漢方の鹿鳴堂薬舗 薬剤師 泉谷 修一
間質性肺炎を発症後、1ヵ月半にわたって集中治療室に入院し生死の境をさまよった

私は薬剤師として、奈良市内にある「漢方の鹿鳴堂薬舗」という漢方薬局を営んでいます。大阪薬科大学の大学院で薬学を修めた私は、製薬企業で新薬の研究に携わりました。しかしながら、西洋医学を深く知るほど治せない病気が多い現実に直面し、現代医学の限界を知りました。そんな時に出合ったのが東洋医学の世界です。百年前後に過ぎない西洋医学の歴史と比べて、2千年以上にわたって効果が検証されている東洋医学の奥深さに感銘した私は漢方薬の研究と修業に励み、漢方薬剤師として独立。現在は、観念的に陥りがちな東洋医学の短所を補うべく、西洋医学的な科学的根拠を示す新しい漢方理念を「ハイブリッド漢方」と命名し、その普及に努めています。
私が発症した間質性肺炎は、肺の間質と呼ばれる組織が炎症を起こし、線維化という状態になる肺疾患です。間質性肺炎は、特発性間質性肺炎(肺線維症)など多様な病態があるものの、その多くは原因が不明で、治療も困難とされています。
私が間質性肺炎を患ったのは、今から5年前のことです。突然、息苦しさに襲われた私は救急車を呼びました。救急搬送された私は、すぐにICU(集中治療室)に運ばれ、気管挿管とステロイドパルス療法を受けました。細菌性肺炎も併発していたことから、抗生物質の点滴治療も受けました。後に家族に聞いたところ、私の容態は大変厳しいもので、医師から「生存率は50%。救急搬送が20分遅れていたら亡くなっていたでしょう」といわれたそうです。
細菌性肺炎の併発によって急性増悪した間質性肺炎の状態は深刻そのものでした。主治医に見せてもらった画像は肺が真っ白に写り、肺の半分が線維化して機能していないことが推察されました。せん妄(意識混濁や幻覚・錯覚が見られる状態)によって無意識に医療機器を外してしまうおそれから、私はICUのベッドに固定された寝たきりの状態でした。何も話せず食べられず、目の前に見えるトイレにも行けない状態で、下の世話も看護師さんにお願いしていました。

ICUで1ヵ月半、HCU(高度治療室)と一般病棟でそれぞれ1週間を過ごした私は、ようやく退院。薬剤師としての試行錯誤によって劇的な回復を見せた私でしたが、SpO2(血中酸素飽和度。正常値は96~99%)が85%前後しかなかったことから、在宅酸素療法の導入を条件に退院が許可されました。退院後は、自宅で1分当たり1~3㍑の酸素を吸入して体力の回復を図りました。約1ヵ月後に在宅酸素療法を離脱できた私は、薬剤師の仕事を再開するようになったのです。
間質性肺炎は指先の異変が前兆で回復力の向上には食事や睡眠の質が重要

現在、私はYouTubeの『鹿鳴堂薬舗チャンネル』で、自らの間質性肺炎の体験を伝えながら、早期発見の啓発に努めています。動画の中で好評をいただいている、間質性肺炎の早期発見と養生のポイントを解説しましょう。
【間質性肺炎の早期発見法】
●空セキ(乾いたセキ)が出る
空セキは空気の循環を促す防衛反応の1つです。肺が線維化して硬くなると酸素を取り込みにくくなるため、肺活量の減少が起こって空セキが起こります。空セキが続くと肋骨にひびが入ることもあるので、ひどい場合は医師に相談して鎮咳薬を処方してもらいましょう。
●息苦しくなる(特に動いた時)
間質性肺炎に限らず、肺疾患の患者さんは動いた時(労作時)に血中酸素飽和度が下がりやすくなります。体を動かした時に息苦しさを感じ、徐々に息切れが強くなったら要注意。安静時も苦しさを感じたら、専門医の診察を受けましょう。

●ばち指
手や足の指先が「太鼓のばち」のように丸みを帯びたふくらみを見せる症状です。ばち指は、特発性間質性肺炎の発症時に起こりやすいとされています。間質性肺炎の患者さんにばち指が見られやすい原因は不明ですが、血管の増殖を促すたんぱく質の異常と考えられています。
【症状を悪化させないポイント】
●禁煙(受動喫煙の回避)
喫煙はもちろん、副流煙の影響を受ける受動喫煙にも注意しましょう。
●粉塵やカビが少ない生活環境
肺の炎症を招きやすくなる生活環境を見直しましょう。そのほか、空気の乾燥は肺に負担をかけます。
●適切な感染症対策
インフルエンザや肺炎球菌など、長い歴史の中で安全性が裏づけされている予防接種を検討しましょう。
●節酒と睡眠の質を高める
過度の飲酒は肺の炎症を悪化させます。「適度な飲酒=百薬の長」という考えは、数年前から学術界で否定されるようになりました。私が重視しているのが睡眠です。体力の回復を図るために、私は毎晩8時間寝るようにしています。「呼吸がしんどかったら無理をせずに寝る」ことで、翌日の呼吸機能の状態が変わります。寝具の見直しをはじめ、睡眠の2時間前に入浴をすませて深部体温を徐々に下げると自然な眠りに就くことができます。朝の起床後は日光を浴びることで、睡眠に関わるホルモンのメラトニンが作られます。どうしても寝つきが悪い人は、睡眠導入剤をはじめ、睡眠の質を高める医薬品の処方を医師に相談してみましょう。
●偏食・過食を避ける
間質性肺炎は肺の炎症です。糖質のとりすぎは、血糖値を下げるホルモンのインスリンを過剰に分泌させて炎症反応の促進を招きます。加工食品の常食など、肺に限らず全身の炎症を引き起こす食生活を改めるようにしましょう。
個人差はありますが、間質性肺炎は進行していく病気です。多くの患者さんにとって大切なことは、「残された呼吸機能をいかに保っていくか」にほかなりません。肺の4分の1が線維化している私の場合は、残された4分の3を大切にし、生涯守りきりたいと思っています。
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