ヵ月前に悪性リンパ腫を患いました。骨髄移植を試みたものの、前段階で受けた無菌室での抗がん剤治療の副作用で心不全・腎不全を起こし、移植できずに退院したんです。その後、7回の再発の末、今年3月に『余命6ヵ月』と告知されました。そんなときに杉浦さんのブログで、がんサバイバーホノルルマラソンツアーへの熱い想いを読み、自分のこととしてとらえはじめました。まずは歩くことから始めて、いつかはホノルルマラソンに出たいです」

私はTさんに答えました。

「まず、校長室まで来てくれた行動力がすばらしいです。がんを治す第1歩を踏み出されたのだと思います。ホノルルマラソンまでまだ時間はありますので、ゆっくり考えてみてください。心がほんとうに行きたいと感じたら、GOですよ」

治療中で体調が万全でないTさんの姿は、かつてがんを克服した人に会いに行っていた自分と重なりました。そのときのTさんは、告知された余命の期限まであと1ヵ月と迫っていましたが、そんなふうにはまったく見えないくらい元気そうでした。

そして迎えた9月18日。この日はTさんが半年前に余命の告知を受けた日、そう、つまり余命告知の期限の日。Tさんは親元を離れて暮らしている子どもたちを集めて家族会議を開きます。家族は最期の言葉でもいわれるのかと思っていたそうです。ところが、Tさんはホノルルマラソンに参加する決意表明をしたのです! 家族全員、腰を抜かすくらい驚いたそうですが、Tさんがホノルルマラソンへの熱い想いを語ると、最後はみんなが応援エールを送ってくれたそうです。

翌日、Tさんはがんサバイバーホノルルマラソンツアーへ正式に申し込み! Tさんの夢が予定に変わった瞬間でした。

それから1ヵ月後、Tさんからうれしいメールが届きました。毎日ワクワクしながら歩いたり、走ったり、ほんとうに楽しい日々を過ごしていたら、何の治療もしていないのに、4年間ずっと4桁だった腫瘍マーカーの数値が初めて3桁に下がったという内容でした。

「自分を生きる」と決意するだけで、自己治癒力が湧き上がるのかもしれませんね。

杉浦貴之 | 「命はやわじゃない」、がん・余命半年から19年を経過し、ますます元気になった男が伝えるメッセージ
杉浦貴之「がん余命半年から16年目を迎えて」 マガジンと歌とRUNで伝える「命のメッセンジャー」
この記事は「健康365」2018年12月号に掲載されています。