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ADHD女子・雨野千晴のうっかりさんでもちゃっかり生きる!第4回

ADHD女子・雨野千晴のうっかりさんでもちゃっかり生きる

雨野 千晴

続けることが苦手な私。でも、飽きっぽさが強みになる!

[あめの・ちはる]——北海道生まれ。北海道教育大学札幌校卒業。公立小学校教員として10年間勤務。2017年にADHD(不注意優勢型)と診断。現在はADHD専門ライフコーチ、NPO法人代表理事、福祉事業所スタッフなど"多動な"複業活動を展開中。

ADHDタイプの方は「継続するのが苦手」な人が多いようです。「これをやりたい!」と意気込んで始めても続かない。多趣味だけど極められない。仕事についても転職を重ねている、という方も。ADHD脳の人は飽きっぽいんですよね。「今、この時の関心事」がいちばんだから、同じことが続くと飽きてきてしまう。

私もそんな「継続弱者」の一人です。子どもの頃の習い事、ピアノ、習字、茶道、水泳、英会話……何ひとつ続いていません。学校で聞かれる将来の夢は、毎年違うことを書いていました。ラーメン屋さんにケーキ屋さん……その時食べたいものがすなわちやりたいこと(笑)。

成長するにつれて、次々と興味が移る自分を「なんで私ってこうなんだろう」「根性ない、ダメだなぁ」と、自分を責めるような、焦るような気持ちを持つようになりました。

そんな私の意識を変えてくれたのは、堀江貴文さんの著書『多動力』(幻冬舎)です。この本と出合い、「飽きっぽい性質だって強みなんだ!」と思うようになりました。一つのことを実直に続けて技術を磨き上げていく、職人タイプな生き方に今も憧れはありますが、そういう人と比較して、同じようにできない自分を責めることはなくなりました。「石の上にも三年」だけが強みではない。新しい場所や分野に飛び込んで、いろいろな人と広く関われるのは、多動だからこその強みなのです。

「ホリエモンのように多動力を生かしていくぞ!」と、2017年に小学校教員を退職した私は、自分らしい多動な生き方に挑戦してみようと、やりたいことに片っ端からチャレンジしました。その中の一つがお祭りの開催です。私は子どもの頃から夏祭りが大好きでした。人がたくさん集まってきて、いろんなお店があって、花火が上がって……。お祭りは私にとって、わくわくの塊だったんです。そこで退職した翌年から、障害の有無に関わらずみんなで作ってみんなで楽しむお祭り「あつぎごちゃまぜフェス」を始めました。勉強会や研修のような切り口でなく、音楽・マルシェ・アート展など、楽しいことを開催して「障害」に関心のない人ほど巻き込みたい。「楽しいお祭りに行ってみたら、いろんな人と友だちになっちゃった!」となることがコンセプトです。

あつぎごちゃまぜフェスの開催2年目から毎年出演してくれている「スロバラSUNZ」というバンドがあります。放課後等デイサービスの子どもたちと支援スタッフによるバンドで、長男の療育園のイベントで出会いました。ポップなオリジナル曲をノリノリでみんなが演奏する様子が最高で、私の「推し」バンドの一つです。

ある年、ごちゃまぜフェス出演時のMC中にスロバラSUNZのメンバーから「スタッフを募集しています!」とアナウンスがありました。私も司会者として「ぜひ応募してください!」とPRしました。その後、コロナ禍に突入。当時収入の柱の一つだった経営コンサルティング会社との業務委託契約が更新されずに終了してしまいました。急なことに呆然となっていた時、お祭りで「スタッフ募集中!」といっていたバンドメンバーの言葉を思い出したのです。

そうして今、私はスロバラSUNZが活動している福祉事業所で、支援スタッフ兼PRディレクターとして週三日間働いています。福祉の仕事をやりたいなんて、これまで一度も思ったことはなかったのですが、私のパラレルキャリアの主軸の一つになっています。趣味で始めた大好きな「お祭り」にご縁をいただいて飛び込んだ世界。「推しバンドをPRする仕事なんて最高すぎるなぁ」と、楽しく働いています。

今、生き方は選べる時代です。コツコツ継続型だって、飽き性多動型だって、「こうだからダメ!」なんてことはありません。多動な私たちは、次々と出会う人・もの・場所をつなぐことで、そこから思いもかけないギフトがもらえたりします。

「スティーブ・ジョブズは『点と点をつなげていくと、いつの間にか線ができる』といったが、あちこちハマっていくうちに、網の目のように散らばった点と点とが思わぬところでつながるのだ」。堀江さんの『多動力』に書かれていた一節を体感する毎日です。

イラスト/雨野千晴