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女性のがん患者さんにウィッグのレンタルをしています

ニッポンを元気に!情熱人列伝

法人ウィッグリング・ジャパン代表理事 上田 あい子さん

抗がん剤治療に伴う副作用で女性を悩ませる「脱毛」の問題。がん治療に臨む女性たちに向けて独自のサービスを展開するNPO法人ウィッグリング・ジャパンの活動に注目が集まっています。

[うえだ・あいこ]——1974年、福岡県生まれ。中学・高校・大学とバレー部で活躍。KBC(九州朝日放送)入社後、情報番組の制作に携わる。退職後、2007年に女性の社会進出やキャリア支援を行うマーケテイング会社を設立。以後、女性のがん患者向けのウィッグレンタルサービスを行うウィッグリング・ジャパンを設立するなど、女性目線を大切にした活動を展開。

私が代表理事を務めるNPO法人ウィッグリング・ジャパンは、抗がん剤治療を受ける女性のがん患者さんにウィッグ(かつら)をレンタルする活動を行っています。

活動を始めたきっかけは、30代でがんの告知を受けた友人の存在でした。彼女は治療を受けるにあたり、周りにがん治療の経験者がいないことに不安を感じていました。「抗がん剤治療を受けると髪が抜けるらしいし、仕事もできなくなるし、どうしたらいいのか分からない」と、とても落ち込んでいたんです。

彼女の不安を少しでも軽くしたいと思った私は、「美容的な外見のケア(ウィッグ)で気持ちを元気にできるのではないか」と思い、2010年2月に活動をはじめました。

昔から「髪は女の命」といわれます。がん治療に必要とされる抗がん剤治療ですが、副作用として脱毛が起こる場合が多いのもまた事実です。

女性にとって髪を失うことで受ける精神的なダメージは計りしれません。脱毛をサポートするウィッグは、女性にとって大きな心の支えになりますが、医療用のかつらは高額ゆえ、抗がん剤治療を進めていく上で経済的負担となることも多いのです。抗がん剤に立ち向かう体の負担と脱毛によって受ける精神的負担を減らすことで、友人を励ましたいと思いました。

私たちはいつ、どんな病気になるか分かりません。「病気になっても不安が少ない社会を創りたい」という想いだけで活動を始めました。

治療を終えた患者さんが使ったウィッグを、必要な患者さんに届けています

ウィッグリング・ジャパンでは、がん治療を終えた患者さんから治療中に使っていたウィッグをご提供いただき、これからがんと闘う女性たちへと再提供するサイクルをサポートしています。寄付されたウィッグは専用の機械でクリーニングしているのでとても清潔です。これまでご提供いただいたウィッグの数は4000個を超え、10年間で全国1000人以上の患者さんのサポートを行ってきました。

実際にウィッグのレンタルを希望される方々とお話しすると、年齢や生活環境はもちろん、がんの治療法や悩んでいる副作用など、一人ひとり異なることが分かります。共通しているのは、それぞれの患者さんが先の見えない不安を抱えて治療にのぞまれていることです。私たちは、そのような不安や悩みを同じ経験をしたスタッフが対応しながら、患者さんたちの心にも寄り添えるように努めています。

がん治療を乗り越えた方々から闘病する女性へウィッグを提供することで、がんと闘う勇気をつなぎ、笑顔と希望を届けたいと思っています。そして、治療を無事に終えたときは、女性としての自信と喜びを取り戻していただきたいと願っています。これからも、ウィッグを通じてがんと闘っている女性たちに寄り添い、勇気を届ける活動を続けていきたいと思っています。

抗がん剤治療を終えた女性から提供されたさまざまなデザインのウィッグを試すことができる

美容室と提携した「アピアランスサポートサービス」も好評です

がん治療は医師を中心に医療従事者によって行われますが、治療費や仕事など生活上の不安や悩みを相談する場所がないことに不安を持つ患者さんが多くおられます。病医院以外で不安や悩みを相談できる場所を増やし、社会全体でがん患者さんを支える取り組みの一つが、美容室と提携したアピアランスサポートサービスです。

この取り組みは、外見や容姿の変化に不安を持つ女性に、治療環境や生活背景などを十分に考慮しながら、美容のプロである美容師が脱毛時から発毛時のアドバイスを行うものです。さらに、毛髪と頭皮の状態に合わせたアピアランス(外見)サポートも行っています。専門的な教育を受けた美容師さんが患者さんの希望に合ったウィッグをアドバイスし、自然なヘアスタイルやメイクも行うことで、患者さんの笑顔を引き出してくれるのです。

美容室は髪を切るだけでなく、おしゃれや気分転換を楽しめる生活の一部といえます。病気になってもそれまで通り、自分のことはもちろん、お子さんやお孫さん、ご家族の話ができる身近な場所であってほしいと思います。私たちが提案するアピアランスサポートサービスに共感し、普及に力を貸していただける美容室を募集しています。女性のがん患者さんが悩む外見の変化に対する不安や心のケアを中心に、ともにサポートできる場所を増やしていきたいと思っています。

認定ピアサポーター養成講座を受講した美容師さんと連携して活動を行っている

「人生は出会いによって変わる」ことをいつも実感しています

大学生の息子さんの母親でもある上田さん

大学を卒業後、福岡のテレビ局に就職した私は、約11年間、テレビ番組の制作をしていました。不規則な毎日の中、育児をしながらフルタイムで働きつづけましたが、ついに体調を崩してしまったんです。会社の中で弱音を吐けなかった私は、同じように働くママ友の仲間たちにとても救われました。孤独を感じていた自分の経験から、仲間作りや情報ネットワークの必要性を感じるようになりました。いまは、ママたちとランチ会を開いたり、専門家といっしょに医療セミナーを開催したり、リアルで出会える場を作っています。自分の人生を振り返って、出会いで人生は変わることをつくづく感じています。

YouTube「チアーズチャンネル」の動画収録はテレビ局勤務時代の経験が生きているそう

最近では、YouTubeでチャンネルを開設して、専門家を突撃インタビューする動画の配信も始めました。笑顔と勇気を届ける「情報コミュニティ」を構築して、女性を孤独にしない社会創りを目指していきます。