変形性股関節症の温存療法は早ければ早いほど効果的
私は整体師を経て柔道整復師となり、足腰の悩みを抱えて全国から来院される、年間2000名以上の患者さんの施術に当たっています。長年、変形性股関節症の方を施術してきて感じるのは、症状が悪化してから当院に来る方がほとんどということです。気持ちは分かりますが、変形性股関節症のケアは早ければ早いほど改善が早く、とてもよい状態を保つことができます。私がこの連載を通じてご紹介する冨澤式[股関節温存療法]を覚えて実践すれば、自分で変形性股関節症の「痛み」「動き」「筋力低下」を改善できるだけでなく、将来的に手術のリスクを回避できる可能性も高まります。
筋肉はケアをしなければ、衰えて硬くなっていく一方です。たとえ人工関節置換術を受けたとしても、手術しっぱなしで放置するのでなく、制限の範囲内で危険な動きがないマッサージやストレッチ、筋トレなどを最低限行うことが必要です。冨澤式[股関節温存療法]は、すでに手術した人も、まだ手術を迷い考えている人も覚えて損はない方法といえます。
「ひどくなるまで様子を見て手術を検討しましょう」では放置状態?
私は、変形性股関節症の方が受け身的で、医師に依存しすぎているような気がしています。医療機関を受診するさい、「先生、何とかして」と医師に治療を丸投げして、自分の痛みや症状が悪化した理由(原因)ときちんと向き合っていないような気がするのです。治療を丸投げしてしまえば、「医師のいうことは100%正しい」と信じて従うほかありません。
例えば、医師から「前回より少し股関節の間隔が狭くなっていますね。湿布と痛み止めを出しておきますので、しばらく様子を見て、これ以上ひどくなるようだったら手術を検討しましょう」といわれ、年月ばかりが経過して結局症状が悪化してしまう――これは、治療ではなく、放置しているのと同じではないでしょうか? 医師とのやり取りに疑問を持たず、病院に通いつづける患者さんがたくさんいることが問題なのです。
変形性股関節症の痛みが一時的に回復した場合も油断は禁物
変形性股関節症の痛みは一時的に回復することがありますが、このときがいちばん危険だといえます。なぜなら、変形性股関節症が徐々に進行しているにもかかわらず、一時的によくなったことを「治った」と錯覚してしまうからです。股関節の周辺では筋肉が確実に硬くなり、動きも悪くなっているのです。
なぜこのようなことが起こるのでしょうか。痛みが強く出ているとき、皆さんはどうしますか。おそらくほとんどの人は、痛いから外出を控えるなど、動きを少なくするでしょう。安静にすると股関節の周辺の炎症が治まって自然治癒力が働き、一時的に回復することがあります。
しかし、変形性股関節症自体が治ったわけではありません。一時的によくなったからといって動きすぎると、股関節の周辺に炎症が起こって痛みが強くなります。
ただし、動かなすぎても痛みが改善することはありません。動かないと関節の拘縮(柔軟性が失われ、動かすことのできる範囲が制限されること)が起こって、関節が固まったように動かなくなります。すると、動かすときに「初動作痛」という痛みが発生するようになるのです。初動作痛は通常、少し動いているうちに緩和されていきます。
股関節によいといわれている運動は一所懸命にすればするほど痛くなる?
動きすぎることによる痛みは、関節に負担をかけることで起こる炎症的な痛み。動かなすぎることによる痛みは、関節の拘縮による初動作痛です。適度に動くことはおすすめしますが、必要以上に動くのはおすすめできません。
テレビや雑誌などで、変形性股関節症によいとされる運動が紹介されていることがありますが、実際に行ってみると痛みが強くなる方が多くいます。これは、股関節によくない運動だからではないでしょうか? あおむけでお尻を上げる殿筋運動や股関節を開く運動、足上げ運動、スクワットはやらないほうがいいでしょう。
また、ウォーキングは大股で行うのがよいなどといわれますが、その理由は筋力がつくからです。確かに負担をかければ筋力アップにつながりますが、同時に股関節にも相当の負担がかかってしまうことになります。
関節への負担を軽減させるには、筋力強化が不可欠です。しかし、筋力が低下している方が大股でウォーキングをして筋力がつくかというと、筋力がつく前に関節が壊れてしまいます。変形性股関節症の方にとって過度に股関節に負担をかける運動は厳禁です。くれぐれも注意するようにしてください。
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