声優という仕事に子どもの頃から憧れていたからです

有名人が告白

声優 小笠原 早紀さん

声優である私にとって舌を切除するか放射線治療を行なうのかは悩ましい選択でした

[おがさわら・さき]——青森県生まれ。専門学校東京アナウンス学院卒業。第1回声優アワード新人発掘オーディションに合格し、声優のキャリアをスタート。賢プロダクションに所属。主な出演作に『アイドルマスター ミリオンライブ!』(野々原茜役)、『僕のヒーローアカデミア』(拳藤一佳役)、『リルリルフェアリル』(きらら役など)、『SHOW BY ROCK!!』(コリエンテ役)、『ガールズ&パンツァー』(ニーナ役)、『魔法科高校の劣等生』(中条あずさ役)などがある。

最初に異変を感じたのは、2019年3月のことでした。口の中に突然痛みが走り、鏡を見てみると舌の左側面にぽっこりと炎症が起こっていました。口内炎だと思ったのですが、5日たっても治る気配がありません。言葉を発するたびに激痛が走って声優の仕事に支障が出そうだったため、早めに口腔外科こうくうげかの先生にてもらったんです。

最初は処方された塗り薬で様子を見ることになったのですが、1週間たっても症状が治まらなかったので同じ病院で再び診察を受けました。すると、口内炎が大きくなっていることが分かったんです。先生も少し深刻な様子で、「これはもっと大きな施設で検査したほうがいい」と、近くの大学病院を紹介してもらうことになりました。

大学病院で検査を受けた結果、舌がんと診断されました。ただ、幸いなことにステージはⅠ期だったんです。声優の仕事をしていなかったら、検査を先送りにしていました。早期に発見できたのは、仕事のおかげです。

小笠原さんは「一刻も早く元の声を取り戻して仕事に復帰したい」という強い気持ちがいちばんの原動力だったと話す。

検査結果が出たときに最初に考えたことも、やはり仕事のことでした。すでに決まっている仕事がいくつもありましたし、何より声優にとって舌がんというのは職業生命に関わる一大事です。自分の命の心配よりも先に、「仕事に穴をあけてしまうことになるかもしれない」「関係者の方々にご迷惑をかけてしまったらどうしよう」と、私は頭を抱えてしまいました。

担当の先生から提示された選択肢は「外科手術によるがんの切除」と「放射線治療」の2つです。しかし、これらの治療法にはそれぞれ問題がありました。先生がすすめるのは外科手術をしてがんを取り除くことでした。ただ、この治療法を選ぶと舌の形が変わってしまうため、どうしても話しにくくなってしまいます。一方の放射線治療は首の近くにも放射線が当たってしまうため、声帯に影響が及んだ場合、治療後に声の質が変わる可能性が高いとのことでした。

担当の先生や事務所のスタッフさんと相談に相談を重ねて1週間ほど悩み続けた結果、私は外科手術を受ける決意をしました。舌は筋肉のかたまりですから、形が変わっても鍛えることができるのではないかと考えたのです。また、ある仕事先の関係者の方が「復帰するまでいつまでも待っていますから」といってくれました。そうした周囲の言葉にも背中を押してもらい、手術を決意できたのだと思います。

続きは現在発売中の『健康365』2021年7月号をご覧ください