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成長する自分を知ると元気が湧いてくるんです

私の元気の秘訣
歌手 中尾 ミエさん

『可愛いベイビー』で歌手デビューを果たし、女優・コメンテーターとしても幅広い世代から人気を博している中尾ミエさん。芸歴58年目を迎えた現在も、成長するために日々の努力を欠かさないそうです。そんなエネルギッシュな中尾さんに、元気の秘訣を伺いました。

一家で四畳半暮らしの家計を支えるために芸能界入りを決めました

成長を感じることが原動力という中尾さん

私がもの心ついた頃、両親は福岡県の小倉こくらで書店を営んでいました。自営業ですから毎日忙しく、それでいて子どもが6人もいたものですから、とても一人ひとりていねいにめんどうを見られるような環境ではありません。そのため、それぞれ習い事に通わされることになり、私は3歳からバレエを、そして小学生になってからピアノやタップダンスを習いはじめたんです。

一方で、あまり記憶に残っていないものの、歌うことは幼い頃から好きだったようです。書店にやって来るお客さんたちの前でよく、美空みそらひばりさんの歌を披露していたそうですよ。

ところが、小学生になったある日、一家で東京に引っ越すことになったんです。当時はとにかく家計が苦しくて、両親と兄弟姉妹を合わせた8人家族で、四畳半一間で暮らしていました。

そこで、少しでも家計を助けたいと考えて、芸能プロダクション入りを決めました。歌手になりたいと望んでいたわけではありませんでしたが、他にできる仕事もなく、あくまで自然の流れに身を任せて芸能界入りしました。私は子どもの頃からどこか達観したところがあって、「人の運命はもともと決まっている」と信じていました。どのみちなるようにしかならないのだからと流れに逆らわずに進んでいたら、いつの間にかデビューが決まっていた感じですね。それが15歳のときのことです。

だから、早くも16歳で『可愛かわいいベイビー』が大ヒットしたさいも、それが特別なことであるとは思いませんでした。「芸能界とはこういうところなんだな」と、まるで他人事ひとごとのように感じていたのを覚えています。

ただ、生活は多忙を極めました。満足に睡眠も取れない日々で、もちろん遊びに出かける余裕もありません。肉体的にはかなりつらい思いをしていましたが、精神的にそれほど苦痛に思わなかったのは、お金を稼いで家を建てたいというはっきりとした目標があったからでしょうね。四畳半一間の生活から早く抜け出したかったんです。

幸いにして体は生まれつき丈夫なほうで、これまで大病を患ったことは一度もありません。というよりも、健康でなければ今日までこの仕事を続けることはできなかったでしょうね。

芸能界は生活が不規則で、ちょっと気を緩めると睡眠も食生活も乱れてしまいがちです。だから私は、この仕事をできるだけ長く続けていくために、30歳になったときにあらためて生活習慣を見直しました。早寝早起きを守り、忙しくても一日三食しっかりとることを徹底。食事の内容も、とにかくバランス重視で、まんべんなく栄養を摂取するよう心がけました。

仕事が夕方からの日でも、毎朝8時には起きると決めました。そのぶん、高校に進学できなかった私は、英語の勉強などに時間を費やすのが楽しかったですね。

目標に向けてがんばれば人はいくつになっても成長することができます

[なかお・みえ]——1946年、福岡県生まれ。1962年にデビュー曲『可愛いベイビー』が大ヒットして一躍スターになる。1963年、歌手では初めてとなる映画製作者協会から新人賞を受賞。森山良子さんとのコンビで出演した『ミエと良子のおしゃべり泥棒』(テレビ東京系列)では表現力の多彩さを発揮してゲストの本音を聞き出し、その後のさまざまなトーク番組に影響を与える。最新CD『すれちがい‐It’s my life‐』が絶賛発売中。

こうした行動はいまでも変わりません。例えば、大人になってから始めた水泳も、単なる体力維持にとどめず、ウーマンズ・マスターズ水泳競技会に出場するという明確な目標を掲げて取り組んできました。

何事もやるからには目標を設定することが重要で、目標がなければ継続できません。なにより、トレーニングを続けることで人はいくつになっても成長できるということを、身をもって知ることができたのは大きな収穫でした。私が50歳のときにウーマンズ・マスターズ水泳競技会で銀メダルを獲得できたのも、目標に向けて毎日少しずつ積み重ねてきた努力の賜物たまものです。

いまこの時点で動ける体があるのであれば、気になることにはすべて挑戦しておくべきだと私は思います。病気やケガの後遺症に悩んでいる人でも、できる範囲のことから始めればいいんです。高齢者には、「いつか」とか「そのうち」といった言葉はありません。残された時間が少ないからこそ、若者よりも貪欲どんよくになるべきでしょう。

私が毎年プロデュースしているオリジナルミュージカル『ザ・デイサービス・ショウ2019~Itʼs Only Rockʼn Roll~』も、そういったチャレンジ精神から始めたことの一つです。尾藤びとうイサオさんやモト冬樹ふゆきさんなど、出演者の方は決して若くはありません。でも、皆さんほんとうに元気なんですよ。本番の舞台という目標があるから生活に張りが生まれるし、コツコツとけいこを重ねることができる。そして、それによって成長する自分を知ることで、さらに元気になれる———こうした喜びを知れば、介護と無縁の老後を送ることだって夢ではないはずです。

もちろん、せっかく新しいことに挑戦しても、思うようにできずに落ち込むこともあるでしょう。でも、壁に直面するのは悪いことではありません。その壁さえ乗り越えれば、必ず次のレベルに進めるわけですから。登山にたとえれば、リタイアして途中で下山するのは、次の挑戦のために不可欠な勇気ある撤退です。下山しなければ、次また登ることはできませんからね。

何事も目標を持って前向きに。読者の皆さんにもそうした前向きな気持ちを忘れずに、楽しい日々を送ってほしいですね。

中尾ミエさんからのお知らせ
中尾ミエさんが主演・企画・プロデュースを手がけるオリジナルミュージカル『ザ・デイサービス・ショウ2019~It’s Only Rock’n Roll~』は、10月5日から全国各地で公演中。11月7日に、相模原公演。デイサービスに集まって来る個性豊かな高齢者たちが繰り広げる笑いあり涙ありのストーリー。他では味わえないコメディミュージカルです。
この記事は「健康365」2019年12月号に掲載されています。