股関節のレントゲン検査も大切だが、股関節の動きや周辺の筋肉の緊張度合いの把握も大切
変形性股関節症の患者さんからよく伺うことですが、「病院ではレントゲンは撮るけれど、先生は股関節を触らない」そうです。病院では「手術」を前提にした診断をする傾向があるため、股関節の骨の変形の進行度合いを診るのはあたりまえだと思います。
もちろん、骨の変形の進行度合いを把握するのは大切です。しかし、私は股関節の動きの程度や周りの筋肉の緊張度合いも判断基準に入れることが重要だと考えています。
私が変形性股関節症の方を施術してきて感じているのは、股関節の動きの制限と筋肉の緊張(硬さ)の程度によって日常生活を送るうえでの注意点やケアのしかたが異なるということです。次にご紹介する分類法で、自分の股関節の状態を把握しておくといいでしょう(「変形性股関節症の動きと痛みの分類法」の図参照)。
分類のしかたは大きく3つに分けられます。1つ目は軽度です。軽度は、股関節の可動域(動かすことができる範囲)の制限はないけれど、動かすときに痛み(動作時痛)が出る場合です。軽度であれば、この連載を通じてご紹介する冨澤式「股関節温存療法」のマッサージ法とストレッチ法によって速やかな改善が見込めるでしょう。その後は悪化しないように、股関節に負担をかけない筋トレなどを加えていきます。
2つ目は中等度です。中等度では、股関節の可動域は通常の半分程度で、動作時痛や鈍痛が伴います。中等度の場合は、冨澤式「股関節温存療法」のマッサージ法とストレッチ法を入念に指導し、生活の中で痛みを引き起こす原因となっている動きを把握して改善していきます。
3つ目は重度です。重度では、股関節の正常な動きがほぼできません。股関節がほとんど動かせないため、動作時痛や鈍痛が強い傾向にあります。重度の場合は、冨澤式「股関節温存療法」のマッサージ法が有効で、お風呂上がりに適切な部位を入念にマッサージするように指導します。ご家族がいれば、マッサージを手伝ってもらってもいいでしょう。当院に通われている患者さんの中でも、家族のサポートを得ながら順調に快方に向かっている方がいます。
軽度・中等度・重度のどの分類にも共通するマッサージ法とストレッチ法がある
ほとんどの変形性股関節症の方に共通している悩みは、股関節の動きが悪くなることも1つですが、いちばんには痛みが引かないことが挙げられます。股関節の痛みを素早く改善するために有効なのが、冨澤式「股関節温存療法」のマッサージ法とストレッチ法です。
アプローチする筋肉は太ももの前面と側面についている「大腿筋膜張筋」と「外側広筋(大腿四頭筋の1つ)」です(「股関節周辺の筋肉の名称」の図参照)。この筋肉が緊張してくると大腿骨を上方に引っ張ってしまい、大腿骨頭(大腿骨の上端にある球状の部分)と寛骨臼(大腿骨頭の受け皿となる骨盤のくぼみ)からなる股関節を圧迫して軟骨が摩耗し、骨の変形を進行させてしまうおそれがあるのです。
そのため、太ももの筋肉を常に柔軟にほぐしておくことが大切です。冨澤式「股関節温存療法」のマッサージ法は、すべての分類に共通して必要なアプローチといえます。
症状の分類別に必要なアプローチがある。無駄なことを省いて効率的に効果を上げよう
私は、患者さんに継続してセルフケアを行ってもらうために、無駄な時間をかけないで効率的に効果を出せる方法を指導しています。変形性股関節症と診断された方は、治療をせずに放置すれば徐々に症状が進行します。変形性股関節症は、自然治癒が難しい、慢性的に進行する疾患なのです。だからといって、マッサージに通ったり健康食品を飲んだりして、他力に頼ってばかりでは経済的にも負担となって長続きしません。
こんな言葉を聞いたことはありませんか――「釣った魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ」。継続は力なりです。次回から分類別のアプローチ法に関する詳しい内容を掲載していきます。
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