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私の〝消臭革命〟は、これからも続きます

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理学博士 大野 秀隆

注目の記事―消臭

30年前に開発した消臭食品は女性の間で〝三種の神器〟といわれ大ブームになりました

[おおの・ひでたか]——1930年、東京都生まれ。1953年、東京薬科大学卒業。東京大学医学部薬学科薬品分析化学教室で研究を重ねる。理学博士。「悪臭成分を化学的変化で分解・消失させる」画期的な発想から開発した悪臭対策エキス(OS液)が〝消臭革命〝として大反響を呼ぶ。以後も研究を重ね、進化させた消臭食品(緑酵ビタミン)を完成。若者から高齢者まで、世代を超えた悪臭問題の解決に取り組んでいる。

いまから30年前に私が開発した消臭食品は、画期的な発明として日本中で大ブームを巻き起こしました。私は新聞やテレビで〝消臭博士〟と呼ばれ、研究は〝前代未聞の消臭革命〟と絶賛されたのです。

実際に、私のもとには消臭食品を試した多くの人たちから喜びの声が届きました。感謝の声をいただくたびに、「これほど多くの人が悪臭問題を抱えて、日々悩んでいたのか」と驚かされたものです。

私が開発した消臭食品は当初、私の名前を取ってOS液(オオノ・スペシャル液)と名づけられていました。この消臭食品が世に出たのは、1989年のことです。口臭対策用として小瓶に入れたり、お菓子に配合したりしましたが、思ったほどの反響はありませんでした。

ところが、便臭対策用としてあらためて世に送り出すと、驚くほどの反響があったのです。便臭に困っている人が多いことを知ったのは、私のもとに届いたある一通の手紙がきっかけでした。手紙には、「口臭が消せるのなら、便や尿の悪臭も消える食品を開発してください。私はいま、寝たきりの高齢者の世話をしていますが、おむつを交換するときに、あのにおいさえなければと、いつも思っています」と書かれていました。

私はすぐに、腸溶剤ちょうようざい(大便が作られる大腸で溶けるように設計された製剤)の中に消臭食品を配合したサンプルを作り、老人施設で試してもらいました。複数ある大部屋のうち、一部屋の入所者さんたちだけに消臭食品をとってもらったところ、他の部屋ではこもっていた便臭が驚くほど消えていたのです。

ある入所者の方のご家族は、訪問のたびに入所者の方の体から発せられる体臭や便臭に耐えられず、10分以上の滞在ができなかったそうです。いつも用件を手早く済ませて早々に帰っていたそうですが、入所者の方が消臭食品をとるようになってから、1~2時間も長居できるようになったと喜んでいました。消臭食品をとっている入所者の方の部屋から便臭が消えて笑い声が聞こえるようになると、職員の方たちは「においだけでこんなに雰囲気が変わるなんて」と驚いたそうです。一方の消臭食品をとっていなかった入所者の方のご家族は、ほとんどが手早く用を済ませ、そそくさと帰っていました。このエピソードを聞いた私は、消臭食品の効果と必要性をあらためて実感したのです。

便臭に対する効果を確認できたものの、空前の消臭ブームを作ったのは若い女性たちでした。消臭食品は、トイレの残りを気にしていた女性たちの間で大人気となり、当時は口紅、ポケットベルとともに、若い女性にとっての〝三種の神器〟といわれました。

1995年には、日本経済新聞社が発表したヒット商品番付で「前頭まえがしら」を獲得。以後、私はテレビやラジオ、新聞、雑誌などのインタビューを受けながら、イギリスやフランスから来たマスコミの取材も受けました。私が開発した消臭食品は、世界的な消臭革命を起こしたと自負しています。

ニンニクが嫌いだった妻とのトラブルを解消するために消臭研究を始めました

毛髪分野の研究でも多くの実績を残している大野博士は、医療・美容研究で高名なスペインのホセ・カルベット博士といっしょに研究に取り組んだ

私が消臭食品を開発するようになったのは、極めてささいな出来事がきっかけでした。でも、私にとっては、どうしても解決しなければいけないことでもありました。

私はニンニクが大好きなのですが、33歳のときに結婚した妻は、大のニンニク嫌いでした。ニンニクが入った料理を食べた後、ていねいにうがいをし、時間をかけて帰宅しても、妻にはすぐにニンニクのにおいに気づかれてしまいました。

とはいえ、大好きなニンニクを絶つことは、どうしてもできませんでした。ごまかしながら食べつづけているうちに、とうとう妻から「別の部屋で寝てください」「もう同じ家にはいられません」といわれてしまったのです。

ある日、友人に「大好きなニンニクを絶つか、妻と別れるか、いよいよ決めなければいけなくなった」と相談しました。すると友人から、「キミは科学者だろう。ニンニクのにおいを消すものを開発すればいい。研究が成功すれば、奥さんと別れることなく、好きなニンニクを毎日たくさん食べられるじゃないか」といわれたのです。

東京薬科大学に入学したときの大野博士

当時の私は、東京薬科大学や東京大学で薬品分析化学を研究した後、製薬や化粧品、健康食品の研究に携わっていました。さまざまな商品開発も経験していましたから、ニンニク臭を消すものを作るのはそんなに難しいことではないと思いました。私は思いきって会社を辞めて独立し、ニンニクのにおいを消す方法の研究に注力するようになりました。

ニンニクのにおいを消すための手段として、においを他の香りで覆い隠すマスキング法と、におい物質を根本から消し去る分解法の二つを考えました。しかし、残念ながら、ニンニクの強烈なにおいを覆い隠せる素材は見つかりませんでした。そこで私は、ニンニクのにおい成分を化学的な変化によって分解させる研究に取り組むことにしたのです。

研究を始めてみると、ニンニクには20種類以上のにおい成分が含まれていることが分かりました。つまり、ニンニク臭を分解するには、20種類も存在するにおい成分になんらかの化学的変化を起こさせて、無臭成分に変える必要があるのです。しかも、体の中で化学変化を起こすのですから、体にとって安全な素材でなければなりません。

介護現場で深刻な悪臭問題を解決し高齢者の健康維持にも役立ててほしいです

研究を重ねた私は、緑茶エキスと植物由来の酵素、ビタミンなどの組み合わせによってニンニクのにおい物質を分解できることを突き止めました。消臭作用をもたらす素材の特定や配合は、実験の積み重ねに基づく経験、そして動物的なカンによって導き出されたと考えています。そしてついに、妻が「これなら我慢できます」といってくれたことで、念願の消臭食品を完成させることができたのです。消臭の研究を始めてから、10年以上の月日がたっていました。

完成した消臭食品の効果を認めてくれたのは、妻だけではありませんでした。東京大学工学部で行われたガスクロマトグラフィー(成分をガス化して行う化学分析法)による分析でも優れた消臭効果が確認されました。さらに、この消臭食品は、ニンニクのにおいのみならず、さまざまな悪臭物質を分解し、消失させることも分かったのです。

その後、私はこの消臭食品に含まれるエキスを、主要素材の緑茶エキスから取って「カメリアコンク」と名づけました。緑茶はツバキ科の植物で、学名を「カメリア・シネンシス」といいます。コンクは濃縮という意味です。カメリアコンクには、植物由来の酵素やビタミンも含まれているため、「緑酵りょくこうビタミン」とも呼ばれています。

大野博士は現在89歳。伝説の消臭博士は、東京都にある自宅から神奈川県まで毎日仕事に通うほど元気いっぱい。大野博士の消臭革命はこれからも続きます!

ニンニク臭を対象に研究を始めた消臭食品は特許を取得。その後、体臭や口臭、便臭、尿臭の解決を目指して研究を続けていくうちに、体から発生する悪臭の根本的な原因が、腸内環境の状態にあることが分かりました。腸内にすむ善玉菌と悪玉菌のバランスを整えることで、腸から発生する腐敗臭を防ぎ、全身からの悪臭の発生を抑えられるのです。

腸内環境が改善されて腸の機能が向上すると、食事からとった栄養素が適切に吸収されるようになります。特に高齢者にとって栄養素が十分に吸収される体を作ることは、健康を維持し、健康寿命を延ばすうえで非常に大切な要素です。

超高齢社会を迎えた現在、介護の現場では人手不足が深刻になるなど、問題が山積しています。私が開発した〝本物の〟消臭食品は、中高年を中心とした悪臭問題の解決のみならず、高齢者の健康維持にも貢献できると考えています。